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会計事務所を選ばない道 企業内税理士の働き方、仕事内容って?

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税理士や科目合格者が、一般企業の経理部門で働く際は、どのような業務をやることになるのでしょう。また、会計事務所で働いていたころと変わるのは、どういったところなのでしょう。

この記事では会計事務所で働いたのち、大手企業の経理部門に転職し、現在は税理士法人を開業している筆者が「税理士として一般企業に転職したらどうなるのか?その業務内容は」といった疑問を紐解きます。

目次

1.税理士の企業内での業務内容とは

2.企業内で税理士が求められる役割とは

3.税理士が企業で働くメリットとデメリット

4.会計事務所から一般企業に転職する際に気をつけるポイント

5.まとめ

1.税理士の企業内での業務内容とは

(1)税理士の事業会社での具体的な業務内容とは

税理士といえば通常はクライアントからの依頼によって税務業務を行いますが、事業会社に勤務する税理士は、当然ながら社内の“当事者”として業務を行うことになるため、それまで会計事務所で行ってきた業務内容よりもその範囲は広がります。

会社にもよりますが、伝票起票や伝票チェックなどの経理業務から、経営管理システム改修のための検討、顧問税理士に相談するための税務論点整理や監査法人に伺いを立てるための会計論点整理まで、幅広く関わることになるでしょう。

具体的には次のような業務内容を行うことになります。

  • 経理伝票や会計、税務観点のチェック
  • グループ会社を含めた四半期決算の税金計算(法人税、地方税、消費税、事業所税)
  • 法定調書合計表、償却資産申告書、源泉所得税納付の申請書、申告書作成
  • 税務調査の対応
  • 新規事業を行う際の会計、税務観点のチェック
  • 顧問税理士への相談窓口
  • 経営管理システムの改修の検討
  • 税務コストマネジメント、税務リスクマネジメント

これは企業の事業内容や経理部門で税務関連業務を行うか、税務専門の部門に属するかによっても、その業務内容や業務難易度は異なります。

(2)わたしの場合

わたしは大学卒業後、税理士資格受験の専門学校に通いながら会計事務所に就職し、28歳のときに税理士試験2科目合格の状態で事業会社に転職しました。事業会社在籍中に無事最後の科目に合格し、税理士登録をしたことで企業内税理士になりました。

事業会社に入社したときは経理部門に配属されたため、当初は経理部門の税務担当として、伝票チェックから決算対応、税金計算、新規事業の会計・税務論点の検討、顧問税理士への相談といった業務を行っていました。

ただ入社して間もなく会社が海外事業の展開やM&Aの加速、IPOの準備、IFRSの導入、連結納税の導入など大きな変革期を迎えたことにより、専門性の高い案件に対応するため税務部門が発足。発足と同時にわたしも税務部門に配属され、グループ企業全体の税務コストマネジメントと税務リスクマネジメントなど、より高度な業務を行うようになりました

税務部門での具体的な業務内容は、税務コストマネジメントとして、試験研究費の税額控除や所得拡大促進税制の導入から現場を含めた運用設計、グループ企業全体の税金コストをどのようにすれば最適化されるかを検討したり、税務リスクマネジメントとして、会社が取り組むM&A案件や組織再編によって想定される税務リスクの抽出やその対応の検討、改善などを行っていました。

2.企業内で税理士が求められる役割とは

(1)ハイレベルな税務知識

経理部門の税務担当として求められる役割は、国内税務の専門性は当然ながら、クロスボーダー取引に関する国際税務や消費税、源泉所得税の取り扱いなどにより発生するリスクを少しでも企業内部で抑えられるようにすることです。

そのため税務ガバナンスやコンプライアンスの強化を目的に掲げた企業で求められます。

海外展開などを積極的に行う企業の税務部門などの専門性が高い組織では、経理部門の税務担当よりも高度なM&Aや組織再編、移転価格税制などの税務知識が求められます。

(2)(1)を背景とした即戦力

企業が税理士のような専門性の高い人材を求めるときは、欠員補充の場合もありますが、海外事業の展開や組織再編など、その企業自身が何かしら“変化”しようとしているときが多いです。

