2017年5月30日
本格的にマイナンバーに関する実務がスタートしましたが、それとともに、2017年7月からスタートするのが、個人がマイナンバーに関連づけられた自分自身に関する情報を閲覧し、各種手続きができる「マイナポータル」です。税実務とも深く関連する制度であるため、税理士も、制度内容等を覚えておく必要があります。
マイナンバーは、税と社会保障に関する統一番号で、納税や年金、健康保険などの情報が関連づけられています。そしてマイナポータルは、マイナンバーを持つ国民一人一人がアクセスできる専用WEBページ。画面には、個人の情報に合わせた行政機関からの通知が表示されるほか、各種行政手続きがサイトから行えるようになります。
ただし、マイナポータルはアクセス可能ではありますが、現在のところ機能の全貌が明らかになったとは言えない状態です。政府は、マイナンバーの特徴である、省庁をまたぐ行政情報の連携は、平成29年7月開始予定とし、マイナポータルの各種の機能についても「順次開始する予定」としています。マイナンバーと関連付けられる行政情報も増えていくことが予想され、連携の在り方によって、可能性、影響力も変わってくるでしょう。
さて、マイナンバー導入時にも盛んに議論されましたが、行政情報の一元化による利便性の高まりとともに、情報管理にはなお懸念もあります。マイナポータルは、個人のパソコンで各種情報が閲覧できることにより、不正ログインや盗み見などによる被害が発生することが予想されることから、さらにリスクが高まることにもなります。
そして、マイナポータルの普及にも課題があります。サイトを利用するには、マイナンバーカード(個人番号カード)の発行が必須。また、ICカードリーダーをパソコンに取り付け、パソコンには、JRE(Java SE Runtime Environment)8や、公的個人認証サービスが提供する利用者クライアントソフトのインストールが必要。利用開始には、ある程度の基礎知識と準備が必要となります。
税理士の皆さまの中には今年、はじめて法定調書や確定申告において、マイナンバーに関する本格的な実務が始まったことから、顧問先への対応に苦労した人も多いでしょう。これからは、義務としての対応のほか、マイナポータルを通して、マイナンバーをいかに個人が利用するか、という視点からアドバイスが求められる機会が増えるでしょう。
e-Taxとの関連はもちろん、高齢者や介護世代、子育て世代等を対象とした個人FP業務などでも、閲覧方法をアドバイスするなど、マイナポータルの使い方が説明できるようにしたいもの。また、利便性とともに、カードの管理方法やなりすましなどの注意点など、「情報管理」についての啓発を行うことも、税理士に期待されているのではないでしょうか。