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【税理士さだおかvol.1】女性の税理士は活躍できる?出産・育児休暇後の職場復帰のしやすさについて

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2026年6月19日 税理士 定岡 佳代

「出産したら、もうキャリアは終わりかもしれない」——そんな不安を抱えたことのある女性は、決して少なくないでしょう。特に士業や専門職を目指している方にとって、育児とキャリアの両立は切実なテーマです。

税理士という職業は、女性にとってどれほど活躍しやすい環境なのか。出産・育児を経た後の復帰はスムーズにいくのか。初回となるvol.1では、出産を機に会計知識ゼロから簿記の勉強を始め、約10年をかけて税理士資格を取得、40歳で正社員として転職し、その後、独立開業まで果たしたわたし自身の体験を軸に、女性が税理士として長く活躍できる理由と、職場復帰の実態についてお伝えします。

目次

■女性税理士は今、どのくらいいるのか

税理士は「男性が多い職業」というイメージを持たれることがあります。確かに数字の上では男性が多数派ですが、近年は女性税理士の割合が着実に増えつつあります。

2024年に公表された第7回 税理士実態調査によると女性の税理士の割合は16.1%。

とはいえ医師や薬剤師など他の医療系国家資格と比べると、まだ女性比率が低い水準にあるのも事実です。

しかし、この「少数派」であるという現実は、必ずしも女性にとってのデメリットではありません。むしろ税理士法人や会計事務所の採用市場において、女性税理士は希少価値が高く、有資格の女性であるというだけで強みになる場面が多いのです。

一方で、税理士業界全体の女性比率が低い背景には、試験の難しさと長い受験期間という構造的な問題があります。働きながら、あるいは育児をしながら5科目合格を目指すのは、体力的にも精神的にも容易ではありません。それでも近年は、科目免除制度を活用した大学院ルートや、試験環境の整備が進み、女性が税理士資格を取得しやすい環境は着実に整いつつあります。

【参考資料】
第7回税理士実態調査報告書
https://www.nichizeiren.or.jp/datalibrary/system/survey/250221b/

■なぜ税理士業界は、女性が活躍しやすいのか

税理士という仕事が女性にとって活躍しやすい理由は、この職業の構造そのものにあります。

まず、税理士は「資格があれば評価される」スキルベースの職業です。性別や年齢よりも、専門知識や実務経験が問われます。 税理士資格を持っていれば、ブランクがあっても、40代や50代でも、再就職の際に同じスタートラインに立てる のが、他の職種にはない大きな強みです。わたしのように出産・育児でキャリアを中断した期間があっても、「その間に育児と両立して国家資格を取得した」という事実は、むしろ転職市場でプラスの評価を受けました。

次に、 多様な働き方に対応している職場が多い という点があります。会計事務所の仕事内容は、会計入力担当、お客様の窓口となる税務担当、相続税申告に係る財産評価担当など、多岐にわたります。その中で、特にライフスタイルに合わせた働き方をしやすいのが「会計入力担当」です。月次入力は、お客様から回収した資料をもとに、決められた期限までに入力して試算表を作成します。 期日を守れば日々のスケジュールに融通が利きやすいため、時短勤務やパート勤務、リモート勤務など、育児に合わせたフレキシブルなシフトを採用している事務所も多く見られます。 子育て中の方でも無理なく働き続けやすい環境であると同時に、会計入力はすべての実務の基本でもあります。ここで積んだ経験は、将来税理士を目指す上でも、あるいは独立開業してからも必ず役立つ、一生ものの大きな強みになります。

また、税理士はクライアントとの長期的な関係を大切にする仕事でもあります。顧問先企業との信頼関係を構築することが業務の根幹にあるため、「人当たりがよい」「丁寧にコミュニケーションをとれる」「親身になって相談に乗れる」といった資質が高く評価されます。これらは性別を問わず重要なスキルですが、個人事業主や中小企業の経営者の中には、「細やかや気配りが期待できる」「話しやすい」といったイメージから、女性税理士への相談を希望するクライアントも一定数います。女性ならではの視点や感性を強みにできる仕事だということです。

■出産・育児でキャリアを中断しても、復帰しやすい理由とは

税理士資格の大きな特徴のひとつは、 「一度取得したら失効しない」 という点です。医師免許と同様、更新制度ではありませんので、育児に専念していた数年間があっても、資格そのものの価値は変わりません。

また、税理士試験は 1科目ずつ合格を積み上げていく方式(科目合格制) です。1科目の合格に有効期限はなく、何年かかっても積み上げることができます。これは、まとまった勉強時間が取りにくい育児中の女性にとって、非常に重要な仕組みです。たとえば、子どもが幼稚園に通い始めてから1科目、小学校に入学してからまた1科目、というペースでも着実に科目数を積み重ねていけます。

