2017年7月18日
平成29年度税制改正では、日本の全企業の99%を占め、経済を下支えする中小企業を対象とした税制が整備されています。それと並行して変化の兆しをみせているのが、中小企業の定義。中小企業税制の対象法人を資本金の大きさのみで判断するのではなく、企業規模を実質的に判断するための改正が行われています。
平成29年度改正では、法人税・法人住民税等で規定される、いわゆる中小企業を対象とした租税特別措置について、平成31年4月1日以降に開始される事業年度から、従来の資本金に加えて、所得で判断する改正が盛り込まれました。
具体的には、資本金が1億円以下であるなど、従来特別措置が受けられる企業規模であっても、3事業年度の平均所得金額が、年間で15億円を超える場合、適用が停止されることとなっています。中小企業として扱われながら実質的には大企業といえる規模を持っている企業を確実に捕捉する狙いがあるようです。
中小企業向け税制特例として、最も重要なものといえば、利益を上げるすべての中小企業が恩恵を受けているであろう軽減税率でしょう。現在、資本金1億円以下の中小企業については、課税所得800万円までについて法人税率は15%となっています。なお、同制度は縮小されるとの懸念がささやかれていましたが、今改正で2年延長(平成30年度末まで)されています。
そのほか、中小企業を対象とした税制特例として、欠損金の全額繰越控除、外形標準課税の適用除外、留保金課税の適用除外、800万円までの交際費の損金算入、少額減価償却資産の損金算入、また今改正で拡充されている設備投資に関する税優遇など、重要なものが多数あり、対象から外れることになれば、影響は極めて大きいといえるでしょう。
以前、歴史ある有名企業が、減資による「中小企業化」の動きをみせたことで話題になったこともありましたが、中小企業の定義への疑問、また定義変更による課税ベースの拡大は、与党税制調査会でも議題に上ったことがあります。
今改正は、年間平均所得15億円と大規模な企業を対象としているため、該当する中小企業はそれほど多くはないともいえますが、今改正の影響だけではなく今後の議論にも注目する必要があります。上に挙げた各種中小企業税制特例については、課税ベース拡大の議論でそれ自体の縮小、廃止が議論されることもあり予断を許さない状況です。またそれに加え、中小企業の定義についても目を配る必要が出てくるのではないでしょうか。