2016年2月8日
現在、景気回復傾向から企業業績の改善がみられていますが、好不調が業種によって大きく異なっていることも指摘されています。その中で、好調を維持している業種の一つが人材派遣業です。業界の現状とともに、税理士が行う人材派遣関連企業の税務・コンサルティングの実務について考えていきます。
派遣労働者は、民主党政権による規制強化等もあり減少していましたが、企業業績の回復による人材不足が進んだことで2013年に下げ止まり、増加に転じています。日本人材派遣協会の調べによると、四半期平均では2013年7~9月期から対前年同期比100%超を続け、2015年7~9月期は101.9%となっています。
倒産件数にも変化が見られます。東京商工リサーチによると、2015年度上半期の労働者派遣事業の倒産は31件。上半期では過去8年間で最少となりました。同社は「製造業やサービス業など、慢性的な人手不足を背景に、派遣労働者の需要は旺盛で、労働者派遣事業者の業績を底上げし」ているとしています。
最近の人材派遣業界の変化として、2015年9月に施行された改正派遣法の影響が注目されています。派遣期間に制限のなかった専門26業務の見直しなどにより、同一の派遣労働者の3年超の継続雇用が原則としてできなくなります。その影響については、正社員雇用が増加する、あるいは逆に正社員の派遣労働への切り替えが進む等様々な意見があり、予測は困難です。
さて、派遣事業者の経営・会計では、人件費の会計処理に特徴があります。人材派遣会社の管理スタッフに対する給与と、派遣スタッフが派遣先企業で労働を行ったことに対する給与は、それぞれ販管費あるいは売上原価と扱いが異なります。また、消費税の処理では、派遣先企業から受け取った対価は課税売上となるため仕入税額控除を受けることができるという特徴があります。
コンサルティングにおいては、税務会計のほか、法律改正の影響を受けやすい事業であることから労務・法務などのアドバイスが必要となります。たとえば、改正派遣法では派遣労働者へのキャリアアップ措置、雇用安定措置の義務化などコストアップにつながる要素もあるため、法制に合わせた経営戦略を練る必要があるでしょう。顧問先の事業者が戦略的な業態変更を検討する際、上記の会計処理の観点を含め、財務的影響を分析・助言できる税理士は心強い存在と言えるでしょう。