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税理士の職場環境はどんな感じ? 大手税理士法人と中小事務所のリアル比較

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2025年10月23日 ジャスネットキャリア編集部

税理士として働く場所を選ぶとき、多くの人は「給与の高さ」や「知名度」に目を向けがちです。しかし、実際に働き始めてから「こんなはずではなかった」と後悔する税理士が少なくありません。

税理士の職場環境は、単に日々の業務をこなす場所以上の意味を持っています。あなたの専門性の向上、人間関係の構築、ワークライフバランス、そして長期的なキャリア形成に深く影響を及ぼすのです。

このコラムを、ぜひ自分に最適な職場選びの参考にしていただければうれしいです。

目次

■なぜ税理士にとって職場選びが重要なのか

大手税理士法人で働く税理士と中小規模の税理士事務所で働く税理士では、同じ資格を持っていても、5年後、10年後に身につけているスキルや経験は大きく異なります。また、職場の文化や価値観は、あなたの働き方に対する考え方そのものを変えることもあるでしょう。

現在、税理士業界は大きな変革期を迎えています。AI・RPA・クラウド会計ソフトの普及と今後の発達、デジタル化の進展、クライアントニーズの多様化など、様々な変化が起きています。このような環境下では、自分に合った職場を選ぶことが、将来の競争力を維持するための重要な戦略となるのです。

では、大手税理士法人と中小規模の税理士事務所では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

■大手税理士法人の業務の特徴は「業務プロセスの標準化」と「分業体制」

大手税理士法人の特徴は、徹底した「業務プロセスの標準化」と「分業体制」にあります。
クライアント管理から申告書作成までがシステムで一元化されており、担当者ごとに役割が明確に分かれています。

どう分業されているかは税理士法人によりますが、例えば申告書の作成などを主に行う 『税務コンプライアンス部門』 と、各種の税務アドバイスを行う 『コンサルティング部門』に分かれていたりします。

この分業により、 税理士は自分がやるべき業務に集中できます。 また、最新の税務ソフトウェアや分析ツールを使いこなすスキルが自然と身につくため、デジタル時代の税理士に求められる能力を効率的に習得できるのです。

若手税理士にとって、体系化された環境で基礎をしっかりと身につけられることは、長期的なキャリア形成において大きなメリットとなります。 正確で効率的な業務処理能力は、どのような職場に移っても活かすことができる普遍的なスキルだからです。

■大手税理士法人でしか実現できない「専門性の追求」とは

大手税理士法人では、規模の利点を活かした高度な専門性の追求が可能です。これは中小規模の事務所では実現が困難な、大手法人ならではの大きな魅力の一つです。

具体的には、 国際税務、M&A税務、事業承継、グループ通算税制、移転価格税制など、特定分野に特化した部門が設置されています。 これらの部門では、その分野のエキスパートとして深い知識と経験を積み重ねることができます。

また、 大企業や上場企業をクライアントとして持つため、複雑で高度な案件に携わる機会が豊富にあります。 例えば、数百億円規模の企業買収に伴う税務ストラクチャーの構築や、海外展開における税務リスクの評価など、一般的な中小企業では経験できない案件を手がけることができるのです。

さらに、同僚や上司も各分野の専門家であることが多いため、日常的に高いレベルの議論や情報交換が行われます。このような環境に身を置くことで、自然と専門性が深まり、業界内での存在感を高めることができます。

ただし、専門性を追求するということは、逆に言えば業務の範囲が限定されることも意味します。特定分野に集中する分、中小企業の経営者との直接的なやり取りや、幅広い業務を一人で担当する経験は得にくくなります。

■中小事務所で求められるのは「オールラウンダー」としての成長

小規模事務所では一人が幅広い業務を担当します が、10名以上の中堅クラスになると、法人・個人・資産税などの担当分けが行われる場合もあります。
その中でも、顧問先との距離が近く、経営や資金繰りの相談まで踏み込む機会が多い点は共通しています。

例えば、午前中は法人税の申告書作成を行い、午後は相続税の相談を受け、夕方には個人事業主の記帳指導を行う、といった具合に、一日の中で様々な業務を経験します。また、税務だけでなく、経営相談、資金調達のサポート、事業計画の策定支援など、クライアントの総合的なアドバイザーとしての役割も求められます。

このような多様な経験により、税理士としての「引き出し」が格段に増えます。どのような相談にも柔軟に対応できる対応力と、クライアントの状況を総合的に判断できる俯瞰力が自然と身につくのです。

また、 クライアントとの距離が近いため、経営者の生の声を聞く機会が多く、ビジネスの現場感覚を養うことができます。 税務の専門家としてだけでなく、経営のパートナーとしてクライアントから信頼される税理士になりたい人にとって、この経験は非常に価値があります。

一方で、すべてを一人でこなす必要があるため、特定分野の高度な専門性を追求する時間は限られます。また、最新の税制改正情報の収集や継続学習も、個人の努力に依存する部分が大きくなります。

