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税理士資格を取得した後のキャリアプランは?開業、勤務それぞれのメリット、デメリット解説

文・イラスト 税理士 定岡佳代

図1

難関国家資格である税理士。念願かなって資格を手にしたあなたは、どんなキャリアを選ぶことができるのでしょうか。

一定期間、会計事務所などで実務経験を積み、そこから独立開業というのが王道だった税理士資格ですが、現在はその他にも転職などで様々な道を選ぶことができます。

ここでは独立開業して1年目の税理士・定岡佳代先生に税理士のキャリアについてお伺いしました。資格を取得する前から自分のキャリアを意識しておくことはとても大切です。ぜひ参考になさってください。

目次

■税理士事務所で働く場合

■事業会社で働く場合

■まとめ

■税理士事務所で働く場合

税理士資格を取得した後のキャリアは様々です。わたしがかつて考えた選択肢以外にも、同業の方が進んでいる道も含め、以下にご紹介させていただきます。

1.開業税理士

まず開業税理士、いわゆる独立開業の道です。税理士資格は税務申告など独占業務ができますので、開業は資格を活かせる王道といえます。ただ、税理士になるためには試験に合格するだけではなく、2年以上の実務経験が必要になります。そのため無資格の段階ではまず会計事務所に勤務し、合格後に独立開業する方も一定数いらっしゃいます。

もしあなたが独立開業を目指しているのであれば、資格のない状態でも税理士の仕事の経験を積むために最低でも1か所は会計事務所に勤めた方がよいでしょう。顧問先を担当したり、実際に申告ソフトを触って申告書作成することは、試験勉強だけでは身につかないからです。

(1)開業税理士のメリット

①自分の裁量で色々決められる

開業税理士のメリットは、やはり「自由」であることです。働く場所、時間、顧問料、顧問先まですべて自分で責任を持つ代わりに、すべて自分で決めることができます

わたしは勤務税理士を3年経験してから独立しましたが、平日昼間の時間でも自分の予定を入れることができたりする自由な働き方は、圧倒的なメリットだと感じています。特に子育て中の方には、子供の予定に合わせられる働き方はメリットが大きいのではないでしょうか。

②顧問料など、自分ですべて受け取れる

また、顧問料などを100%自分でいただけるというのは、強いプレッシャーや責任感を感じると同時に、うれしいし、自信につながります。

③自由な時間で税理士としてできることも増える

さらにわたしの場合は、租税教育(地域の小・中学校を対象とした税金に関わる授業)に関心がありました。勤務税理士でも租税教育をすることは可能ですが、多忙な事務所の場合、なかなか参加する機会がありません。

開業して自由に時間が使えるようになってから、租税教育に参加できるようになりましたので、これも開業の楽しみといえるでしょう。

(2)開業税理士のデメリット

①オンとオフの切り替えが難しい

自分で勤務時間を調整できるということは、忙しい時期は土日も夜も関係なく働くことになり休む暇もありません。そのため、曜日の感覚やオンオフのメリハリがなくなってしまい、デメリットと感じることもあるかもしれません。

②営業は自分でやらなくてはならない

また、開業すれば当然ですが、お客様は自分で探してくる必要があります。以前の勤務先が顧問先を譲ってくれる場合もありますが、その先は自分で営業し顧問先を増やしていかなければなりません。

③情報収集がしにくい

さらに、一人で開業していると情報収集がしにくくなるというデメリットがあります。そのような場合は、週に数日は業務委託として他の会計事務所に所属したり、税理士会の支部の集まりに参加して関係を広げるなど、積極的にコミュニケーションが取れる人でないと厳しい面もあると思います。

2.勤務税理士

個人の税理士事務所や税理士法人に雇用されている税理士です。無資格の段階から勤務していた場合、試験に合格してからも勤務税理士としてそのまま働くパターンも多いのではないでしょうか。

また、資格取得してから他の事務所に転職すると、年収アップの可能性も高く、安定を求める方には適した働き方といえるでしょう。

(1)勤務税理士のメリット

資格を取得したことで高水準の給与がもらえるようになり、さらにそれが安定しているというのがメリットだと思います。

独立開業のリスクを負うことなく税理士業務を行い、経験を積んでいくことができます。また組織の中でもリーダー的な立場になり、マネジメント業務など、より自分のキャリアにプラスになる業務に携われるようになります。

(2)勤務税理士のデメリット

①社員税理士になった場合の「無限責任」

勤務税理士の中でもパートナーという立場の「社員税理士」になった場合、損害賠償を請求される事態になったときに連帯責任を負う「無限責任」というものがあります。

②事務所内でポジションが上がった場合の業務の増加

そういった部分にプレッシャーを感じる場合もあるでしょうし、普通の税務だけではなく、人事評価や採用など雇用側の業務が増えることをデメリットと感じる人もいるのではないでしょうか。

