税理士として注意したい、通達6項最高裁判決を踏まえた注意事項
■衝撃の最高裁判決
2022年4月19日に相続税の衝撃的な最高裁判決が下されました。
要するに「相続税申告上は、本当の時価より割安な相続税路線価等の価格を悪用して、税逃れの意図で亡くなる直前に無理やりたくさんの不動産をこさえた場合は、本当の時価で相続税を課すよ」という判決です。
ただ、判旨があいまいだったこともあり、あちこちで相続税の心配をされる方から不安の声が聞かれます。
特に相続税を扱う税理士の関心を集めたのが、結論としては租税回避行為については通達6項に基づき課税するよ…というもの。
判旨において通達6項の適用基準があいまいな点は大いに不満が残るところであり、実務上も際どい判断が生じる場合もある点は十分に留意すべきでしょう。
※参考衝撃の最高裁判決 ~相続税路線価の否認、税務署に睨まれないようにするには?(冨田建) - 個人 - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/tomitaken/20220420-00292218
ここで、留意すべきは、極論を言えば「どんな不動産でも通達6項の適用可能性が生じた」との点。
普通に考えて、昔から取得していた、もしくは自用であった等の、租税回避行為の要素が見受けられない不動産については通達6項の適用はないと考えられるものの、いざ当事者となると、万が一を考えて慎重を期すべきでしょう。
■税理士にお伝えしておきたいこと
税理士の方々に向けに提案したいのは、ご依頼者に対する申告前の確認として、この点の説明責任を前もって確保しておくことです。
ちなみに、筆者自陣は相続税申告案件では必ず「説明義務を果たした旨を明確にするため」に書面による覚書をとっています。
※参考相続税における「不動産の怖さ」とは? ~もし依頼した税理士が間違って申告をしてしまったら(冨田建) - 個人 - Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/tomitaken/20211118-00268654
■覚書に追加するとよい文言
今回の判決を踏まえ、相続税申告に関する筆者の覚書には以下を追加しました。
「不動産につき相続税財産評価基本通達6項に基づく評価の結果として課税遺産額に変更が生じ、課税される危険を完全否定はできないが、本件ではその可能性が低いと推察される点に鑑み、相続税路線価等で評価を行うことを承諾した点」
税理士の皆様におかれてもご自身の業務における参考としていただければと思います。
■最後に
今回の裁判の鍵は、「税逃れ」は課税するよとした点です。
「税逃れ」として判決それ自体のロジックの問題点は前回の記事に書いた通りですが、少なくとも幅広い「親御さんの相続問題を抱えている方」には、「税逃れであるか否か」というキーワードをご記憶いただければと思います。
- 執筆者プロフィール
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冨田 建(とみた けん)
不動産鑑定士・公認会計士・税理士慶應義塾中等部・高校・大学卒業。大学在学中に当時の不動産鑑定士2次試験合格、卒業後に当時の公認会計士2次試験合格。大手監査法人・ 不動産鑑定業者を経て、独立。
全国43都道府県で不動産鑑定業務を経験する傍ら、相続税関連や固定資産税還付請求等の不動産関連の税務業務、雑誌やネット記事の寄稿や講演等を行う。特技は12 年学んだエレクトーンで、平成29年の公認会計士東京会音楽祭では優勝を収めた。
令和3年8月には自身二冊目の著書「不動産評価のしくみがわかる本」(同文舘出版)を上梓。
令和3年10月よりyahoo!様の個人オーサーとしても、不動産にまつわる税金の記事の執筆も手掛けている。
令和3年度国土交通省地価公示鑑定評価員、同年の東京国税局の相続税路線価の鑑定評価員・土地価格精通者、公認会計士世田谷会幹事、その他公職にあり - 著書
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弁護士・公認会計士・税理士のための 不動産の法令・評価の実務Q&A(税務経理協会、2014)
(※amazonの書籍ページに遷移します)ビジネス図解 不動産評価のしくみがわかる本
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冨田会計・不動産鑑定株式会社
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