■大手税理士法人と中小事務所の「人間関係」の違い

税理士の職場環境を語る上で、人間関係の要素は決して無視できません。大手税理士法人と中小事務所では、人間関係の特徴が大きく異なり、それが日々の働きやすさに直結しています。

(1)大手税理士法人の場合

大手税理士法人では、組織として体系化された人事評価制度や研修制度があります。 上司との関係も、基本的には制度に則った公平なものになるでしょう。同期入社の仲間も多く、切磋琢磨しながら成長していく環境があります。
一方で、組織が大きいため、個人的な相談をしにくい雰囲気があったり、人事異動により人間関係がリセットされることもしばしばあります。

(2)中小事務所の場合

対照的に、 中小事務所では所長との関係が職場環境を大きく左右します。 所長の人格や経営方針、指導スタイルが、事務所全体の雰囲気を決定づけると言っても過言ではありません。

所長や同僚との距離が近く、互いにサポートし合う風通しの良い雰囲気がある一方、関係が密すぎるとプライベートとの線引きが難しくなる場合もあります。

(3)人間関係がもたらす影響

人間関係の良し悪しは、税理士としてのパフォーマンスにも大きく影響します。良好な人間関係の中では、分からないことを気軽に質問でき、ミスをしても建設的なフィードバックを受けることができます。逆に、ギスギスした環境では、必要な情報共有が行われず、成長の機会を逃してしまうこともあります。

■どうすれば「ワークライフバランス」を実現できるのか?

現代の税理士にとって、ワークライフバランスは職場選びの重要な要素の一つです。大手税理士法人と中小事務所では、この点でも大きな違いがあります。

重要なのは、自分にとって何が「バランスの取れた働き方」なのかを明確にすることです。高い報酬を得るために多少の長時間労働は厭わないのか、それとも家庭や趣味の時間を優先したいのか。自分の価値観を整理した上で、それを実現できる職場を選ぶことが大切です。

(1)大手税理士法人の場合

大手税理士法人では労働時間の管理制度は整っていますが、 繁忙期(特に3〜5月)には長時間勤務になることも少なくありません。
一方で、閑散期は有給取得がしやすく、メリハリをつけた働き方ができるところが多いです。

⑵中小事務所の場合

一方、 中小事務所では、所長の考え方や事務所の文化によってワークライフバランスが大きく左右されます。 理解のある所長のもとでは、柔軟な働き方が可能で、家庭の事情に配慮してもらえることもあります。また、業務量の調整がしやすく、プライベートの時間を確保しやすい場合もあります。

しかし、人手不足の事務所では、一人あたりの負担が重くなりがちで、長時間労働が常態化してしまうこともあります。また、繁忙期には所長も含めて全員が忙しくなるため、休暇を取りにくい雰囲気になることもあります。

■重要なのは「キャリアパス」を事前に描くこと

税理士としてのキャリアを考える際、大手税理士法人と中小事務所では、将来への道筋が大きく異なります。このため、長期的なキャリアビジョンを持って職場を選ぶことが極めて重要になります。

(1)大手税理士法人のキャリアパス

大手税理士法人では、明確な昇進制度があります。アソシエイトからシニア、マネージャー、シニアマネージャー、ディレクター、パートナーへと段階的にキャリアアップしていく道筋が示されています。各段階で求められるスキルや経験も 「階層的・評価指標が細かい」 といえます。 一定年次で昇進が止まる層も多い ため、評価軸は「透明ではあるが実力主義」といえるでしょう。

また、大手法人での経験は転職市場でも高く評価されます。他の大手法人への転職はもちろん、事業会社の経理・財務部門、コンサルティングファームへの転職など、多様な選択肢が開かれます。独立開業する際も、大手法人での経験と人脈は大きな武器となります。

(2)中小事務所でのキャリアパス

一方、 中小事務所では、将来的に事務所を継承する可能性があります。 所長との関係が良好で、事務所の経営方針に共感できるならば、将来的に事務所のオーナーとなる道もあります。これは、雇われの身から事業主へと立場を大きく変える、人生を変えるほどの出来事です。

また、 中小事務所での豊富な実務経験は、独立開業時に大きなアドバンテージとなります。 クライアントとの関係構築、事務所運営のノウハウ、幅広い業務への対応力など、独立後に即戦力となるスキルを身につけることができます。

しかし、中小事務所から大手法人への転職は、タイミングによっては難しい場合もあります。大手法人が求める特定分野での専門性や、システム化された環境での業務経験が不足していると評価されることがあるからです。

一方で、 中小で専門分野を持っていれば逆転可能 という例外もあります。特に資産税・医業・M&Aなどの経験者は大手への転職も十分可能性はあるでしょう。

■どのように「収入面」の違いを理解すべきなのか?

