■改正案はまだ「確定」ではありません!
実は現在、2026年7月の時点では、今回ご紹介する労働基準法の改正すべてが成立しているわけではありません。今はまだ細かい内容については、厚生労働省の審議会などで検討中。2026年の通常国会で改正法案が提出されたとして、最速で施行が見込まれるのが2027年4月ということになります。
そのため以下でご紹介する内容は、あくまで「2027年以降に施行される予定の項目」です。しかしながら法改正に伴う社内体制や制度の変更には、多くの時間と検討、準備が必要な場合が少なくありません。だからこそ、
今のうちに概要を知り、準備をすることが肝要です。この機会に、ぜひ知識として押さえ、自社や顧問先企業へ当てはめる際の検討を先んじて進めておきましょう!
■40年ぶりの大改正。それが行われる理由は……
今回の「抜本的な大改正」と呼ばれる労働基準法の見直しには、現行制度が高度経済成長期の工場労働を前提として設計されており、現代の働き方と大きなずれが発生していることが背景にあります。
少子高齢化による労働力不足が深刻化する中で、テレワークや副業・兼業、フリーランスとの協働など働き方は多様化しました。2018年には「働き方改革関連法」を中心とする見直しにより、
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時間外労働の上限制限
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年5日の有給取得義務化
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勤務間インターバルの普及促進
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高度プロフェッショナル制度導入
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同一労働同一賃金の推進
などが改正、推進されました。しかし現在も未だ、労働時間規制や労務管理の仕組みは完全に現場の状態に合致しているとは言い難い状況が続いています。それに伴い、長時間労働や過労による健康問題や、人材確保&定着の困難化といった課題も山積している状態です。
今回の大規模な改正ではこうした課題解決に向けて、労働者の健康・安全を守りつつ、多様かつ柔軟な働き方と企業生産性の向上を両立させるルール作りとして行われています。
■主な改正点として注目されている内容は?
社会的な労働環境の変化に伴う労働基準法の改正。では、今回の改正案では具体的にどのような点が注目されているのでしょうか。主な項目について見てみましょう。
(1)14日以上の連続勤務の禁止
現制度では「4週間に4日の休日」を確保していれば理論上、長期間での連続勤務も可能になっています。そのため休日の配置次第では「2週間以上=24日間」の連続勤務が可能に……。これにより十分な休息が取れないことによる過労やメンタルヘルスの不調、それに伴う労働災害リスクの高まりが問題視されるようになりました。
そこで、14日を超える連続勤務を禁止し、最低でも2週間に1日は休日を取得させるような改正案が出ています。
(2)勤務間インターバル制度の義務化
同じように労働者の十分な休息を確保し、業務品質や労働環境の安全性を高めるべく、勤務時間の内容についても改善が図られています。現在も勤務終了から次の勤務開始までに、一定時間の休息を確保するようインターバルの確保が2019年4月以降は努力義務として設けられています。改正後は、この努力義務を完全な義務化に変更。11時間程度の休息時間確保を有力案として、検討が進んでいます。
(3)法定休日の明確化
現制度では法定休日として「週1または4週4日の休日」が必要とされています。しかし、具体的にどの日が法定休日なのかを明示していない企業も少なくありません。そこで今回の改正では、法定休日を事前に特定し、労働者に明示することが義務化されます。
(4)副業・兼業時の労働時間通算ルールの見直し
副業・兼業時の労働時間通算ルールとは、労働者が複数の会社で働く場合に、それぞれの勤務時間を合算して法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた分を時間外労働として扱う制度のこと。
現行制度では、後から雇用契約を結んだ企業が割増賃金を負担する仕組みとなっており、副業先企業にとっては労働時間の把握や残業代計算が大きな負担となっていました。そこで「通算方法の簡素化」「使用者責任の明確化」「副業を認めやすくする制度設計」などについて検討。今回の改正案に盛り込まれる予定となっています。
(5)フレックスタイム制や裁量労働制の見直し
フレックスタイム制や裁量労働制は多様な働き方を後押しするために設けられましたが、その一方で、労働時間規制をどこまで緩和するかについても大きな論点となっています。育児や介護、副業・兼業との親和性向上が求められているフレックスタイム制度。実質的な残業代削減や過重労働とのつながりを懸念される裁量労働制度。それぞれの課題や懸念点を解決しつつ、より柔軟に活用できるようにすることで、労働者を保護しつつ働きやすい環境づくりに応用できるような検討が進んでいます。
代表的なものでは「フレックスタイム制度の柔軟化」や「裁量労働制の対象拡大」「労使合意手続きの見直し」などが主な論点として議論されています。
(6)労働時間情報の開示とデジタル管理の強化
企業に対して「労働時間の客観的把握」や「デジタルによる勤怠管理」「労働時間データや有休取得率の保存と開示」などを義務化する方向で検討が進んでいます。
長時間労働の是正や労務管理の透明性向上が目的とされており、雇用者側はデジタルによる労務管理と、労働者のプライバシー保護の両立が求められるようになるでしょう。
(7)「つながらない権利」のガイドライン策定
