■ 会計事務所でのパート勤務に向いている人は?
商売をしていて経理を経験したことがあったり、身近にそういった仕事をしている方がいる場合は、会計事務所の仕事をなんとなくイメージができるでしょう。
一方で、会計業界になじみがない方は、会計事務所の仕事は知識や資格が必要でハードルが高く、難しく考えてしまうのではないでしょうか。
わたしは10年以上前に、簿記検定2級をとってから会計事務所に勤め始めました。当時から会計事務所では女性が多く働いており、パートや時短勤務など働き方も様々でした。
現在では、「会計事務所未経験の方でも、長く働いていただきたい」という目的のもと、未経験者も積極的に採用し、教育に力を入れている事務所が増えています。
次のような方は、会計事務所で働くという選択肢をぜひ考えてみてください。
(1)育児や介護、その他の事情でフルタイム勤務が難しい
会計事務所の仕事には下記のような業務があります。
① 「顧客対応などを受け持つ税務担当」
② 「データ入力や書類作成などを行う税務補助業務」
③ 「それらすべてをサポートする総務的な業務」
パートの方は主に②③の部分を担当します。これらの作業は時短勤務や勤務日などを選べるパート勤務で募集されることが多く、こちらの都合に合わせて働くことができます。
(2)経理や会計に関する資格を持っている
日商簿記2級、3級などの資格を持っていたり、税理士試験の科目合格などがある場合は、年齢に関係なく採用されやすくなります。会計事務所勤務が未経験だったとしても、仕事のキャッチアップは問題ないでしょう。
(3)前職で経理や会計に関する仕事をしていた
特に会計系の資格がなくても大丈夫です。会計業界に限らず、現在は人手不足の会社が多いです。会計事務所も資格の有無は関係なく、採用する流れにあります。そのため、前職で経理や会計に関する仕事をしていた場合は、資格がなくとも採用には有利だと思います。
(4)接客業の経験があるなど、コミュニケーション能力が高い
実は会計事務所には来客が多く、挨拶や接客はとても大切です。また総務的な仕事を任せられるのは、内部で様々な人に円滑に話ができる方です。そのため、コミュニケーション能力が高く、細やかな配慮や臨機応変な対応ができる方は、どのようなポジションの仕事にも適しているため、採用可能性が高いでしょう。
(5)家族の都合で転勤の可能性がある
会計事務所の仕事というのは全国どこでもあり、業務内容も似ています。ですから、もし配偶者の転勤などの理由で引っ越すことがあっても、その土地で会計事務所の仕事を見つけることができます。一度働いて会計事務所経験者となることで、場所や年齢を問わずに仕事を探すことができるようになるため、将来的にも安定している仕事といえます。
■ 会計事務所でのパートの仕事内容
(1)簿記などの資格を持っている場合
簿記や税理士試験の科目合格などを持っている場合、下記の業務をまかされることが多いと思います。
資格はあるが会計事務所で働いた経験がなかったとしても、今の会計ソフトは操作がわかりやすいです。簿記の知識と基礎的なパソコンスキルがあれば、すぐに慣れるでしょう。
(2)資格などは持っていない場合
会計事務所の仕事は税務に関することばかりではありません。
資格などを持っていない場合は、以下の仕事をまかされることが多いでしょう。
- 会計資料の整理
- 完成した申告書一式のファイリング
- 総務的な備品管理、会議室の予約管理
- 来客対応
- 請求書の作成やこれに伴う業務
- 進捗管理や顧問先管理などの内部統率システムの管理
これらは会計事務所全体をサポートする、非常に重要な仕事です。
■ パート勤務で会計事務所を選ぶ際の7つのポイント
(1)自分に合っているタイプの事務所は?
「自分が採用される強み」は資格だけではないことがおわかりいただけたでしょうか。
働く会計事務所を選ぶ際、まずは自分の強みは何か考えた上で、次に、自分がどのように働きたいかを考える必要があります。
あなたは、次のどちらのタイプに当たるでしょうか?
