2017年5月8日
電子申告、振替納税の普及など、税実務でも少しずつ情報技術(IT)による発展がみられますが、今年から、国税の納税においてクレジットカードの使用が可能となったことが注目されています。納税者にとってのメリット、注意点等、税理士もカード納税の知識を身につけておきたいところです。
クレジットカード納税は、地方税ではすでに可能なところもありましたが、国税においては平成28年度税制改正で導入され、今年1月から運用が開始されました。所得税や法人税、相続税、消費税などでカードが使用でき、税理士が実務でかかわるすべての税目で利用可能になったといってよいでしょう。
ダイレクト納付や電子納税に加えてカード納税が導入され、納税方法の選択肢が広がったことで、実情に合わせて選ぶことができるのは大きなメリット。たとえば法人用カードに会社の支出をなるべくまとめたいと思っている経営者は多いでしょう。経費以外に、納税もカードでできれば利便性は高まります。最近では、クラウド会計ソフトとクレジットカード情報を同期させている場合もあり、納税も同じカードで行うことのメリットはより高くなると思われます。
そして、カード納税で注目されるメリットとして盛んに取り上げられているのが、カード会社のポイントサービスが受けられること。カード会社により規定は異なりますが、定期的にまとまった額が発生する納税によってポイントがたまれば、「お得感」もひとしお。税額が大きければ大きいほど、魅力は増します。
また、経営者が目を付けているポイントとして、支払い時期と請求時期の差があります。納税によるキャッシュ減少を先延ばしすることができ、キャッシュフローの観点からのメリットも考えられるのです。さらに、カード会社が提供する、分割払いやリボ払いなどの支払い方法を利用できることも、場合によってはキャッシュフロー上のメリットとなるでしょう。
ただし、国税のカード納税には手数料がかかります。額は1万円あたり76円、消費税も課されるため、実質82円となります。手数料を考慮すると、カードのポイントのメリットはそれほど高くないといえます。納税証明書の発行が遅くなる可能性があるなど、実務上の影響がありそうなデメリットも指摘されており、気になるところです。
中小企業の経理体制の構築において、カードの使い方は税理士がアドバイスできるポイントの一つ。今回の改正は、カードの使い方と税実務が直接リンクすることになる制度なので、税理士のアドバイスがより求められるでしょう。顧問先の状況に合わせ、メリットとデメリットなど、様々な条件を勘案し、経営者の意見も聞きながら導入を検討していきたいところです。