2016年2月15日
中小企業経営者の高齢化、後継者不足が日本経済全体の課題として語られています。そして同様に、否それ以上に事業承継が大きな問題となっているのが農家です。
農地の相続、農業の事業承継には、農地に関する規制など、企業とは異なる問題が発生するため、税理士のサポートが重要となります。
農家の相続の課題として、まず農地の財産評価があります。純農地、中間農地は宅地と比べ大きく評価を下げることができますが、市街地周辺農地、市街地農地では宅地並みに評価が高くなることがあるため、まずは相続対象となる農地を分析しておく必要があります。
相続税では「農地の納税猶予」の特例があり、農家の相続による税負担を下げるためには非常に有用な制度です。ただし、20年間の営農や終身営農が要件となっているため、税額のみで適用を判断するのは危険です。農家の承継では、子息が農家を継ぐ意思がない場合も多く、その場合納税猶予は有効な手法ではなくなってしまいます。
農地の遺産分割協議が進まず、耕作放棄地になってしまう例も多発しています。そのようなケースでは、不動産の有効活用がままならないだけでなく、固定資産税負担の問題も生じます。そして、耕作放棄地は社会経済的損失も大きなものです。政府は耕作放棄地の固定資産税の課税強化を行い、農地集約を促進する考えを示しています。
相続争い等を防止するためには、一般の相続と同様に、遺言書の整備や生前贈与の検討等、事前対策が重要です。場合によっては生前に新規参入の農家、農業生産法人等へ売却や賃貸により引き継ぐことも検討対象となります。また、宅地転用の上、賃貸アパートなどを建てて、宅地としての評価を下げる等、農地を転用・運用することも選択肢となります。
農地の転用や売却には農地法の許可が必要となります。行政書士に登録することにより、農地転用等に関する許可申請などを行う税理士も多いようです。また、農地に関する制度は地域によって様々ですので、法律だけでなく条例、自治体の運用等を調べるノウハウが必要です。
農地の相続対策の手法は様々ですが、いずれの方法によるにせよ、被相続、相続見込み者の意思を確認し、実情にあった対策を提案することが会計人に求められています。農業経営のコンサルティング、所得税や法人税に関する会計・税務顧問に加えに、農業の事業承継支援の経験を積むことにより、農業を総合的にサポートできる会計人として大きなステップアップにつながることは間違いありません。