2015年3月9日
最近、税理士が個人所得税業務、あるいは顧問先経営者とお話する過程で、少額投資非課税制度(NISA)に関する質問を受けることが多くなったという話をよく聞きます。
NISA口座数は現在800万件を超えているといわれています。
株価対策として政府が力を入れていることもあり、2014年の税制改正では、複数金融機関での口座開設が認められました。
今後も年少者のための口座開設や、限度額の拡大などが議論されることが予想されています。
しかし、NISAの特質を正しく理解していないことから、優位点を活用できていない投資家、納税者も存在するようです。
たとえば、勘違いされがちな点として「100万円の非課税枠の中で購入した証券等を売却した場合、その金額分の枠が復活するわけではないこと」などがあります。
そのため、短期売買を繰り返す投資を行うと、すぐに設定された枠をオーバーしてしまうことになります。
株式投資等を行うことがあまりない方であれば短期売買でNISAを使うことにもメリットはありますが、どちらかというと長期投資に向いている手法と言えます。
また、NISA口座での取引で損失が発生した場合も要注意です。NISA口座で取引される証券は、非課税ですが、
他の証券口座との間で損益通算、損失繰越ができず、NISAで損失が出た場合に税額が高くなる危険があります。
そして、NISA口座の株式の配当金等にも気をつけたいところです。
配当金を非課税とするには、「株式数比例配分方式」によって受け取る必要があり、領収証を金融機関に持ち込んで受け取ると、
所得税が源泉徴収されるため非課税にはなりません。
税理士業務では、相続税法の改正もあり、資産家の個人向けコンサルティングが注目されています。
運用資産そのものについて税理士が提案することには限界があり、あくまで税理士が専門とする税務に関することになるでしょう。
しかし、どのような投資をどのような手法で行うことが最適であるかは、税制によって変わることがあります。
最終的な投資商品の選択はもちろん投資家が行うものですが、NISAは今後の頻繁な改正が予想されるだけに、確実にアドバイスを行っておきたいものです。
株式、投資信託等、投資商品の性格、特徴などの知識を最低限得た上で、NISAを含めた投資にかかる税制について情報提供を行うことが、
顧問先の投資や資産運用の判断に資することになる面があることを認識しておくべきでしょう。