2016年10月31日
近年、国税庁は税務行政の課題として税務調査の効率化を掲げています。そして、そのための方策が、税実務においても重要性を増しています。特に注目されるのが、決算・税務申告についての情報を、自主的に当局に情報提供する、いわゆる「確認表」の提出。税理士業務との関係を含め、確認表の意義について考えてみましょう。
現在、ビジネスの複雑化、国際化により、海外子会社等を使った租税回避や、「見解の相違」による追徴の発生など、当局と企業双方に危機感が高まる状況があります。そんな中、国税庁は「税務に関するコーポレートガバナンス」を推進し、申告内容について納税者と信頼関係を築き上げるという方針を打ち出しています。
具体的には、資本金40億円以上で国税局長が指定した特別国税調査官所掌法人(特官所掌法人)を対象として、税務調査の機会を利用し、税務に対するトップマネジメントの関与や、経理・監査、内部けん制の体制等を自主的にチェックする「税務に関するコーポレートガバナンス確認表」の記載を依頼。企業から提出を受けた確認表の内容を調査し、調査結果を説明し、税務に関するコーポレートガバナンスに改善が必要な部分などについて意見交換を実施するとしています。
これらのプロセスを踏むことには、企業にとってもメリットがあります。税務に関するコーポレートガバナンスの状況が良好で、大口・悪質な是正事項がない法人については、調査省略が行われることです。提出以後、見解の相違が生じやすい取引を自主的に開示すること等を条件に、次回調査までの調査間隔を1年延長するとしています。
特官所掌法人ではない大規模法人についても、申告書の自主点検と税務上の自主監査の確認を行う書面が整備されており、今後、企業規模の大小にかかわらず、納税者が自発的な情報提供を行うことにより、効率的な税務行政を行う方策の重要性は増していくと予測されます。
これは、納税者はもちろん税理士にとっても見逃せない行政方針です。税理士は確認表の作成に関し、業務としての関わり方を考えておくべきでしょう。確認表の作成をサポートしたり、確認表に沿って内部監査体制を改めて見直したり、当局との面談への対応についてアドバイスしたりすることも考えられます。もちろん、確認表に関する対応は義務ではありませんので、最終的に個々の企業の判断となりますが、顧客企業へ制度について情報を提供し、業務につなげる可能性について検討しておくべきではないでしょうか。