職場復帰のハードルが低い という点も重要です。税理士法人や会計事務所では、正社員だけでなく、パートや派遣といった雇用形態で採用しているケースが多くあります。「子どもが小さいうちはパートで実務経験を積みながら試験も続ける」という選択肢が現実的に取れるのは、税理士業界ならではのメリットです。

さらに科目合格の段階でも、採用市場での評価は上がります。1科目でも合格していれば「科目合格者」として会計事務所への応募要件を満たすことが多く、再就職の選択肢が一気に広がります。ブランクのある女性でも、科目合格があれば「努力を継続できる人物である」という証明になり、採用担当者の目に留まりやすくなります。

■わたし自身の体験——育児中、会計知識ゼロからのスタート

ここからは、わたし自身の話をさせてください。

わたしは現在、東京都内で税理士として独立開業しています。経歴を一言でいえば「理系大学院出身の元専業主婦が、出産を機に一念発起し税理士を目指した」というものです。

兵庫県出身で、神戸大学の工学部・大学院で土木工学を専攻していました。最初の就職先は関西の土木コンサルタント会社での技術職でしたが、夫の東京赴任と妊娠・出産を機に退社し、20代後半で専業主婦となります。会計の知識はまったくゼロの状態でした。

専業主婦になって3年目、次男を妊娠中に、友人からもらった日商簿記3級のテキストを手に取ったことがきっかけで勉強を始めます。「いつか社会復帰できるのだろうか」という漠然とした不安を常に抱えていたわたしにとって、「何か資格を取ろう」という思いは切実なものでした。独学で簿記3級に合格し、次男出産後の1年後に2級を取得。その後、1級に2回落ちたことをきっかけに税理士試験の存在を知り、理系出身でも受験資格を持てることを国税庁への問い合わせで確認して、税理士試験への挑戦を決意したのです。

初受験は2010年、30歳になる年のことでした。

■育児・仕事・試験勉強、3つの両立はどうやって実現したのか

「子育てしながら、どうやって勉強時間を確保したのか」——これは、同じ立場の女性から最もよく聞かれる質問です。

私が税理士試験に合格し、資格を手にするまでの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。最初の2年間は独学で挑んだものの、結果は連続でD判定(30点未満。当時もっとも低い評価)での不合格。3年目の春に次男が幼稚園へ入園したことでようやくまとまった勉強時間が確保でき、1科目目(消費税法)に合格することができました。専業主婦になってから6年、やっとの思いで掴んだ合格通知は、涙が出るほど嬉しいものでした。

しかし、その後も試練は続きます。翌年は簿記論と財務諸表論の2科目同時受験に挑んだものの、結果は両方ともA判定(50〜59点)での不合格。あと一歩のところで届かない悔しさに激しく落ち込みました。それでも気持ちを奮い立たせ、翌年は財務諸表論1科目に絞って合格。その後、税法最大ボリュームといわれる難関の「法人税法」に挑みます。

その法人税法では、3年連続A判定で不合格という大きな壁にぶつかりました。3度目の不合格通知を受け取った12月、私はひとつの大きな決断を下します。それは、税法免除を申請できる大学院への進学でした。

翌年の春には立教大学大学院に入学。2年間必死で修士論文を書き上げながら、残る簿記論の試験にも合格。2020年3月に大学院を修了し、同年秋、ついに晴れて税理士有資格者となることができたのです。

初受験から10年——。こうして振り返ると、本当にすごい年月ですよね。

もちろん、その間1日も休まず勉強を続けていたわけではありません。「もしあの年、もっと集中して勉強していれば、もっと早く資格が取れていたのかも」と思うことも、正直あります。それでも、わたしは「自分のペースで育児と両立して続けたからこそ、今がある」と思っています。育児も楽しみながら、ストレスをため込まないように(時には好きなお酒を飲んだりして!)バランスを取ってきました。

知識ゼロからのスタートでも、「自分のペースで長く続けていけば(諦めなければ)、必ず目的地に辿り着ける」。それが、10年を駆け抜けた私の率直な実感です。

■女性が働きやすい会計事務所・税理士法人の見分け方

資格取得と並行して、どんな職場を選ぶかも重要です。育児中の女性が無理なく働き続けられる事務所とそうでない事務所には、明確な違いがあります。

(1)働き方に融通が利くかどうか

わたし自身が意識していたのは、少人数で融通が利くかどうかという点でした。試験直前期には休暇を多めにいただく、大学院の授業がある曜日は休ませてもらうなど、事前にすべての希望を正直に伝えておき、その代わりに仕事が溜まっていれば休日出勤で補うようにしていました。 働き方をオープンに相談できる関係が、長く続けられる職場の条件 だと思います。

