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【税理士試験】戦略的ミニ税法の選び方|おすすめ科目と合格への最短ルート

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2025年10月28日 ジャスネットキャリア編集部

税理士試験の科目選択において、「ミニ税法」は学習負担の少なさから人気の高い選択肢です。しかし、「受かりやすい」と言われる一方で、実際には限られた範囲を完璧に仕上げなければならず、想像以上にシビアな戦いになることもあります。

本記事では、国税徴収法・固定資産税・事業税・住民税といった代表的なミニ税法の特徴や実務での活用度、選択時に注意すべき落とし穴を解説。単なる「楽な科目」にとどまらない、戦略的なミニ税法の活用法を考えます。

■戦略的ミニ税法の活用法

(1)国税徴収法という選択肢の実像

「受かりやすい科目」という質問に対して、多くの合格者が挙げるのが国税徴収法です。国税徴収法の最大の特徴は、ほぼ理論のみで構成さており、学習ボリュームが少ない試験であるという点です。計算が苦手な人にとっては、理論暗記に集中できるという意味で取り組みやすい科目と言えます。また、出題範囲が他の税法と比べて狭いため、完璧に仕上げやすいという面もあります。

しかし、ここに大きな罠があります。 範囲が狭いということは、すべての受験生がほぼ完璧に仕上げてくる ということです。理論を完全に暗記するのは当然のこととされ、そこからさらに細かい表現の正確さや、論点の深い理解が求められます。

さらに、国税徴収法は実務での使用頻度が極めて低い科目です。例えば弁護士法人や、法律事務所などで所属する税理士として働く場合には役に立つこともあるようです。つまり、 純粋に試験合格のためだけに学習することになり、税理士事務所などでの勤務を希望する場合には、ほとんど使用機会がないという ことになります。

(2)固定資産税・事業税・住民税の位置づけ

ミニ税法の中でも、固定資産税、事業税、住民税は国税徴収法とは少し性質が異なります。これらは計算問題も出題され、基礎的な知識の正確性が問われる科目です。

固定資産税は、土地や建物に対する課税の考え方を学ぶ科目です。事業税は法人税法と所得税法との関連性が高く、法人税と所得税を学習済みの受験生にとっては取り組みやすい科目です。住民税は所得税法との重複が多く、所得税の学習者には有利な科目となっています。

これらの科目の合格率は、年度による変動はあるものの、比較的高めに推移する傾向があります。ただし、これも受験者層の質に大きく左右されます。例えば、事業税や住民税は、すでに法人税法や所得税法の学習を終えた受験生が選ぶことが多く、 基礎学力の高い受験者が集まっています。

実務での使用頻度という観点では、いずれも決して高くありません。例えば住民税は、所得税の確定申告を行えば自治体が自動的に計算してくれるため、税理士が直接業務で扱う機会は少ないのが実情です。

(3)ミニ税法選択の本質的な問題

ミニ税法を選択する際に考えなければならないのは、 「なぜその科目を選ぶのか」という根本的なところ です。

確かに学習時間は短くて済みますが、それは合格しやすさを意味しません。むしろ、完璧な答案が求められ、一つのミスが命取りになるという意味では、大型税法以上にシビアな戦いになります。また、実務で使わない知識を純粋に試験のためだけに詰め込むというのは、長い税理士人生を考えたとき、本当に価値ある選択なのでしょうか。

5科目目、つまり最後の1科目としてミニ税法を選択するのは、一つの合理的な戦略です。すでに実務に必要な主要科目を取得しており、残るは合格だけという状況なら、学習負担の少ない科目で確実に合格を目指すのは理にかなっています。

しかし、もしあなたがまだ3科目目や4科目目の段階で、安易に「楽だから」という理由でミニ税法を選ぶのは、将来的なキャリアを考えると疑問が残ります。税理士としての専門性や付加価値を高めるという観点から、科目選択を考え直してみる価値があるかもしれません。

