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【過去問だけでは足りない⁈】会計専門学校講師が語る!簿記論合格にかかる勉強時間、難易度は?

写真1

簿記講師 鯖江 悠平

「簿記論は難しすぎて、受かる気がしない」という言葉をたまに耳にします。

税理士資格を取得するためには、避けて通れない科目ですが、その難易度はどのくらいなのでしょうか?また合格までに必要な勉強時間はどのくらいで、独学でも可能なのでしょうか?

この記事では、これらの疑問について簿記講師の鯖江悠平さんに伺いました。鯖江さんは10年以上にわたり、会計専門学校で多くの生徒に教えてこられた方なので、合格に向けての具体的なアドバイスと効果的な勉強法がわかります。

目次

■簿記論について

■簿記論 試験の概要

■簿記論に合格することのメリット

■簿記論の難易度は?

■簿記論に合格するための勉強時間は?

■簿記論 合格に向けてのポイント

■簿記論に知識ゼロから挑戦する人は、何から始めればよいか

■簿記論について

(1)簿記論の受験要件は?

簿記論は税理士試験科目の中で、取得が必須とされる3つの中の一つです(その他は財務諸表論、法人税法と所得税法のどちらかが必須)。

令和5年の試験から受験資格要件が緩和され、簿記論と財務諸表論は誰でも受験が可能となりました。

これまであった学歴や日商簿記1級もしくは全経簿記上級の合格、2年以上の一定の会計・法律事務経験者といった要件がなくなったことで受験者の裾野が広がり、高校生でも受験が可能となりました。

(2)簿記論の合格者数は?

この効果か令和5年度の受験者数は16,093人と、前年の12,888人から1.25倍と明らかに増えていますが、合格者数に関してはやや減っています(表参照)。

表「簿記論 合格者数」

わたし自身も令和5年の試験問題を確認しましたが、簿記2級から一足飛びに受験し合格できるほど、生易しい内容ではないように思います。合格には小手先の計算スキルでは通用せず、試験範囲を深く理解をした上で演習を重ねることが必要だと感じました。

■簿記論 試験の概要

(1)設問の点数配分はわからない

第1問 個別問題(25点)、第2問 個別問題(25点)、第3問 総合問題(50点)の3問(計100点)で構成されます。

各問の中の設問の点数配分は公表されていません。また60点以上で合格とされていますが、合格者に「何点取得して合格」といったことは通知されません。逆に59点以下で不合格の方には点数が通知されます。

こういったことから受験後に自己採点をしても、合格したかどうかがなかなか自身では判別にしくいということが起こります。おそらく不合格だと思っていても合格したり、その逆のケースもあったりします。

(2)試験時間が足りない

試験時間は2時間となります。問題の分量が非常に多く、制限時間2時間で終えられる人はほぼいないでしょう。なので、試験中に解く問題と切り捨てる問題を見極めることが必要です。

詳しい年度は失念しましたが、2009年頃の試験で、第1問が非常に難しかったときがあります。この時に第1問から解いていった受験生は、解答できる問題に時間を割くことができず、試験が終了してしまったという話を何度か耳にしました。合否に影響が出ていたようです。

このように、難問は試験中に見切りをつける判断力が非常に大切となります。

■簿記論に合格することのメリット

簿記論を取得することのメリットは、まず税理士になるために必要な科目であるということが一つ。

また、簿記論を持っていると税理士・会計事務所への就職や転職の際に大きなアドバンテージになることです。税理士試験科目は1科目でも持っていると、大きな評価となり、多くの事務所では資格手当などがもらえる対象となります。

一般企業への転職の際には、残念ながらそこまでの評価にはならないようですが、税理士試験科目を1科目でも取得した努力やポテンシャルの部分は評価されるでしょう。

■簿記論の難易度は?

簿記論と日商簿記1級の難易度を比較されることがあります。簿記論には原価計算がないなど試験範囲が若干違うので、正直比較することは難しいです。

単純に合格率で比較をして、日商簿記1級の方が難しいと言われることが多いようですが、日商簿記1級と簿記論のどちらも取得したわたしの意見としては、「どっちもどっち」でしょうか。どちらもそれぞれの違った難しさがあります。

税理士試験の各科目はおおよそ10%程度が合格するといわれていますが、上記の表からわかる通り、過去5年間では17.4~23%の方が合格となっています。

■簿記論に合格するための勉強時間は?

