2014年8月26日
税理士たるもの、税に関係する法規の変更や政策に関係した情報を常にキャッチアップする必要があります。
最近の動向の中で影響力の大きなトレンドといえばアベノミクスの「第三の矢」と言われる成長戦略があります。
税制において、その中核をなすのが法人税改革であることは論をまちません。2014年6月24日、政府は新成長戦略として「経済財政運営と改革の基本方針」を決定。
関連して政府税制調査会も6月27日「法人税の改革について」の報告書を承認しています。
法人税改革に関する報道等で、最も注目されているのは、法人税実効税率の引き下げでしょう。
政府の基本方針では法人実効税率を「国際的に遜色のない水準」、具体的には数年で20%台にする考えを示しており、この引き下げを来年度から開始するとしています。
税理士の皆様は、法人税率の引き下げとともに、代替財源確保のために行われる法人への課税ベース拡大に注目していることでしょう。
とくに、税理士の中心的な顧客となる中小企業に関連する税制については、法人税引き下げを超えるマイナスのインパクトになる可能性があります。
政府税制調査会の報告書で見直しについて触れられている税制のうち、直接的に中小企業に影響すると思われるのは、資本金1億円以下の中小企業に対する法人税の軽減制度の縮小。
資本金額による適用基準自体の変更、また、資本金基準を継続する場合でも、その額の引き下げなどが検討されています。
そのほか、欠損金の繰越控除の縮小、減価償却の定率法の廃止、そして、地方税である法人事業税の外形標準課税の課税対象拡大等、
赤字企業にも大きな影響を及ぼす改革の方向性が打ち出されています。
法人税改革は、実効税率だけではなく、複数の税制を総合的にウォッチしていく必要がありそうです。
さて、先にも触れたとおり、法人税引き下げには国際競争の面があります。「法人税が高いと、税収が低い国に移転してしまう」という問題への対応です。
この観点からは、自国の税率を低くすることだけでは対応は不十分。
各国の税務当局が連携し、租税回避行為を防ぐことが喫緊の課題となっています。
OECD は 2012 年6月より「BEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)プロジェクト」を開始。
これを受けて、税制調査会の報告書では、外国子会社配当益金不算入制度、移転価格税制に関する見直しに触れています。
実効税率の引き下げは企業活動にプラスになるのは確かです。しかし、各国との税率のみの競争に無制限に付き合うことは非現実的でしょう。
20%台への引き下げを行ったあとも、国際間の利益移動による租税回避に歯止めがかからなければ活性化の効果は望めません。
また、複雑な節税スキームを駆使するグローバルな巨大企業と、税優遇が縮小の方向にある中小企業の公正な競争を担保する税制となるか否かが気になるところです。
こういった背景を理解し、行動することでほかの税理士との差をつけていきたいですね。