2016年4月14日
平成27年12月、政府与党による平成28年度税制改正大綱が決定。現在、可決へ向け国会での議論が行われています。大綱には、新制度として論議の的となる消費税の軽減税率のほか、重要な改正がいくつかあります。その中から、税理士の関与先企業への影響が大きいと思われる税制をいくつかみていきましょう。
今改正の目玉は、やはり平成29年4月1日の消費税増税と併せて導入予定の軽減税率。酒類および外食を除く飲食料品とともに、定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞について、税率を8%に据え置くとされています。また、軽減税率と関連し、平成33年4月1日からのインボイス制度の導入も盛り込まれました。
もう一つの目玉といえるのが、近年の改正の大きな流れともいえる法人税率引き下げ。大綱では「企業が収益力を高め、前向きな国内投資や賃金引上げにより積極的に取り組んでいくよう促していく必要がある」とし、現行の法人税率23.9%を28年度に23.4%、30年度に23.2%と段階的に引き下げるとしました。
また、法人事業税所得割の税率も引き下げられます。これにより、現在32.11%である法人実効税率が、28年度に29.97%となり、法人税改革において目標としていた「20%台」が早くも実現、30年度には29.74%となります。
中小規模の会社、財務状況が必ずしも良好ではない会社など、様々な会社の顧問である税理士にとって、法人税そのものよりも気になるのは、法人税引き下げのための財源確保の手段に位置づけられる課税ベース拡大策ではないでしょうか。
法人事業税の所得割の引き下げが行われる一方、資本金1億円超の法人を対象とした外形標準課税の税率引き上げが行われます。赤字企業や、所得の比較的少ない企業は、税負担が増加することが考えられます。
また、赤字企業に大きく影響するのが欠損金繰越控除。平成28年度に控除の上限が65%から、60%に引き下げられます(ただし、平成29年度は50%から55%に引き上げ)。また、減価償却制度では、建物附属設備と構築物の償却方法が、初年度に大きく償却できる定率法から定額法へ一本化され、設備投資の戦略にも影響が出ることが考えられます。
最近の税制改正は、黒字をしっかり出せる会社への税メリットが大きいという性格があります。とくに法人税の軽減税率が適用されている企業は、法人税引き下げの恩恵が少ないため、課税ベース拡大による影響について適切に助言していく必要があります。また、軽減税率やインボイス制度導入に伴い中小企業で懸念される事務負担の増加についても、有効なソリューションを提供したいところです。
税理士は、それぞれの制度について、施行日や実務ポイントを整理し、準備を進めておくべきでしょう。また、今後の国会での議論、行政による法運用などで、実務におけるポイントが変わることもあるため、注目しておく必要があります。