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税理士のキャリア戦略④ ~独立開業編/自由と責任を手にする究極の選択~

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2025年11月28日 ジャスネットキャリア編集部

かつては税理士の資格者と言えば「税理士法人や会計事務所で経験を積み、その後は独立開業」がひとつの王道ルートでした。しかし今日では、日本経済の苦境や社会全体の価値観の多様化などにより、キャリアの多様化が大きく進みました。とはいえ、今でも税理士資格者の6~7割が開業税理士として自らの事務所を構えていると言われています。

かつての王道、独立開業。その実態について、税務会計業界の就職・転職支援に20年以上携わってきた、採用コンサルタントが分析してみました。

■独立開業のリアル―平均年収と成功の条件

税理士として最終的に独立開業を目指す方は少なくありません。独立開業の最大の魅力は、自分の裁量で事務所を経営できる自由と、努力次第で青天井の収入を得られる可能性にあります。

1)開業税理士の年収

開業税理士の年収については、正確なデータを示すことが困難です。というのも、年収100万円以下の税理士もいれば、年収数千万円から億を超える税理士まで、極めて幅が広いからです。

一般的には、税理士事務所の平均売上高が約5,000万円とされており、そこから経費を差し引いた金額が税理士本人の年収となります。従業員を雇わず一人で運営する場合は、売上の大部分が自身の年収となりますが、事務所を拡大し従業員を雇用する場合は、人件費などの経費が増えるため、売上に対する自身の年収の割合は低くなります。

2)独立開業で成功するための3つの要素

① まず顧問先の確保が最重要課題

勤務していた税理士事務所から顧問先を引き継げるケースは限られており、 多くの場合は自力で顧客開拓を行う必要があります。 開業当初から安定した収入を得るためには、独立前から人脈形成に努め、見込み顧客をある程度確保しておくことが理想的です。

② 自分の強み、専門分野を持つこと

現在の税理士業界は競争が激化しており、一般的な税務業務だけでは他の税理士事務所との差別化が困難です。また、資産税や相続税、医療法人や建設業など特定業界の税務、国際税務など。経営者や企業のトップが税理士に求めることもどこまでも広がっていく状況だと言えるでしょう。だからこそ税理士事務所への入所の際には、自分の強みとなる専門分野をどう確立するかを考えることが、独立した際に継続的な顧客獲得の鍵となります。

③ 経営者としての能力があるか?

独立開業すれば、税理士であると同時に事務所の経営者となります。営業活動、人材採用と育成、資金繰り管理、マーケティング戦略など、 税務知識以外の経営スキルが求められます

税理士業務に専念したい気持ちは理解できますが、事務所を成長させるには経営者としての視点と行動力が不可欠なのです。

■独立開業のタイミングと準備期間

独立開業の適切なタイミングは、一般的に税理士として 【5年~10年】程度の実務経験を積んだ後 とされています。この期間に、税務の基礎から応用まで幅広い知識を身につけ、顧問先対応のノウハウを習得し、人脈を構築することが重要です。また開業資金として、最低でも300万円から500万円程度の準備が推奨されます。

1)開業準備について

開業準備においては、日本税理士会連合会への開業登録手続き、事務所の物件選定、会計ソフトや税務ソフトの導入、ホームページの作成、名刺やパンフレットの準備など、やるべきことは多岐にわたります。開業前の数カ月は、これらの準備と並行して見込み客への営業活動を行い、開業と同時にある程度の顧問先を確保できる状態を目指すことが理想的です。

2)独立開業後の収入モデル

独立開業した税理士の収入は、顧問先の数と顧問料によって決まります。一般的な中小企業の顧問料は月額3万円から5万円程度で、年間の決算料を含めると1社あたり年間50万円から80万円程度の売上となります。

例えば顧問先を20社抱えることができれば、年間売上1,000万円から1,600万円となり、そこから経費を差し引いた額が税理士本人の収入となります。

3)事務所の拡大戦略

事務所を拡大していく場合は、職員の採用が必要になります。税理士補助者を1名雇用すると、年間の人件費として300万円から400万円程度が必要です。事務所家賃、ソフトウェア利用料、研修費、交際費なども含めると、安定的に事務所を運営するには年間売上で最低でも 1,500万円から2,000万円程度が目安 となります。

さらに事務所を成長させ、職員数を 5名から10名規模にまで拡大できれば、年間売上5,000万円から1億円も視野 に入ってきます。このレベルに到達すれば、税理士本人の年収も2,000万円から3,000万円以上が期待できます。ただし、ここまで事務所を成長させるには、優れた経営手腕と相当な努力が必要です。

4)独立開業のリスクとデメリット

独立開業には大きな魅力がある一方で、看過できないリスクとデメリットも存在します。

①最大のリスク=収入の不安定性

勤務税理士であれば毎月安定した給与を得られますが、開業税理士の場合は顧問先の獲得状況や解約によって収入が大きく変動します。特に開業当初は顧問先が少なく、収入が不安定な時期を乗り越える必要があります。

②税務業務以外の負担が増えること

営業活動や経理処理、人事労務管理、クレーム対応など。事務所経営に関わる全ての業務が自分の肩にのしかかります。税理士業務に集中したくても、経営者としての仕事に多くの時間を割かざるを得ません。

③税理士業界を取り巻く環境の変化

AIや会計ソフトの進化により、記帳代行や税務申告といった定型業務の価値は低下しています。また税理士の高齢化と後継者不足により、今後は事務所同士の競争がさらに激化する可能性があります。独立開業で成功し続けるには、常に新しいサービスを開発し、顧客に付加価値を提供し続ける努力が求められるのです。

■まとめ

開業前には、税理士として一連の税務全般に経験を持ち、都度求められる知識を磨き続けることが欠かせません。また一般的には税務だけでなく、「事務所の運営」という面でも他事務所で学び、経験を積むことが大事になってくるでしょう。そうした際に魅力的なのが、規模の小さな個人事務所です。

代表のすぐそばで、実際に日常的に発生する事務所運営の課題解決を体感できる。将来の独立開業に協力的な事務所であれば、質問や相談にも応えてもらえるばかりでなく、将来の独立後にも良い関係を続けられる可能性が高いです。

ご自身の目指す事務所像や専門家像、注力したい業務分野などが重なる事務所であることも重要です。そこで勤務を通じて経験した所内体制やシステムは、良いものであれば自らの事務所運営に応用できる「生きたサンプル」となるはずです。

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執筆者プロフィール

ジャスネットキャリア編集部

WEBサイト『ジャスネットキャリア』に掲載する記事制作を行う。
会計士、税理士、経理パーソンを対象とした、コラム系読み物、転職事例、転職QAの制作など。

編集部メンバーは企業での経理経験者で構成され、「経理・会計分野で働く方々のキャリアに寄り添う」をテーマにしたコンテンツ作りを心がけていてる。

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