■科目選択で避けるべき落とし穴

(1)合格率の数字だけで判断する危険性

ここまで読んでいただいた方には、もうお分かりかと思いますが、合格率という数字だけで科目を選ぶのは非常に危険です。

例えば、ある年に固定資産税の合格率が18%だったとします。一見すると高く見えますが、これは相対評価の結果に過ぎません。その年の受験者層のレベルが低かったのか、試験問題が比較的解きやすかったのか、様々な要因が絡んでいます。翌年には合格率が10%台前半に下がることも十分ありえます。

繰り返しになりますが、合格率が高いということは、多くの受験生が高得点を取っているということでもあります。つまり、より完璧な答案が求められ、わずかなミスが命取りになる可能性が高いのです。合格率という数字に惑わされず、その科目の本質的な特徴や、自分との相性を見極めることが重要です。

(2)実務での価値を無視した選択

税理士試験の科目選択は、単に試験に合格するためだけのものではありません。 合格後、数十年にわたる税理士人生で活用する知識を学ぶもの です。

酒税法を例に考えてみましょう。確かに学習ボリュームは少なく、計算問題が得意な人にとっては取り組みやすい科目かもしれません。しかし、酒造メーカーなど特殊な業種を扱わない限り、実務で酒税法の知識を使う機会はほとんどありません。試験合格のためだけに膨大な時間を投資して、その後一度も使わない知識を詰め込むことに、本当に価値があるでしょうか。

もちろん、5科目目として「とにかく合格して税理士資格を取る」という段階であれば、実務での価値を度外視するのも一つの選択です。しかし、まだ早い段階で、将来のキャリアを犠牲にしてまで「このように使用頻度の低い科目」を選ぶのは、長期的に見て得策とは言えないでしょう。

(3)自分の学習スタイルとのミスマッチ

科目にはそれぞれ特徴があり、求められる能力も異なります。自分の得意分野や学習スタイルとの相性を考慮せずに科目を選ぶと、必要以上に苦労することになります。

理論暗記が得意な人にとっては、国税徴収法のような理論中心の科目は相性が良い でしょう。逆に、暗記が苦手で論理的思考が得意な人は、法人税法のように体系的に理解できる科目の方が向いているかもしれません。

また、学習時間の確保という観点も重要です。 残業が多く、まとまった学習時間が取れない環境にいるなら、一日数時間の集中学習が必要な大型税法は現実的ではありません。 スキマ時間を活用した学習が中心になるなら、理論暗記中心の科目や、比較的学習範囲が狭い科目を選ぶのが賢明です。

自分の強みと弱みを冷静に分析し、それに合った科目を選ぶことが、結果的に合格への最短ルートとなります。他人の成功パターンをそのまま真似するのではなく、自分だけの戦略を立てることが大切なのです。

■まとめ~戦略的科目選択が合格への鍵

税理士試験における科目選択は、単に「受かりやすい科目」を探すことではありません。それは、あなたの将来のキャリア、現在の生活環境、そして個人の適性を総合的に考慮した、戦略的な意思決定なのです。

合格率という数字は一つの参考にはなりますが、それだけで判断するのは危険です。受験者層のレベル、学習ボリューム、実務での活用度、自分の得意分野との相性など、多面的な視点から科目を評価する必要があります。

ただし、これらはあくまで一般論です。あなた自身の状況、目標、適性によって、最適な選択は異なります。他人の成功パターンを盲目的に追うのではなく、自分だけの合格戦略を立てることが重要なのです。

税理士試験は長い戦いです。時には挫折を経験し、モチベーションが下がることもあるでしょう。しかし、明確な戦略と目標があれば、その困難を乗り越えることができます。あなたの科目選択が、税理士としての輝かしいキャリアの第一歩となることを願っています。

(執筆協力:簿記講師 鯖江 悠平)

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執筆者プロフィール

ジャスネットキャリア編集部

WEBサイト『ジャスネットキャリア』に掲載する記事制作を行う。
会計士、税理士、経理パーソンを対象とした、コラム系読み物、転職事例、転職QAの制作など。

編集部メンバーは企業での経理経験者で構成され、「経理・会計分野で働く方々のキャリアに寄り添う」をテーマにしたコンテンツ作りを心がけていてる。

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