2014年8月12日
税理士業界で、資産税業務への注目が高まっていることはご存知のとおりです。 高齢化、相続税の課税ベースの拡大等により、相続・事業承継に関するマーケットが拡大することは確実なことであると言っても良いでしょう。
当然、資産税部門の税理士の求人は増えることになります。
転職を検討する勤務税理士の皆様の中にも、資産税業務を行う事務所を中心に求人の情報を集めている方は多いと思います。
しかし、ここで問題となるのが、現在勤務する事務所が法人税務・記帳代行を中心としている場合です。
資産税業務を行っていない事務所は、所長税理士自身が相続・事業承継に苦手意識を持っていて、事務所全体のお仕事として相続業務を行うことが少なくなるケースが多いようです。
このように勤務税理士の相続における経験が少ない場合、転職時に大きな不安を持つのは致し方ないところです。
ですがマーケットの拡大は、新たにその分野に参入する人が出てくるということを意味します。
つまり資産税専門の事務所も、未経験の人をスペシャリストに育てなければ需要に対応できないといった事情をお持ちの場合もあるのです。
転職をする時点で経験が乏しいことは、必ずしも致命的な欠点になるとは限りません。
転職を検討する方がまず行わなければならないのが、相続に関する理論面の整理です。
相続・事業承継分野の業務は、税法だけではなく民法や会社法、株式や不動産の評価等々、多岐にわたる知識が必要となります。
そして特に事業承継では、今まで行ってきた法人の会計知識も必須となります。
まずは、自分の今まで行ってきた業務と、資産税業務の知識をつなげる作業が必要となるでしょう。
そして、足りない知識については、自宅での学習、セミナーや勉強会への参加などで補っておくことです。
最近は、税理士だけではなく弁護士や司法書士、不動産鑑定士等、相続に関する士業のネットワークがあちこちで形成されています。
勤務税理士であっても、独立した立場で積極的にそのような場に顔を出し、専門家とのつながりを持つのも良い方法です。
勤務外の活動で、苦手意識を払拭しましょう。
そして、転職活動の場においては、面接等で資質をアピールする必要があります。
試験科目で相続税を選択している場合はもちろん、業務で資産税に関連する経験として挙げられるものはないか検討しましょう。
例えば、法人税の節税のために利用される生命保険についての知識は相続業務にも直結しますし、非上場株式の評価においては、
会社資産の状況が大きく影響しますので、貸借対照表等の作成、分析を行った経験は必須です。
資産税そのものの業務経験が乏しくても、理論面が整理されていれば、法人税務と関連する自分の強みが見つかるはずです。
経験があること、ないこと、そして今までの経験で応用できること等を検討することで、どんなことを聞かれても戸惑うことなく、客観的に自分の状況を説明できるのではないでしょうか。
そして最終的には、月並みですが「熱意」を見せることです。自分の弱みがわかった上で自分が今後取り組むべきことについての熱意を示せるかどうかが重要になるのだと思います。