2016年12月13日
税理士の社会的責任として、税法等の法令順守があることは言うまでもありません。税理士の業法として税理士法があり、今般、懲戒の規定などに改正があったことで税理士からの関心が高まっています。国税庁では、違反行為に微妙な線引きもある税理士法についてQ&Aを作成しています。
税理士法違反として、頻発しているのが非税理士による税理士業務。国税庁作成のQ&Aでは、税理士法に基づく税務代理、税務書類の作成、税務相談という税理士業務の定義を再確認し、違反の類型に関して解説しています。
とくに注目されるのが、新制度であるマイナンバーと税理士業務との関連。様々な行政書類に記載されるマイナンバーは、業際的に微妙な判断が伴います。Q&Aで取り上げられているのは、非税理士が個人番号関係事務を受託し、事業者に代わり番号の収集、本人確認及び収集した番号を法定調書などに記載することです。
これについて国税庁は、事業者自身が、自己の判断で法定調書などの申告書等の記載事項のうち番号以外の部分を作成したのであれば、番号のみをその法定調書などの申告書等に記入する行為は「税務書類の作成」に該当しないとしています。税理士としては、保険実務を行う社労士との関係で実務上理解しておきたいところです。
税理士法には、違反行為に対する懲戒処分についても定められています。最近、税理士の懲戒の増加が問題となっていることはご存知の方も多いでしょう。平成26年度税理士法改正では、税理士業務の停止の期間が現行の1年以内から2年以内に引き上げられるなどの厳格化が行われています。
懲戒処分についてQ&Aでは、故意や過失による不真正の税務書類の作成、自己脱税や自己申告漏れ、調査妨害などの違反に対する懲戒の規定について詳しく解説。税理士の不正行為の類型ごとに、懲戒の量定の基準を表にしたものもあり、再確認しておくとよいでしょう。
なかでも確認しておきたいのは、違反事例が続発する「名義貸し」の事例です。たとえば、非税理士が作成した確定申告書の下書きをもとに、パソコンにその内容を入力して電子署名を行ったという例や、転記誤りについて確認したうえで署名押印すれば問題ないと考えて名義貸しをしたとされたケースなど、法令の理解が足りないことで違反行為となるケースについては、とくに注意したいところです。
税理士は、公的な重い責任を負う職業です。軽い気持ちで行った違反行為でキャリアを台無しにしてしまうこともあります。とくに業際問題では、他の士業、事業者の問題行動を見過ごすことにより、いつしか不正に加担してしまうこともあるため注意を要します。マイナンバー等、新しい税制との関連にも注意しながら、税理士法を順守した適正な業務を行いたいものです。