そのため、転職した後は企業ごとのフェーズや組織体制によって税務の専門知識がある税理士が即戦力として求められています。こうした専門家採用の背景には、昨今の複雑さをます税制対応やBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトによる世界的なコンプライアンス強化のための体制構築、利害関係者に対しての説明責任が企業に求められていることがあります。

企業としてしっかり税務ガバナンスを整え、税務コンプライアンスを強化していくことを課題として認識し、管理していくことが求められているのです。

(3)税務部門の管理職候補

企業が税務に関わる体制を強化していくことを重要視しているなら、経理部門の税務担当という枠だけでなく、税務部門の組織化も考えられます。

一般企業には経理のスペシャリストはいても、生え抜きの税務のスペシャリストがいることは稀で、また自社で育てることが難しいことから、会計事務所など外部から人材確保をしているケースがほとんどです。そのためもともと税務の知識が豊富な人材は、税務部門の将来的な管理職候補やプロフェッショナルとしても期待されています。

3.税理士が企業で働くメリットとデメリット

(1)メリット

①ワーク・ライフ・バランス

一般企業に勤務するメリットとして、ワーク・ライフ・バランスの良さがあります。

会計事務所の場合、年末から5月くらいまでは、年末調整業務から始まり年始の法定調書合計表、償却資産税の申告、所得税の確定申告、3月決算法人の税務申告と繁忙期が長期的に続くのでなかなかプライベートの時間が確保できないことが多いと思います。

一般企業の繁忙期は、経理部門の税務担当が決算対応をする場合、四半期ごとにやってくるイメージで残業することもあります。ただ年に4回経験でき、業務分担も行われているため、徐々に残業時間を減らすことが可能です。

税務部門の場合は四半期決算に関わることも減り、担当するプロジェクトごとに繁忙期がありますが、あらかじめスケジュールを設定して動くことが多いので比較的業務量の波は少ないかもしれません。

上場企業だと有給休暇の取得も推奨されていたり、残業時間の削減に取り組んでいたりする企業も多く、会計事務所よりもワーク・ライフ・バランスは整いやすい傾向があります。

②人事制度の充実
上場企業などに勤務することができれば、その人事制度の違いによるメリットもあります。

ひとつは退職金制度の充実です。退職金がある会計事務所もあると思いますが、正直あまり充実しているものだと聞いたことはありません。会計事務所は一般企業に比べて数年ごとに転職されるケースも多く、ひとつの事務所に長く勤務するケースがあまりないことが影響しているのかもしれません。

しかしながら上場企業は優秀な人材に長く勤務してもらうことを前提にした制度が整っているので、退職金制度が充実しています。将来的に独立開業を考えている人は、退職金を開業資金にあてることができるのも魅力です。

また国内外のグループ会社や他部署へ異動できることもメリットだと思います。会計事務所だと2~3年経験すると今後のキャリアアップを考えて転職をする人もいます。

一般企業の場合、税務部門に限らず、経理部門や経営企画部門、IR部門、財務部門など数字に関する部門も多く、またグループ会社への出向をすることで、転職せずとも業務内容を変え、さらなるキャリアアップを図ることも可能です。

実際、わたしも会計事務所からキャリアアップを考えて一般企業に転職しましたが、退職するまで在籍期間の半分以上はグループ会社に出向し、内部統制や経営企画、財務会計の責任者など税務以外の幅広い経験を積むことができました。人事評価も専門知識のみならず、スキルやスタンスも評価の対象になるので、ビジネスパーソンとしての実力も身につきます。

③企業の会計、税務に内側から関われる
企業内部の従業員になるので、当事者として事業にまつわる会計、税務を作り上げるところから関与することができます

会計事務所の担当者だと、企業が行う事業で顕在化された税務論点について相談されるといったケースが多いと思いますが、企業内税理士になればそもそも事業を始める背景から関与することができるので、潜在的なより実務にそった会計、税務論点に関わることができます。

