2016年11月07日
平成28年度税制改正では、法人税率の引き下げとともに、課税ベース拡大のための各種税の軽減の縮小が行われ、企業経営者からは自社の税務への影響に懸念の声が聞かれます。その中で税の軽減廃止が決定した制度として、今回は「生産性向上設備投資促進税制」を取り上げます。改正内容を詳しく見ていきましょう。
「生産性向上設備投資促進税制」は、一定の設備について、即時償却や税額控除が可能となる制度。設備投資費用の損金計上が迅速に行え、次の投資につなげやすくする策として創設されました。経済産業省によると、2年間でのべ1万社以上の企業が活用しており、企業の間で重要な役割を果たしてきたことがうかがえます。
同税制は、創設時に平成29年3月31日が適用期限となっていました。延長の有無が注目されていましたが、平成28年度の税制改正には、期限どおりの廃止が明記。また、段階的な控除額の縮減についても定められ、平成28年4月からは、従来、最大で「即時償却または税額控除5 %」であったものが「特別償却 50 % または 税額控除4 %」に縮減されています。
生産性向上設備投資促進税制の終了は、税理士の中心的な関与先となる中小企業にどのような影響をもたらすのでしょうか。中小企業については「中小企業投資促進税制」による即時償却制度があり、生産性を向上する一定の設備投資について、さらに上乗せ措置がありました。
中小企業投資促進税制では、通常の場合、特別償却30%または7%の税額控除の選択適用ができました。そして、上記の上乗せ措置の場合は、即時償却または税額控除最大10%を受けることができました。上乗せの税制について、平成29年3月31日の適用期限までは、内容は変化なしとなっています。適用期限後の扱いについては存廃を含めた今後の議論を注視しておくことが重要だといえるでしょう。
生産性向上設備投資促進税制は、生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(B類型)についての適用要件においては、投資計画を作成したうえで、公認会計士または税理士の事前確認を受ける必要があるなど、会計人にとってもかかわりの深い税制でした。廃止が決定し、税理士業務にも影響があるものと思われます。
最終年度となる今年度の設備投資計画については、同税制の終了前後における財務的影響を合わせて分析する必要があります。企業の成長戦略に大きく影響する設備投資だけに、会計人として多角的な視点でアドバイスできるようにしたいものです。