2016年12月05日
相続財産には様々な種類のものがありますが、金銭や有価証券のほか、額が大きなものに土地があります。相続発生の際、相続人や税理士が気になるのが土地の評価に最も多く使われる路線価の動きではないでしょうか。不動産価格の上昇で路線価が上向きになっており、相続対策への影響を分析しておく必要があります。
毎年7月国税庁が公表する路線価は、税務上の土地の時価を評価するものです。相続・贈与税の税額算定のため、頻繁に利用されます。地価の下落とともに路線価は下落傾向でしたが、近年、その幅は縮小、そして今年7月発表された平成28年路線価は、前年比で全国平均プラス0.2%と実に8年ぶりの上昇となりました。
路線価の上昇の要因として最も大きなものは、金融緩和による不動産投資の活発化だと思われます。また、円安による海外からの不動産投資需要、とくに首都圏では東京五輪の開催決定も、不動産需要を後押ししていることが考えられます。
路線価平均を地域別に詳しくみると、違った側面がみえてきます。路線価平均が上昇している都道府県は14あり、前年も上昇した東京、神奈川、大阪、愛知、京都、千葉、埼玉、福島、宮城、沖縄に加え、今年度は北海道と広島、福岡、熊本が上昇に転じています。
一方で、路線価が下落している都道府県は全国33県と、上昇した都道府県の数を大きく上回っていることも見逃せません。全国平均が上昇に転じたとはいえ、多くの地域では下落傾向が続いています。ただし、下落幅は29県で減少、下げ止まりの傾向もみられます。また、下落している県の中でも県庁所在地等、都市部では堅調です。少子高齢化、人口減少という長期的な傾向のなか二極化が進んでいるとみることもできます。
路線価の変動は、当然相続税の実務にも大きく影響します。課税のボーダーライン上に位置する潜在的な相続人の間で、税理士への需要を発生させることが期待できるでしょう。相続税の課税標準額の引き下げも相まって、近年関心が高まっている相続マーケットが、さらに活況を呈する可能性があります。
中央と地方、都市部と農村部といった地域による路線価の差が大きい傾向もみられることから、地域の実情に合わせたニーズの掘り起こしがカギとなります。生前贈与、相続時精算課税などの制度の選択に不動産市場の状況が大きく影響し、生前相続対策のありかたも地域により異なるでしょう。各種の軽減税率を勘案し、相続人の状況に合わせ、適切な戦略をコーディネートする能力が求められると言えるでしょう。