2016年5月16日
最近の税制の中で、一般にも浸透し、一種のブームとなった「ふるさと納税」。平成28年度税制改正では、会社の地方公共団体への寄附に税優遇を設ける、いわゆる「企業版ふるさと納税」の創設が盛り込まれています。今回は、企業版ふるさと納税の概要や、活用に関してアドバイスすべきことをまとめてみます。
ふるさと納税は、直接任意の地方公共団体へ納税する制度ではなく、地方自治体への寄附についての控除制度です。個人バージョンでは、住民税からの税額控除で、実質的に納税額が居住する地方自治体から移転する形になります。
現在、法人が地方自治体に寄附をした場合、「特定寄附金」とされ、全額損金算入が可能。寄附額が法人所得に含まれないこととなるため、税負担なく寄附することができます。企業版ふるさと納税は、そこから一歩進んで、寄附金の最大30%が法人住民税等から控除される仕組み。これにより、ふるさと納税の特徴である、実質的な納税額の移転が実現します。
企業版ふるさと納税利用のメリットとしては、まず自社の地域への関わり、支援の気持ちを形にし、企業イメージを向上させることがあります。企業と関連が深い地域の自治体での知名度を高めるため、税メリットを得ながら戦略的に寄附を行う企業が現れることでしょう。
そして、個人のふるさと納税と同様、寄附をした法人に対する返礼もメリットの一つとなります。ただし、個人のものと比べると制約は大きくなることが考えられます。どのような返礼が認められるかは、法律の運用に深く関わる部分なので、今後の議論に注目したいところです。
企業版ふるさと納税は、費用負担を少なくして地方に寄附ができますので、利用にデメリットは少ない制度ではありますが、注意しなくてはならない点もあります。
当然のことですが、同制度では寄附した企業に自治体が公共事業入札等で便宜を図ることなどが禁止されています。それについては、どの企業も意識していることと思いますが、問題はその線引きにあります。ふるさと納税をしたことで、自治体との関係において、心当たりのない批判を浴びることも考えられます。同制度では、企業が関連の深い自治体への寄附が多くなると思われることから、いわばメリットとデメリットが背中合わせになっているのです。
寄附の是非や財務・税務的な影響について、税理士として相談を受けた際は、メリットを十全に享受するとともに、税制に関する正しい理解をもとに、アドバイスする必要があるのではないでしょうか。