2017年5月1日
高齢化の進展、また平成25年度税制改正において実施された基礎控除の引下げ等の改正により、相続税業務が税理士の間でさらに大きく注目されるようになりました。そんな中、国税庁は、改正後の数字が初めて反映された相続税の申告状況を公表。税理士の活躍の場となる数字であるだけに、課税対象者数等が気になるところです。
今回公表されたのは、平成27年中に亡くなった方について、相続人等が行った相続税の申告状況です。基礎控除の引下げなどの相続税法の改正は、平成27年1月1日以後の相続等が対象になりますので、実質的に今回が相続税改正の影響が表れるはじめての統計ということになります。
まず同年中に亡くなった人、すなわち被相続人の数は約129万人で、平成26年の約127万人から2万人程度増加しています。そして、このうち相続税の課税対象となった被相続人数は、約10万3,000人で、前年の約5万6,000人から倍近くに増加しています。課税割合は8.0%と、前年の4.4%から3.6ポイント増となりました。
相続財産の課税価格の合計は、14兆5554億円(前年11兆4766億円)で、こちらも3兆円以上の増加。税額の合計は1兆8116億円(前年1兆3908億円)となりました。一方、課税対象が広がったため被相続人1人当たりの額は大きく下がり、課税価格は1億4126万円(前年2億407万円)、税額は1758万円(前年2473万円)となりました。
課税ベース拡大の影響は、相続財産の構成にも表れました。財産内訳をみると、トップの土地 が38.0%(前年41.5%)、続く現金・預貯金等は30.7%(同26.6%)、有価証券は14.9%(同15.3%)となりました。ここからは、不動産や有価証券などを豊富に持ついわゆる「資産家」だけではなく、現預金を主な資産とする層に、相続対象が広がっていることが読み取れるでしょう。
今回の結果自体は、ある程度想定されていたことではありますが、改めてこの度の改正の特徴が示されるものとなりました。専門家への需要が高まっていることは間違いなく、税理士としても身が引き締まる思いのする数字ではないでしょうか。
注目したいのは、従来の相続税の課税対象者である富裕層とは異なるタイプの納税義務者の出現です。新たな層は、慣れない相続税の実務に不安を抱えているはずです。そのような人たちにとって税理士は、最も頼りになる存在。相続では、遺産分割協議など弁護士等が深くかかわる事案についても、最初に税理士への相談が行われる例が多いといわれるだけに、ワンストップでチャンスを確実につかみたいところです。