会計上問題があるから、税務上はNGだからと決めつけることなく、事業において本当にやりたいことは何なのか、どこまで許容できるのか、どのようにすれば実現できるのかをゼロベースで考えて取り組む面白さがあります。

(2)デメリット

①転勤の可能性
経理部門や税務部門は本社機能に属することが多いので、本社からの転勤は限られますが、企業の状況によっては、海外への転勤なども考えられます。本人希望も考慮されるケースもあると思いますが、海外勤務を望まない人にとってはデメリットになります。

②部署異動の可能性
部署異動も税務だけを専門にやっていきたい人にとっては、デメリットです。

経理部門に限らず、営業部門などに異動する可能性もあるため、望まない異動はストレスにもなります。わたしも経理部門からグループ会社へ出向したときは専門性を高められないことに悩んだことがありました。ただ、結果としてはキャリアアップだけでなくビジネスパーソンとしてのスキルアップの機会になったので、今はよかったと考えています。

③中小企業税制や社長からの感謝される機会の減少
大企業のみの会計、税務に偏って関与していると中小企業の税制に触れる機会が少なくなります。将来的に中小企業税制に関与する場合は、多少学び直しが必要かもしれません。

また、会計事務所担当者だと社長との面談機会がありますが、その機会はなくなります。一般企業では企業内部の会計、税務を当事者としてチームで業務分担するため、前提として企業の方針があって、組織があり、組織に所属して業務を全うするため、社長から直接“ありがとう”と言われる機会はなくなるのは少し物足りなさを感じるかもしれません。

4.会計事務所から一般企業に転職する際に気をつけるポイント

(1)本当に企業でいいのか?

これまで述べた通り、会計事務所と一般企業は人事制度も組織も文化も異なり、外部からの担当者なのか当事者として企業の数字に関わるのか自分が置かれる立場も異なります。

転職する際は、会計事務所と企業との違いを自分自身が受け入れることができるか、自分にとって魅力があるかをよく考えましょう。

(2)税理士の採用実績はあるか?税理士としての業務機会は?

面接時には、その企業の税理士の在籍状況を確認するのも有用だと思います。

入社後に自分がもっているスキルや知識でどのような活躍の場があるのか、どんな業務に触れる機会があるのかによって、キャリアプランが大きく変わってくると思います。

(3)求められる役割の確認

企業のフェーズやご自身の状況によって役割は変わってきます。企業がなぜ税理士を採用しようと考えていて、今後どのような方針で進んでいくのか、またご自身が試験科目合格者なのか、税理士なのか、どのような業務に関与が想定されるのかによって、求められる役割は変わってきます。

税務コンプライアンスを強化するために経理部門の税務担当者が必要なのか、タックスプランニング、M&Aや組織再編など高度な税務知識を求められるのかは企業のフェーズによって大きく異なるので注意が必要です。

5.まとめ

税理士資格や科目合格を持っていることは、高い専門性を求める一般企業にとって大きな価値なので、一般企業で働くことも一つの選択肢なのではないでしょうか。

わたしは科目合格の状態からキャリアアップを求め一般企業に転職し、大企業の経理に直接触れることができ、また異動によって会計や税務以外の経験によってビジネスパーソンとしての重要なスキルを身につけることができました。

こうした経験や人脈が独立した今に活きていることは間違いないと言い切れます。一般企業に転職してもまた会計事務所に戻れるという気持ちで挑戦してみるのもありかもしれません。

執筆者プロフィール

小嶋 辰緒((こじま たつお)
税理士

税理士法人タドルコ 代表社員
埼玉県出身
昭和57年生まれ
明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科修了(経営管理修士)

大学在学時より家電量販店でアルバイトをしつつ税理士資格取得のための専門学校に通い、20名規模の会計事務所に就職。事業会社に転職後、大学院を修了し2016年税理士登録。2018年に7年半在籍した事業会社を退職し独立。
2021年税理士法人設立。

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