2017年4月3日
税務・会計実務において、専門性が高く、期間損益や税額、キャッシュフローの計算に大きく影響する処理のひとつが減価償却。適切な会計処理に税理士の知見が求められますが、減価償却について最近の税制で注目しておきたいことが、償却方法の定額法への一本化の流れ。平成28年度税制改正の内容も踏まえながら影響について考えてみましょう。
平成28年度税制改正では、一部の減価償却資産において定率法が廃止されました。具体的には建物附属設備および構築物、鉱業用の建物等を平成28年4月1日以後に取得した場合、建物附属設備及び構築物の償却方法は「定額法」、鉱業用の建物等の償却方法は「定額法」または「生産高比例法」のいずれかとなりました。
実務上気を付けたいことに、平成28年3月31日以前に取得した該当の資産に定率法を適用している場合は、耐用年数終了まで定率法となるため、ほかの資産と償却方法が異なる状態が続くという点があります。
また、4月1日以降に、該当する資産に資本的支出を行った場合には、新規資産の取得とみなすこととなるため、定額法が適用されます。資本的支出については、修繕費との違いに実務上の留意点がありますが、同じ資産について資本的支出の部分の償却方法が異なることが出てくるため、さらなる注意が必要となります。
税務のほか、財務会計上のポイントも整理する必要があります。税理士が多く関与する中小企業は、税務申告書を財務会計に利用することも多いですが、大企業等の企業会計において、法人税法をもとに減価償却費を処理している企業は、平成28年4月1日以後に定額法に変更する場合、いわゆる「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」として取り扱うことになります。
減価償却制度の変更について、税理士としては償却方法に誤りがないようにすることはいうまでもありませんが、実務ポイントのほか、税の専門家として注目しておきたいことは、償却方法の統一に関する昨今の議論の大きな流れです。
減価償却方法の定額法への一本化については、法人税率引き下げによる減収分を確保する「課税ベース拡大」に関する議論の中で何度も取り上げられています。定率法は、初年度に大きく償却できるため設備投資を促進する効果があり、償却率などがたびたび改正項目になることからもわかるように、経済政策的な側面が強くありました。定額法への統一が拡大することになると、顧問先企業の中には投資計画に大きな影響があるところも出てくるでしょう。今後の議論についても注視しておきたいところです。