転職や就職活動の際に確認しておきたいのは、時短勤務やパート勤務の実績があるかどうかです。「制度としてある」と「実際に使われている」は別物ですので、面接の際に「育児中の方はいますか」「時短で働いているスタッフはいますか」と遠慮せずに聞いてみることをおすすめします。

(2)税理士登録に必要な2年間の実務経験を積めるか

また、パート・アルバイトの段階でどこまでの業務を任せてもらえるかも重要です。月次入力だけを担当するポジションと、顧問先を持ち打ち合わせにも出られるポジションでは、積める実務経験の質が全く異なります。子どもがまだ小さく正社員では働けない時期こそ、さまざまな会計事務所を比較してみるよい機会です。税理士登録に必要な2年間の実務経験を、この時期に少しずつ積んでおくという戦略も現実的です。

ジャスネットのエージェントは、そうした職場環境の内側の情報——「この事務所は育児中のスタッフが複数いる」「所長が受験生の勉強時間に理解がある」といった非公開の情報も把握しています。一人で求人票を見て判断するだけでなく、エージェントに相談することで、ミスマッチのリスクを大きく減らすことができます。

ジャスネットのエージェントに税理士の働き方を相談

■科目合格でも転職・再就職の評価は変わる——資格の持つ力とは

「科目合格だけで評価されるのか」という疑問をよく受けます。答えはYESです。

税理士試験は、各科目の合格率の多くが10〜15%前後という難関試験です。1科目でも合格していれば、周囲の見る目は変わります。会計事務所の多くは「科目合格者歓迎」を採用条件に挙げており、合格科目が増えるほど応募できる求人の幅が広がり、提示される給与水準も上がっていきます。

わたしが最初のパート勤務を始めたのは1科目(消費税法)の受験直後でした。そこから2科目目、3科目目と合格するたびに、働く環境と処遇が着実に変化していくのを実感しました。そして 税理士登録を目前にした40歳の転職活動では、4社から内定をいただき、20代で初めて就職したときより高い給与からスタートすることができました。 資格は、努力の積み重ねを客観的に証明してくれるものです。

女性税理士は全体の約2割弱という希少性も、採用市場では明確な強みになります。「女性の税理士先生に担当してほしい」というクライアントのニーズは一定数あり、事務所によっては女性有資格者の採用に積極的なケースもあります。ブランクがあっても、育児と両立して国家資格を取得したという経歴は、「継続力」「計画力」「タフさ」の証明として評価される時代になっています。

【参考資料】
国税庁 令和7年度(第75回)税理士試験結果表(試験地別)
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishishiken/shikenkekka/75/pdf/0025011-071-15.pdf

■この連載で伝えていきたいこと——女性税理士の「リアル」を一緒に考える

わたしが税理士試験と育児を並走させていた10年間のうち、3年目のときに「自分と同じような立場の先輩」を見つけることができました。当時、周りには同じように資格勉強を頑張っているママさんは少なく、孤独を感じることもありましたが、その先輩の存在や「ママ受験生のオフ会」などで出会った仲間に、私は何度も救われました。

しかし実際には、身近にロールモデルとなる情報が見つからず、一人で不安を抱えている方が多いはずです。出産や育児は、キャリアの終わりではありません。税理士という資格は、あなたが人生のどのステージにいても、必ずあなたを支える力になってくれます。難関試験に挑戦して本当によかったと、今のわたしは心からそう思っているからです。

この連載を通して、私のリアルな体験談をお伝えすることで、かつて私が先輩に救われたように、「自分にもできるかもしれない」と、一歩を踏み出す勇気を持ってもらえたらと願っています。そして、すでに資格取得を目指している方の息抜きになったり、新しく勉強を始めるか迷っている方の背中をそっと押すきっかけになれば、望外の喜びです。

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執筆者プロフィール

定岡 佳代(さだおか かよ)
税理士

兵庫県出身。神戸大学工学部建設学科、神戸大学大学院自然科学研究科(土木工学)修了。

関西で技術職に就くも、結婚・出産・上京を機に専業主婦に。次男の妊娠中に簿記の勉強を始め、日商簿記3級・2級に独学で合格。その後税理士試験に挑戦し、会計事務所勤務・立教大学大学院への通学と並行しながら3科目合格。2020年3月、立教大学大学院経済学研究科修了。2021年4月、税理士登録。2023年8月、独立開業。

プライベートでは硬式野球男子2人の母。「お客様はピッチャー、私はキャッチャー。どんな球でも受け止める。」をモットーに、お客様との対話を大切にしている。「イラストでわかる会計実務」をテーマにした記事を多数執筆中。

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