2015年1月5日
高齢化による税理士の相続業務に注目が集まっています。関連して重要性が重視されているのは、判断能力が低下した高齢者が財産を毀損しないよう管理する成年後見です。 成年後見制度には法定後見と任意後見があり、税理士業務としては特に任意後見の制度にどのように関わるかが課題となります。
任意後見は、本人の判断能力が健常な状態にあるときに、判断能力が低下した場合に備えて後見人、後見範囲を公正証書で定める制度です。
税理士は仕事上、顧問先の社長等と長くお付き合いをしています。そのため、判断能力が十分にある時点で「いざというときのために」という形で依頼を受けることがあります。
後見業務には財産管理がつきものであり、顧問先との信頼関係が絶対に必要です。高い倫理観が求められることは言うまでもありません。
最高裁の資料によると、任意後見契約の登記は6万件に近づく件数に達しています。
そして、実際に判断能力の低下が起きた場合の任意後見監督人選任審判の申立を行った件数は平成25年に716件あり、前年比約4.5%の増加。件数は毎年増えている状況です。
任意後見契約は家族・親族と行うことが多く、税理士が就任するケースは限定的となります。
契約件数、選任件数が増え続けている現状で、家族・親族が就任する場合にも、税理士が身近なアドバイスを行うことが必要です。
手続き等のサポートを弁護士や司法書士と連携しながら行うことが税理士に期待されています。
任意後見に関する業務を積極的に行う会計事務所の特徴として、まず当然のことながら相続や事業承継業務に力を入れる事務所であることが挙げられます。
事業承継を数年にわたって行う場合、計画の遂行途中で判断能力が低下することも考えられるので合わせて任意後見の契約を結び、
事業承継のために必要な法律行為について後見の範囲を事細かに決めておくことで承継計画はより周到なものとなります。
もうひとつ、規模の大きい税理士法人であることが挙げられます。これは任意後見契約が長期間に渡る可能性があるため、事務所の継続性の観点から、
税理士個人と契約するよりも法人単位であることが顧客の安心感につながることが要因です。
相続に強い税理士法人へ転職する場合は税法だけではなく、民法、後見審判に関する手続法など、後見制度に関する知識も学習しておく必要があります。
任意後見人に就任することになった場合にも対応できるだけの知識を今から身につけておきたいところです。