2017年1月16日
2017年も引き続き税理士業界の労働市場は、人手不足の状況、すなわち、売り手市場の状況が続いています。2017年初頭の税理士の転職市場も、景気が劇的に悪化しない限り2016年度と同様な傾向が続くでしょう。
そこで、今回は税理士の転職市場に焦点を絞り、税理士の転職市場の優位性及び今後の展望について記載したいと思います。
税理士の転職先としては、大きく分けて4大税理士法人、中小税理士法人、個人の公認会計士事務所又は税理士事務所、一般事業会社の4つが選択肢として考えられます。以下4つの転職先に分けて説明します。
4大税理士法人は、KPMG税理士法人 、税理士法人プライスウォーターハウスクーパース 、EY税理士法人 、税理士法人トーマツのことを言い、4大監査法人のグループ会社になります。
4大税理士法人は、4大監査法人同様に上場企業、外資系企業等大規模で国際的なクライアントが多いため、転職市場の労働需要は景気に大きな影響を受けます。現在は好景気のため、売り手市場になっています。
4大税理士法人に転職しやすい要件は、まずは年齢の若さ、その次に英語力があります。英語力はTOEIC730点以上のビジネスレベルが望ましく、800点以上あるとさらに有利になります。
連結納税、組織再編税制、国際税務等、難解な税務の実務経験を積みたい方、安定して高い収入を得たい方は積極的に転職活動をするといいでしょう。
ただし、将来的に独立を検討している税理士の方にとっては、独立すると中小企業の税務が中心になるため、大手税理士法人の経験はそこまで活かせないことには留意する必要があるでしょう。
中小税理士法人は、中堅監査法人グループの税理士法人、相続税、国際税務等特定の税務に特化している税理士法人、個人事務所を法人化した税理士法人等多岐にわたります。中小税理士法人の労働市場は、4大税理士法人以上に人材不足の法人が多くなっています。
中小税理士法人は、一般的に法人や個人の顧問業務だけでなく、相続税、国際税務等、小さい案件から大きい案件まで幅広く扱う法人が多いため、多様な経験が積めます。
中小税理士法人は、公認会計士や税理士の資格保有者が大手税理士法人に比較して不足しているため、大手税理士法人より比較的昇進が早いことから、早期の昇進を望む人、多様な経験を積みたい人にお薦めの転職先になります。
また将来、国際税務や相続税を業務の中心として独立したい税理士は、それぞれ相続税、国際税務等特定の税務に特化している税理士法人への転職が、第一の選択肢と考えられます。
個人の公認会計士事務所または税理士事務所の労働市場は、事務所の業績によりけりであり、近年は業績のよい事務所と悪い事務所の格差は拡大しています。
個人の公認会計士事務所または税理士事務所のクライアント規模や案件は小さいものが多く、給与水準も4大税理士法人や中小税理士法人に比較して少なく、福利厚生の水準も低い場合が多いと言えます。一方で、独立のための実務ノウハウや営業のノウハウ等が得られるため、将来的に独立を検討している税理士は、その辺を割り切れるのなら転職先として候補になってくるかと思います。
現在、好景気なため、税理士の一般事業会社への転職も他同様に売手市場であり、経理部を中心に多くの求人があります。
ある程度の額の給与や福利厚生、また安定性を求める税理士の方は、一般事業会社への転職はお薦めです。
ただし、一般事業会社に転職した場合の税理士の扱いは、会社の規模や、本人の経歴、実務経験、得意分野、一般事業会社での経験、英語力等により様々となってきます。税理士だからといってCFO等主要なポジションが用意されているわけではありません。現状、CFOが税理士であるケースはそれほど多くない実情も踏まえ、将来、経営者層を目指す場合、税理士資格が特別有利に働くわけではないことも、踏まえておく必要があります。
公認会計士・税理士・米国公認会計士・米国税理士 福留 聡