2015年3月26日
中小企業の事業承継では、子への承継をはじめとした親族間承継が存在します。
しかし、経営者の高齢化が進むなか、親族の承継者がみつからないことで、承継対策がままならなくなるケースが多いのも現状です。
そこで検討の対象となるのが親族外承継です。事業承継税制の拡充で、納税猶予の対象として加えられたこともあり、さらに注目が高まっています。
親族外承継の手段は、大きく分けて他社によるM&A、役員・社員などによるMBO(マネジメントバイアウト)が考えられます。
中小企業においてこの2つの手法を検討する際、特に問題となるのが、承継者の選定です。
M&Aによる親族外承継では、売却先となる企業とのマッチングができるか、MBOによる親族外承継であれば、承継する役員・社員との合意形成が課題となります。
また、M&A、MBOでは、社員の理解を得ることに親族間承継よりもデリケートな部分があります。時間をかけて、承継へ向けた社内の基盤づくりを行う必要があるでしょう。
親族外承継には株式売却が伴いますが、ここで問題となるのが非上場株式の評価です。
株価算定において合意に至らないケースはM&Aにおける代表的な失敗ケースです。承継先を探す前に、財務体質を改善し、企業価値を高めることが重要となります。
MBOにおいては、企業価値を高めることのほか、さらに難しい課題が発生します。
それは後継者の資金力です。後継者が支払う株式への対価は、金融機関の借入によってまかなわれることが大半。しかも、経営者個人が負っていた債務保証を引き継ぐことも多くなります。
債務保証に関する条件変更等について金融機関の理解を得ることは容易ではなく、
また、承継へのモチベーションが高い承継者であっても、株式の買収資金の確保の困難、債務の引き継ぎへの抵抗感から承継を断念するケースも非常に多くなっているようです。
中小企業の親族外承継では、株式の価値を高めることのほか、金融機関から有利な融資条件を引き出すことが必須となります。
越えなくてはならないハードルは多くありますが、いずれも、その絶対条件となるのは、信頼性の高い会計書類を整えることです。
企業の財務状況を見極め、親族外のステークホルダーに情報提供を適切に行うことは、中小企業の「家業から企業へ」の脱皮を意味します。
税理士は、事業承継のための税制、法務、金融機関の融資制度についても目を向けながら、
各ステークホルダーがWIN-WINとなるような方策を提案することが期待される存在であることが求められています。
中小企業の親族外事業承継を成功に導くきわめて大きな役割を負っているといえるでしょう。