また、税理士は会計事務所の中でも責任のある立場とみられるため、残業が多くなりがちです。特に子育て中の方は、有資格者でも残業をしない働き方を推奨してくれる事務所選びをすることが大切かと思います。

■事業会社で働く場合

1.一般事業会社の経理・財務

(1)経理・財務部門で評価が高い

事業会社勤務であっても税理士登録することは可能です。その場合、勤務先が事業会社であるため開業税理士として登録することになります。

税理士資格の取得自体はもちろんですが、会計科目や法人税法、消費税法などの知識は経理・財務の部門で大きく評価されると思います。場合によっては、社内税理士として税務の申告なども行える立場で働くことができます

(2)ワークライフバランスと税理士のメリットの両方を享受できる

この場合、社内税理士を雇える企業というのは規模が大きい場合が多いため、高水準の給与以外にも福利厚生がしっかりしている、ワークライフバランスが配慮されている、などのメリットもあるのではないでしょうか。

また副業が許されている企業の場合は、週末のみ顧問税理士として働く、税務の本の執筆を行うなどをしている方もわたしの周りではおりました。生活が安定しつつ税理士のメリットを享受できる、新しい働き方ではないでしょうか。

2.金融機関、コンサルティング会社

開業予定の税理士の方が、事務所の特徴を出すために一定期間、経験を積むために勤務するようなイメージです。

基本的にこのような会社では税務申告は行っていないことも多く、それ以外の税務に関するコンサルティング、M&A、事業承継、などの経験を積むことができます。ただ、いずれ独立を考えている場合は、実際の税務申告に必要な書類の作成方法なども、別途学ばなければなりません。

また、これらの会社での経験は「税理士に必要な2年間の実務経験」に該当しない場合があります。よって、税理士試験に合格したものの未登録という方は注意が必要です。

税務申告だけではなく、企業のコンサルティングまで行いたい、相続や事業承継に特化したいなど、進みたいキャリアがある場合はよい選択肢になるのではないでしょうか。

3.その他

国税従事者として税務署職員など一定期間勤務し、税理士試験に合格している場合も税理士登録が可能です。

税務署に一定期間勤務すると、「国税従事者の免除制度」によって税理士試験科目が一部免除されます。中には、税理士試験に合格したあともそのまま税務署で働く方もいらっしゃいます。税務職員は国の税金を守る重要な役目を担いますので、長年培った経験を活かし、やりがいのある働き方といえるでしょう。

そのほかに、自分が受験生であった頃の勉強してきた経験を活かし、資格の学校の講師として教鞭をとる方もいます。このような経験がある方は、人に教えるのが上手ですので、セミナー講師として活動することもできるでしょう。

■まとめ

現在でも、やはり税理士のキャリアプランは会計事務所に勤務して経験を積んだあとに、独立開業することが王道です。しかし独立開業するのは不安といった方でも、最近では多様なキャリアプランを描けるようになってきました。複数の会計事務所や企業を経験し、自分の強みを見つけたうえで、最終的に独立を選択しても遅くはありません。また、それができるのが税理士資格の強みでもあります。

わたしの場合は、息子がやっている野球のサポートをしたいと思ったのも、開業した理由の一つです。勤務税理士も決して悪くない働き方でしたが、平日に行われる公式戦を今年は全日観戦できたため、開業してよかったと実感しています。

資格は働き方の選択肢を広げ、人生を豊かにしてくれます。このコラムがあなたの今後のキャリアプランの参考になれば幸いです。

執筆者プロフィール

定岡 佳代(さだおか かよ)
税理士

兵庫県出身。1980年生まれ。神戸大学工学部建設学科、神戸大学大学院自然科学研究科(土木工学)修了。

関西で技術職に就くも、結婚・出産・上京を機に専業主婦に。次男の妊娠中に簿記の勉強を始め、日商簿記3級・2級に独学で合格。そこから税理士試験に挑戦し、パート勤務、大学院通学と並行しながら3科目合格。立教大学大学院経済学研究科を2020年3月に修了。2021年4月、税理士登録。

硬式野球男子2人の母。「税理士を目指すママ」コミュニティで知り合った友人のママ税理士4人で、セミナーや対談など活動をしている。都内の税理士事務所、税理士法人で約10年の修行を経て、2023年8月に独立開業。

「お客様はピッチャー、私はキャッチャー。どんな球でも受け止める。」をモットーに、お客様との対話を大切にしている。

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