上司や組織からの業務連絡や指示が、休日や退勤後にも絶えず送られてきて、労働者が疲弊する。そんな問題がメディアでも取り上げられるケースが増えています。フランスでは2017年に「つながらない権利」を法制化し、勤務時間外や休日における労働者の権利を保護するようになりました。この制度は欧州を中心に注目が高まり、その後スペインやイタリアでも制度整備が進められるようになりました。
「業務時間外の連絡制限」や「深夜・休日対応ルールの整備」などが、今回の改正でも検討対象となっているようです。
(8)有給休暇の賃金算定ルール整備
現制度では年次有給休暇を取得する際の賃金算定方式は「平均賃金方式/通常賃金方式/標準日額方式」の3種類から、企業は選んで就業規則に定めることが義務化されています。今回の改正では、この3方式の内「通常賃金方式」を原則選ぶことになります。
(9)法定労働時間週44時間の特例措置廃止
これは、「常時10人未満の労働者を使用する商業」「映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業などの一部業種」に限り、法定労働時間を週40時間ではなく週44時間まで認める制度です。近年の「働き方改革の推進」や「労働力の確保困難」に伴い、業種や企業規模で生じる不公平を是正するべく、同制度の廃止が検討されています。
■改正に向けて、準備しておくと良いことは
「改正項目が確定した。では、それを自社の就業規則や各種制度に反映しよう」といっても、一朝一夕で行えるものばかりではありません。現状の把握・確認と、改善案の検討、それに向けた準備や社内調整……。時間や手間、検討が必要な場面も少なくないでしょう。そう考えたとき、ご紹介した「改正予定項目」の中から、今のうちから準備を進めた方が良いポイントを3つセレクトしてみました。
(1)勤怠管理のデジタル化、見える化
紙や自己申告中心の勤怠管理は、将来的に対応コストが大きくなる可能性があります。労働時間や残業時間、休日取得の状態や有休の取得率など。
労働時間の客観的把握や勤務間インターバルへの対応を見据え、打刻方法や集計方法、管理ルールを整備しておくと良いでしょう。
確定申告や年末調整の繁忙期だけでも、まずは客観的な労働時間の記録などから着手してみるのがおすすめです。
(2)シフト設計や人員配置の見直し
連続勤務制限や休息時間規制が強化された際、急な対応では現場が回らなくなる危険があります。
属人化の解消やそのための業務マニュアル化、複数人での対応体制の整備などを検討してみるといいでしょう。
少人数かつ事業を回すうえで重要な部署であるほど、早めの準備が吉となります。
特定の有資格者やベテランスタッフに業務が集中しがちな税理士事務所・会計事務所では、担当クライアントの分散や、繁忙期前後での応援体制の構築が有効な対策になります。また、繁忙期とそれ以外の時期で休日の運用が変わりやすい事務所ほど、就業規則上の法定休日の位置づけを一度確認しておくと安心です。
(3)マネジメント層の教育や意識共有
働き方や評価に関する考え方は、長く続いている事務所ほど共通認識としてしっかり根付いているものです。こうした組織文化や考え方、評価基準やマネジメント方針を転換することは、一つの「制度」を変えること以上に時間がかかります。
管理部署やマネジメント層など、一番の協力者となってもらえるメンバーの意識改革を進めるべく、対策などについても積極的に意見交換をしていくと良いでしょう。
所長やパートナーの意識そのものが所内文化に直結しやすいため、まずはトップ層が「繁忙期の働き方を変える」という方針を明確に示すことが、改革を進める第一歩になります。
■まとめ
今回の改正は「規制強化」というよりも、現在の状況や課題解決に向けた「制度転換」といった意味が強いと感じられます。コロナ禍以降、労働者の「働き方」に対する考え方や志向は多様化が進み、このニーズに応えることが人材採用面でも重要になりました。
事務所内の制度や慣例を変えることには労力を要しますが、逆に考えれば、これは大きな変化進化のチャンスとも言えます!
税理士事務所・会計事務所にとって今回の改正は、顧問先への的確なアドバイスの土台になると同時に、自らの働き方や採用力を見直す好機でもあります。社会や採用市場のニーズにマッチする体制へ変わることで、採用成功率や定着率を高める効果を得られることもあるでしょう。今回の労働基準法改正を前向きに捉え、変革に取り組んでみるのはいかがでしょうか?
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- 執筆者プロフィール
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田谷 信輔(たや しんすけ)
会計業界専門 採用コンサルタント(登録番号:第DCA240411号)
Writer&Interviewer
20年超、税務会計・経理財務部門の採用支援媒体にて、取材ライター&コンテンツ制作者として従事。2500件以上の採用に悩む経営者・採用担当者にインタビューを実施してきました。採用の現場で発生している課題に募集主と共に向き合い、丁寧なヒアリングと豊富な相談対応実績を踏まえた提案を以て、その課題解決を支援。「話すことで、課題が明確になった!」「自分が何を考え、求めているのかはっきりした」と言っていただくのが、何よりの喜びです。
2024年4月よりフリーランスとして独立開業。会計業界を中心としながら、幅広く「採用の悩み解決」に寄り添い続けています。
- 関連サイト
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自社HP:https://www.pickup-yourvoice.com/
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