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資格や経験があり、もくもくと入力作業をしたいタイプ
⇒ リモート勤務可の事務所で、自分のペースで知識・スキルを身につけましょう
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対人対応が苦手ではなく、臨機応変に出社もしたいタイプ
⇒ 雰囲気のよい事務所で、顧問先や同僚からどんどん学びましょう
(2)会計事務所を選ぶ際の7つのポイントは?
自分の希望する働き方を実現してくれるような会計事務所をイメージし、以下のようなポイントをチェックしましょう。
① リモート勤務が可能か
② 時短勤務が可能か
③ 週の勤務日数が選べるかどうか
④ 臨時のシフト調整などスタッフ同士でサポートし合う体制があるか
会計事務所によって、リモート勤務への対応やスタッフの人数などは様々です。
「完全在宅で入力のみをサポートするスタッフの募集」
「基本は出社勤務だが、スタッフが多く臨時の休みやシフト調整も可能」
など、会計事務所側も労働環境を整えています。
あなたの希望に合った求人はどこかにあるはずです。ジャスネットなどのエージェントに希望するポイントを相談して、会計事務所を紹介してもらうのもよいでしょう。
また、わたし個人の経験から以下のポイントも面接などで確認した方がいいと思います。
⑤ 長く働ける環境か、いずれ正社員に昇格できるかどうか
子どもが小さいうちは週〇日勤務で、手が離れたらいずれ正社員になりたいと考えている人もいるでしょう。そう考えている方は面接の際に、これまでにパートから正社員になった人が実際にいるかどうかを確認してもよいと思います。
⑥ 繁忙期にどのくらい出社や残業があるか
会計事務所の繁忙期まっただなかである3月は、子どもの学校行事などと重なりがちです。家庭と両立している方は繁忙期にどのような働き方をしているのかも、面接時に聞いておくといいでしょう。
⑦ 時給は希望通りか
最後に気になる会計事務所のパート、アルバイト勤務の時給ですが、1,300~1,500円あたりが多く、申告書の作成業務ができると1,500~2,000円になるようです(ジャスネット調べ)。地域によっても違いますので、詳細は各求人をご確認ください。
■さいごに
会計事務所の仕事は、思っている以上に主婦・主夫の方が働きやすい環境だとお分かりいただけたでしょうか。知識・資格があるにこしたことはないですが、元気よく接客したり、事務所内を明るくしてくれたり、税務担当のサポートを積極的にしてくれる気概のある方は、会計事務所内の貴重な存在です。
また、会計事務所に勤めることで、生活に密着した税金の知識なども身につきます。
パート、アルバイトなどの時短勤務は、採用する側もされる側にもメリットのある働き方なのです。
わたしは会計事務所のパート勤務をしながら、毎年8月の税理士試験を受け続けていました。資格を取得した現在は、開業税理士という働き方を選び、高校生の息子の野球サポートと両立しています。
会計事務所勤務は、子育てと仕事を両立しながら知識を増やすことができ、勉強すればさらに可能性が拡がる「夢のある働き方」としてもオススメです。
この記事を読んで、一人でも多くの方が、会計事務所勤務に興味を持っていただけたらうれしく思います。
- 執筆者プロフィール
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定岡 佳代(さだおか かよ)
税理士
兵庫県出身。1980年生まれ。神戸大学工学部建設学科、神戸大学大学院自然科学研究科(土木工学)修了。
関西で技術職に就くも、結婚・出産・上京を機に専業主婦に。次男の妊娠中に簿記の勉強を始め、日商簿記3級・2級に独学で合格。そこから税理士試験に挑戦し、パート勤務、大学院通学と並行しながら3科目合格。立教大学大学院経済学研究科を2020年3月に修了。2021年4月、税理士登録。
硬式野球男子2人の母。「税理士を目指すママ」コミュニティで知り合った友人のママ税理士4人で、セミナーや対談など活動をしている。都内の税理士事務所、税理士法人で約10年の修行を経て、2023年8月に独立開業。
「お客様はピッチャー、私はキャッチャー。どんな球でも受け止める。」をモットーに、お客様との対話を大切にしている。