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提案型会計事務所とは? ~その特徴・求められるスキル・収入は?~

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2025年12月26日 ジャスネットキャリア編集部

税務会計業界にもIT化が押し寄せる中で、従来の代行業や会計事務所の作業的なサービスは、遠くない将来AIに吸収されると考えられています。英国オックスフォード大学のオズボーン教授が発表した論文『雇用の未来』(2013)においても、「簿記・会計・監査の事務員」や「税務申告書代行者」「データ入力作業員」は「なくなる仕事」の上位にランクイン。税務会計業界に大きな衝撃を与えたことは、記憶に新しいのではないでしょうか。

その衝撃から発生した大きな動きが、「税理士は経営者のパートナーとして、より付加価値の高い課題解決型の存在となるべきである」というもの。今回ご紹介する提案型事務所は、まさにそれを体現する組織として、存在感を増しています。では、その特徴や実際の仕事の様子、そこで活躍するために必要なスキルをご紹介します。

目次

■提案型会計事務所とは?

入力作業員や申告書の代行者だけでなく、積極的に顧問先企業の経営支援に力を尽くす提案型会計事務所。まずは、その細かな特徴について、考えてみましょう。

1)税法に限らず、経営にかかわる幅広い知識を持っている

経営者の悩みや課題は、税務会計の領域だけに留まりません。それは時に、税理士の領域を超えた知識が求められることも。そのため提案型事務所では他士業との連携を強めつつ、自身も広く学びを深めていることが少なくありません。

人事労務や社会保険、各種補助金や助成金関連の知識、資金調達の強化に向けた金融機関との信頼関係づくり、ITツールの導入支援や近年注目が高まるDX支援まで。 経営者が最初に相談できる窓口として幅広い知識を習得し、他士業との橋渡しも行っています。

2)単なる作業ではないからこそ、コミュニケーションが肝!

提案型会計事務所が最も重視するサービスは、顧問先企業の課題解決や目標の実現を支援すること。そのためには経営者の考えや想い、悩みを理解することが不可欠です。ですから毎月あるいは定期的な面談の機会を設け、細やかなコミュニケーションを重視する必要があります。経営者から相談がしやすい関係づくりを進めると共に、自らも積極的な情報提供を行っています。

3)顧問料は比較的高めな傾向

業務の効率化を追求し、低価格化を実現する税理士法人もありますが、提案型会計事務所はその逆。さまざまな場面での 高付加価値な専門サービス提供を重視するため、月々の顧問料は高めになる傾向があります 。しかしその分、多様な情報提供や経営課題の解決支援へ積極的に取り組むため、顧問先企業からの評価も高くなり、価格に対する納得度も高まるという特徴があります。

■提案型会計事務所での働き方

1)土台になっているのは、変わらない

多種多様な場面で支援の手を差し伸べる提案型事務所ですが、 ベースとなるのは税務会計 。毎月、毎年の積み重ねとなる会計データは決して軽視できません。ただ、この業務にかかる時間や労力の効率化には積極的に取り組んでおり、ITやAIを導入して効率化を図っています。

逆に言えば、この数値を通常業務として毎月対応し、その蓄積ができるのは会計事務所や税理士法人の大きなアドバンテージです。顧問先企業の「今」を正確に表す数値を、しっかりと作り上げていきます。

2)数値を基にした、細やかなヒアリングと相談対応

効率化された業務によって算出された数値を基に、顧問先企業への丁寧な解説と密なヒアリングを行います。 経営者が次の展開に向けて行う判断を数値と分析で支え、的確なアドバイスによってその決断を支援するのが担当者のミッション です。

また提案までで終わることが多いコンサルタントと異なり、毎月毎年伴走し続ける税務担当者として、改善案の実行支援やその後のサポートまで継続して対応。まさに経営者のパートナーとして寄り添うことが多いため、その信頼関係も強く厚いものとなります。

■提案型事務所で働くにあたり、求められるスキルや素養は?

1)確かな税務知識とスキル

経営者は、まず税務会計のプロとして「あなた」に信頼を寄せています。そのため 基本的な税務会計スキルは不可欠 です。必ずしも最初から高付加価値な専門性を有している必要はありません。多くの提案型会計事務所ではすでに先輩上司によるケーススタディやノウハウが共有されていますし、新たに迎えたスタッフにも共有を欠かしません。また、すべての業務は基本的な税務会計の業務からスタートするため、土台となる基本知識をしっかりと固めておくことは欠かせません。

2)信頼関係を育むコミュニケーション力

まず求められるのは、 顧問先企業の経営者や事業そのものに興味を持つ姿勢 です。相手に関心を持つことができれば、相手を知ろうという行動につながる。それがここで言われるコミュニケーション力です。相手の話をしっかりと受け止め(傾聴力)、こちらの考えをわかりやすく伝える(説明力)。伝える際には専門用語をかみ砕き、理解しやすい言葉に置き換えることなども求められます。顧問先企業にとって「何でも、最初に相談できる相手」になることが目標となるでしょう。

3)数字を読み解く分析力、論理力

毎月毎年の数値から経営課題の原因を探り当て、その解決に向けて必要な情報や手段を提案する。さらに、その提案によって、将来の数値がどう変わるかを予測する。 こうした数字を読み解く分析力と、それを論理的に説明して納得を促すスキルが求められる でしょう。

多くのケースに触れてきた先輩上司から業務を通じて、指導やフィードバックを受けることで鍛えられる部分も大きいはずです。最初からできる・できないと考えるのではなく、業務を通じて磨いていく覚悟が求められます。

■提案型会計事務所で得られる給与・収入

業務の高付加価値化を進める提案型会計事務所では、 顧問料も高めに設定される傾向 にあります。さらに、手厚い経営支援サービスを受けられるため、顧問先の定着率も向上。成果を出すほどに顧問先の紹介などにもつながり、組織として売上を上げやすくなっていきます。

そして働くスタッフに対しても、その成果に応じて給与や手当を支給。そのためスタッフ個々の収入で見ても、従来型の会計事務所と比較してアップしやすい傾向が見られます。

■まとめ

作業的な業務が人の手を離れ、システムの利用に伴って自計化も進み、「作業自体の価値」が減っていく動きはますます高まっていくでしょう。しかしそれは、税理士や会計事務所の仕事の消滅を指し示すものではありません。数字やデータが指し示す方針がどんなに正しくとも、最後の判断を下すのは経営者自身、すなわち「人」です。 経営者の想いに寄り添い、理解した上で提案を行い、納得と満足を引き出す。これこそが、「人」が運営する提案型会計事務所の持つ価値となる のでしょう。

今後、ますますITやAIが発展したとしても、その中で生き残りうる専門家像。それを目指すべく税務+αを磨き、人と話しながら課題解決を目指す仕事がしたい!提案型会計事務所は、そんな方にピッタリな職場となるかもしれません。

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執筆者プロフィール

ジャスネットキャリア編集部

WEBサイト『ジャスネットキャリア』に掲載する記事制作を行う。
会計士、税理士、経理パーソンを対象とした、コラム系読み物、転職事例、転職QAの制作など。

編集部メンバーは企業での経理経験者で構成され、「経理・会計分野で働く方々のキャリアに寄り添う」をテーマにしたコンテンツ作りを心がけていてる。

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