2015年9月7日
平成18年施行の会社法で創設された株式会社の機関、会計参与。会計人の活躍の場として期待されながら、「普及が進んでいない」との指摘もあります。就任状況等の実態について参考になるデータも少ない同制度ですが、このほど、日本税理士会連合会の「第6回税理士実態調査」で、興味深い調査結果が示されました。
同調査は、すべての登録税理士を対象に、平成26年1月時点の税理士としての活動状況を聞くものです。10年に1回の調査のため、前回調査は会社法スタート前。
つまり、会計参与制度の状況については、初の調査ということになります。
会計参与は、すべての形態の株式会社で設置できますが、主に中小企業を想定した制度です。そのため、中小企業に深く関与する税理士の割合が非常に高いといわれ、同調査は、制度全体の状況を見るうえで極めて有益です。
同調査では、税理士の会計参与の就任状況は以下のようになりました。
「就任している」2.0%
「今後就任する予定」1.4%
「就任する予定はない」90.5%
「無回答」6.1%
何らかの形で同制度と関わる税理士は3%程度。そして9割以上は、現在就任していないだけではなく、将来的にも予定がないとの結果となりました。多くの税理士にとって、会計参与業務は積極的に参入する対象として見られていない実態が見て取れます。
とはいえ、この数字だけを見ても、会計参与設置会社の数、会計参与となる税理士の数が「少なすぎる」との評価は必ずしも成り立たないでしょう。機関設計は企業の意思で決めるもの。税理士から積極的な働きかけを行うのが難しい面もあります。
会計参与は、経営者とともに会計書類を作成することをその任務としています。就任率よりも大切なことは、小規模な企業であっても質の高い会計書類が作られる体制が整えられているか否かです。
同調査では、顧問先で適用する会計基準についても聞き取りが行われています。
その結果、会計参与設置会社を想定した「中小企業の会計に関する指針」を適用している税理士の割合は18.8%、「中小企業の会計に関する基本要領」を適用しているが24.3%、どちらも適用していないが56.9%と、中小企業の会計が整備されていない現状が示されています。
現在、企業の大小を問わず、海外を含めた幅広い企業と取引が行われ、また資金調達の多様性も増しています。会計書類の信頼性が低いことは、事業を進めるうえでのネックとなります。そして、往々にして、会計書類の未整備によって企業活動が阻害されている状況は、経営者に意識されにくいものです。
中小企業には会計整備をきっかけにしたステップアップに「のびしろ」が大きくあります。
会計専門家を企業内外で活用することの積極的な意味を、税理士業界全体で啓発することにより、会計参与を含めた税理士の新たな活躍の場が広がっていくことを期待したいところです。