税理士の収入は、働く環境によって大きく左右されます。しかし、単純に基本給の高低だけで判断するのは危険です。総合的な収入構造を理解することが重要です。

重要なのは、 現在の収入だけでなく、将来的な収入の成長可能性を考慮すること です。大手法人では安定した昇給が期待できますが、上限も見えやすい構造になっています。一方、中小事務所や独立開業では、成功すれば大幅な収入増加も可能ですが、リスクも伴います。

(1)大手税理士法人の場合

大手税理士法人では、基本給が比較的高く設定されていることが一般的です。また、賞与制度も整備されており、業績に応じた還元を期待できます。さらに、各種手当(残業手当、資格手当、住宅手当など)も充実しているため、総収入は相当な水準になります。

加えて、福利厚生が充実しているのも大手法人の特徴です。社会保険完備はもちろん、退職金制度、研修費用の会社負担、健康診断の充実など、直接的な収入以外の経済的メリットも大きいのです。

(2)中小事務所の場合

一方、中小事務所では基本給は大手法人と比べて低めに設定されていることが多いですが、業績賞与や昇給の幅が大きい場合があります。特に、事務所の業績向上に貢献した場合の還元率は、大手法人よりも高いことがあります。

中には副業や講師活動を柔軟に認める事務所もありますが、守秘義務や競業避止の観点から制限が設けられている場合もあります。

■どうすれば自分に最適な職場環境を見つけられるのか?

これまで見てきたように、大手税理士法人と中小事務所にはそれぞれ異なる特徴があります。では、自分にとって最適な職場環境を見つけるためには、どのようなアプローチを取るべきでしょうか。

(1)徹底的な自己分析

まず重要なのは、自己分析を徹底的に行うことです。自分の性格、価値観、キャリア目標、ライフスタイルを客観的に把握しましょう。例えば、「一人で集中して作業することを好むか、チームで協力して働くことを好むか」「安定性を重視するか、挑戦性を重視するか」「専門性を深めたいか、幅広い経験を積みたいか」といった点を明確にします。

(2)実際の職場を知るための情報収集

次に、実際の職場を知るための情報収集を行います。求人情報だけでは分からない職場の雰囲気や文化を知るために、OB・OG訪問、業界セミナーへの参加、インターンシップの活用などを積極的に行いましょう。可能であれば、実際に働いている税理士から話を聞く機会を作ることが重要です。

(3)業界にくわしい転職エージェントの活用

また、ジャスネットなどの特化した人材紹介会社を活用することも有効です。多くの求職者と企業を見てきた経験から、あなたの特性に合った職場を提案してくれるでしょう。

特に 税理士業界に精通したエージェントは、求人票には記載されていない職場の実情や、面接での重要なポイント、給与交渉もしてくれます。 また、非公開求人の紹介を受けられることも大きなメリットです。さらに、客観的な第三者の視点で、あなたのスキルや経験を整理し、効果的にアピールする方法をアドバイスしてくれるため、転職成功の確率を大幅に向上させることができます。

(4)面接の際、気になることは質問する

面接の際は、遠慮なく質問をしましょう。実際の業務内容、職場の雰囲気、キャリアパス、研修制度など、気になることは積極的に確認します。良い職場は、求職者の質問を歓迎し、誠実に回答してくれるものです。

(5)完璧な職場はないと理解する

最後に、完璧な職場は存在しないことを理解することも大切です。どの職場にもメリットとデメリットがあります。重要なのは、 自分にとって譲れない条件を明確にし、それが満たされる職場を選ぶこと です。そして、選んだ職場で自分なりの成長と貢献を追求することが、結果的に最高の職場環境を作り出すことにつながるのです。

■まとめ

税理士としてのキャリアは長期間に渡ります。今の選択が将来に与える影響を考慮しながら、慎重かつ積極的に職場選びを進めていくことが、充実した税理士人生を送るための第一歩となるでしょう。

大手税理士法人と中小規模の税理士事務所、どちらを選ぶにしても正解はありません。重要なのは、あなた自身の価値観、目標、そして人生観に合致する環境を見つけることです。組織の看板や一時的な条件に惑わされることなく、5年後、10年後の自分がどのような税理士になりたいかを具体的にイメージしてください。

そして、どの職場を選んでも、そこで出会う人々との関係を大切にしてください。税理士業界は意外に狭い世界です。今日の同僚や先輩、後輩が、将来のビジネスパートナーや貴重な相談相手となることも少なくありません。良好な人間関係は、あなたのキャリアにとって何よりも価値のある財産となるのです。

最後に、職場選びに迷ったときは、「この環境で働くことで、税理士として、そして一人の人間として成長できるか」という視点で判断することをお勧めします。短期的な利益よりも、長期的な成長と充実感を重視した選択こそが、結果的にあなたにとって最良の決断となることでしょう。税理士としての豊かなキャリアを築くために、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。

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執筆者プロフィール

ジャスネットキャリア編集部

WEBサイト『ジャスネットキャリア』に掲載する記事制作を行う。
会計士、税理士、経理パーソンを対象とした、コラム系読み物、転職事例、転職QAの制作など。

編集部メンバーは企業での経理経験者で構成され、「経理・会計分野で働く方々のキャリアに寄り添う」をテーマにしたコンテンツ作りを心がけていてる。

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