2016年5月12日
平成28年度税制改正で導入される新たな税制のうち、世代間の財産移転や、子育て支援の観点から効果が期待され、幅広い利用が予想されるものとして、3世代同居のために行われる住宅リフォームの工事費の税優遇が受けられる制度があります。税理士としての関与の仕方も含め、同税制について考えてみましょう。
3世代同居リフォーム税制は、高齢世帯から若年世帯への財産の移転を促すという目的のほか、共働き世帯の祖父母による子育てを推進する狙いがあります。政権が取り組む経済政策「新・三本の矢」の一つである子育て支援、女性の社会進出などの観点からも効果が期待されています。
同税制は所得税の税額控除であり、その方式として「リフォームローン型減税」と「リフォーム投資型減税」の2つがあります。対象となる3世代住宅の改修工事として、キッチン、浴室、トイレ、玄関のうち少なくとも1つを増設すること、また、これらいずれか2つ以上が複数箇所ある住宅であることなどの要件があります。
「リフォームローン型減税」は、既存の住宅ローン控除と似た制度といえます。住宅ローン控除との選択で、3世代同居に対応した住宅改修工事にかかった250万円までの住宅ローンの年末借入残高の2%相当額を、5年間税額控除できるというものです。
「リフォーム投資型減税」は、既存の耐震、省エネ、バリアフリーのリフォームを対象とした減税の対象を広げるものといえます。3世代同居リフォームを対象に、標準的な工事費用相当額について、上限250万円まで、10%に相当する金額が税額控除される制度となっています。なお、いずれの場合も、所得金額が3,000万円を超える場合は、適用できないという制限があります。
税理士としては、顧問先経営者、また相続税など資産税の業務に関与する顧客で、住宅を建築する予定のある方に情報提供をしておきたいところです。また、住宅メーカー等の事業戦略を立てる上でも同税制は重要ですので、顧問先に住宅関連企業がある場合、広告宣伝に利用できることを伝えるとよいかもしれません。
同税制の税理士業務としての特徴に、制度の性格上、直接・間接に、数世代をまたぐ顧客を相手にするという点があります。同税制に関する相談を受けることが、長期に渡る資産税の関与、コンサルティングを行うきっかけとなるかもしれません。法律の内容、実務上の注意点をまとめておき、積極的な啓発や事業展開を行ってみるとよいでしょう。