(1)独学か会計専門学校か

独学に関しては、ほぼ無理ということを先に申し上げておきます。

独学の場合は、市販のテキストは書店で購入できますが、答案練習などの網羅的な問題が手に入りにくいのではないでしょうか。資格の予備校などに入るのがよいでしょう。

(2)簿記論合格にかかる勉強時間

日商簿記1級合格者で、500時間というのが一つの目安になるでしょう。この500時間には講義を受ける時間も含まれており、「3時間の講義×60回+演習を300時間程度」が内訳となります。

同じ日商簿記1級の合格者でも、それぞれに理解度に差があるので必要な時間としては500~1,000時間くらいと幅があるでしょう。

受講生の中には、すでに日商簿記1級をお持ちの方で8時間の演習を25日間続けて、つまり1カ月で受かった例があります。このケースでは、日商簿記1級の理解度が高かったといえるのではないでしょうか。

初学者については、1,000時間以上はかかるとお考えください。

■簿記論 合格に向けてのポイント

ポイントは、「演習をやりこむこと」と「試験中に難問に対していかに見切りをつけるかの判断」の2つになります。ここではその2つを中心に試験の傾向をはかるために知っておくべきことを述べます。

(1)演習をやりこむ

日商簿記1級の記事の際も同じことを言いましたが、簿記ができるようになるためにはとにかく演習をすることが大事です。

年1回しか試験のない簿記論は、年2回試験がある日商簿記1級と比べても、過去問から試験の傾向をつかむことが難しいということが言えます。

試験委員もあえて過去とは違う出題方法により作問されると考えられるので、過去問のみを解くことはオススメできません。資格の予備校の予想問題や答案練習などの演習をやることが非常に大事となります。

(2)試験中、難問に対していかに見切りをつけるかの判断力を養う

試験はとにかく時間が足りず、難問に対していかに見切りをつけなくてはならないと、すでに述べました。

この判断力を養うには、(1)でも述べた演習を重ねるしかないのです。いくつもの演習をやり、「この手の問題は計算がやっかいなので時間がかかる」といったことを体感として知ることで、試験中に「どの問題を切るか」の判断力を養うことができるようになるのです。

なので、とにかく理解したうえで演習を多くやることが合格の近道だとわたしは思っています。

(3)試験の傾向をはかるために知っておくべきこと

過去問からは試験の傾向をつかむことは難しいのではないかと、すでに述べました。一方、予測する方法もなくはないので、それをお伝えします。これは簿記論に限らずの話になります。

それは税理士試験の問題を作成する試験委員に着目することです。合格発表後に次回の試験委員が公表されますので、確認することをオススメします。

試験委員の任期のうちに、おそらく自身の一番専門の分野を出題してくるだろうということは予測できます。実務家が作成する問題も、その実務家がそれぞれの事務所で専門にしていること、また著書などがあればそういったところまでチェックすることで予測を立てられなくもありません。

ただ、個人でそこまでの労力をかけるのは難しいでしょう。資格の予備校であれば、その辺はつかんでいるので、これも独学は避けた方がよいと述べた理由の一つです。

■簿記論に知識ゼロから挑戦する人は、何から始めればよいか

このように問われたら、まずは日商簿記3級から勉強を始め、日商簿記1級の範囲を理解することを目標とすることをお勧めします。

「日商簿記1級には簿記論に不要な試験範囲もあるのでは?」といった意見もあるかと思いますが、試験合格の先にあるのは何よりも企業なり会計事務所なりで一人の会計人として働き社会に貢献していくことです。

その際に、けっして日商簿記3、2、1級の試験勉強で得た知識が無駄になるものではありません。

この記事をきっかけに、一人でも多くの方が日商簿記検定や簿記論の試験に挑戦することになれば幸甚です。

執筆者プロフィール

鯖江 悠平(さばえ ゆうへい)
簿記講師

簿記専門学校卒業後、専門学校の簿記会計講師を担当。

これまで簿記会計の授業だけではなく、テキストや問題集等の教材開発、学生の就職相談や卒業生の転職相談など幅広く業務に携わっている。

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