2016年1月12日
法人税に関する最近の話題といえば、税率引き下げが頭に浮かぶ人が多いでしょうが、それとともに報道等で大きく取り上げられているのが、いくつかの有名企業が、資本金の額を減少する「減資」によって法人税負担を減らす動きをみせたこと。今回は、批判的に語られることも多いこの手法について考えてみましょう。
超有名企業が行ったことで、批判も巻き起こった減資による「節税」ですが、税理士が多く顧問先とする中堅企業にとっては現実的な選択肢になることも多いようです。
資本金1億円以下の「中小法人」となることによる税メリットとして、まず挙げられるのが法人税の軽減税率です。資本金1億円超の「大法人」は23.9%の税率であるところが、中小法人は800万円以下の所得に対しては15%が適用されます。また、法人事業税では外形標準課税が適用されず、実効税率はさらに下がることになります。そのほか、欠損金繰越控除や少額減価償却、交際費控除などについても有利な扱いを受けることができます。
減資を行うためには、原則として株主総会の特別決議が必要です。また、債権者に公告、連絡先がわかっている債権者には通知を行うことによって異議を述べる機会を与え、異議を述べた債権者に対して弁済をするなどの債権者保護手続きが必要となります。
これらの煩雑な手続きは、減資の意味を明確に示しています。債権者保護手続きが設けられていることからもわかるように、資本金の減少はその会社に対して債権を持つ人にとって不利益になる可能性があり、銀行や取引先への信用の面でもデメリットがあります。また、当然のことながら、総会や債権者保護手続きなどが適正に行われていなかった場合も、大きなトラブルが発生するでしょう。
また、税メリットに関しては、今後の改正に注意しなくてはなりません。現在、税制調査会等で、大法人と中小法人を資本金によって形式的に区分することの是非について議論がなされており、中小企業税制の縮小もたびたび議論の俎上に上っています。今後、減資による節税に、ある程度の縛りがかかることも予想されます。
税理士にとって、資本金の欠損が発生している企業等において、会社の体力に合った減資を行うことは今後も現実的なアドバイスとなるでしょう。その結果としての税額のメリットについても、正確にシミュレーションして提示することは重要です。ただし、その際は、減資のための手続きについても弁護士ら法律専門家の意見も聞きながら、税の問題に偏ることのない総合的な判断が必要となります。