2014年8月15日
平成26年度税制改正では、税理士制度に関する重要な改正項目があります。
ここでは、転職市場に影響しそうなものとして、「所属税理士制度」を紹介したいと思います。
この制度の「キモ」は、勤務税理士が、自ら顧客から税理士業務の委嘱を受ける道を開いたことにあります。
従来の「補助税理士」にはできなかった、自らの名前による税務代理が行えるようになることで、
税理士業界にどのような変化が考えられるのでしょうか。
税理士事務所は大型化の流れにあります。勤務税理士の多い事務所は、所長税理士が高齢である傾向が多く、
若手の勤務税理士が実務の中枢として活躍しているケースが多くなっています。また、とくに資産税の分野で顕著ですが、
所長税理士が苦手とする分野の税務を一手に担う専門知識を持った税理士も多数存在しています。
従来、そのような勤務税理士は、実際はほとんどの業務を自分で手がけていても、所長税理士の名前で仕事を受ける必要がありました。
新制度では、こういった勤務税理士が、組織に所属しながら自らの名前で税務代理が行えるようになります。
所属税理士制度を活用すれば、各税目に強みを持つ専門家が、法律事務所の「パートナー弁護士」のように、
事務所の中でゆるやかに結合しながら独立した動きができるようになると考えられます。
ただし、この制度がうまく運用されるか否かはまだ不透明な部分もあります。
所属税理士が自らの名前で税務代理を行うためには、所長税理士、税理士法人の承諾を書面で受ける必要があるのです。
許可を取ってまで自分の仕事をしたいという勤務税理士がいるのか、いたとしても代表税理士が許可をするかということはまだまだ見えない情勢。
制度がスタートしたものの、ほとんど活用されないということも十分に考えられます。
今後、求人情報でも所属税理士に関する記述はチェックする必要がありそうです。
組織内で自分の名前で仕事ができるのか、またその際の報酬規定はどのようなものになるのか、といったことは確認しておくべきでしょう。
所属税理士制度を積極的に活用する姿勢がある事務所には、各分野の専門家を集め、その税理士に大きな裁量を持たせる意思があると考えられます。
当然、勤務税理士の収入面の影響も大きくなることが予想されます。
しかし、業務の委嘱を受けることには責任が伴います。自分の名前で税務を行うことは、
今まで補助税理士としては経験することのなかった緊張感を伴うのではないでしょうか。
その覚悟を持った勤務税理士が、業界をどのように変えていくのか、大いに注目されるところです。