税理士という職業に憧れを持ちながらも、未経験からのスタートに不安を感じている方は少なくありません。確かに専門性の高い仕事ではありますが、実は多くの税理士が異業種からのキャリアチェンジを経験しています。この記事では、未経験から税理士を目指す方が知っておくべき転職のポイントと、成功への具体的な道筋をご紹介します。
   未経験から税理士を目指す!転職成功のポイントとおすすめ先
   
   
  
 
 2025年11月4日 ジャスネットキャリア編集部
目次
■未経験から税理士キャリアをスタートする方法
税理士として活躍するためには、まず実務経験と専門知識の両輪が必要になります。未経験からスタートする場合、どのような道筋を描けば良いのでしょうか。
(1)税理士事務所での実務経験を積む
税理士を目指す第一歩として最も確実なのが、税理士事務所や会計事務所での実務経験を積むことです。 実は多くの税理士事務所では、未経験者を積極的に採用しています。なぜなら、税務や会計の実務は現場で学ぶことが非常に多く、素直に学ぶ姿勢さえあれば、未経験からでも十分に成長できるからです。
税理士事務所での仕事は、まず記帳代行や決算書の作成といった基礎的な業務から始まります。毎日の業務を通じて、会計ソフトの操作方法や仕訳の考え方、税務申告の流れなどを自然と身につけることができます。また、先輩税理士や経験豊富なスタッフと一緒に働くことで、 税理士試験のテキストだけでは学べない実践的な知識を吸収できるのです。
実務経験を積むメリットは他にもあります。税理士試験の受験資格を得るためには、一定の実務経験が必要とされる場合があります。税理士事務所で働きながら試験勉強を進めることで、受験資格の取得と知識の習得を同時並行で進められるという大きな利点があります。
(2)必要な資格とスキルを身につける
税理士として独立開業するためには、最終的に税理士資格の取得が必要になります。税理士試験は会計学に属する科目と税法に属する科目から構成されており、合計5科目に合格する必要があります。難関試験として知られていますが、科目合格制を採用しているため、働きながら数年かけて少しずつ合格科目を積み重ねていくことが可能です。
ただし、税理士資格を取得する前から税理士事務所で働くことはできます。むしろ、働きながら勉強するスタイルが一般的といえるでしょう。実務経験を積みながら試験勉強を進めることで、理論と実践を結びつけて理解を深めることができます。
資格以外にも、税理士として活躍するために必要なスキルがあります。まず、 コミュニケーション能力は欠かせません。 税理士の仕事は、経営者や個人事業主の方々に税務や会計のアドバイスをすることが中心となります。専門的な内容を分かりやすく説明する力や、クライアントの悩みに寄り添う姿勢が求められます。
また、ITスキルも現代の税理士には必須となっています。会計ソフトやクラウドサービスを使いこなせることはもちろん、電子申告システムの操作にも慣れておく必要があります。これらのスキルは実務を通じて自然と身につくものですが、積極的に学ぶ姿勢を持つことで、より早く成長できるでしょう。
■未経験者が転職でアピールできるポイント
未経験だからこそ持っている強みがあります。転職活動では、これまでの経験をどう活かせるかを具体的に伝えることが大切です。
(1)異業種での経験を活かす方法
未経験からの転職というと、経験がないことがデメリットに感じられるかもしれません。しかし実際には、異業種での経験こそが大きな武器になることがあります。特に営業職や接客業での経験は、税理士事務所でも高く評価されます。
営業職で培ったコミュニケーション能力や提案力は、クライアントとの関係構築に直結します。税理士の仕事は、単に税務処理を行うだけでなく、経営者の良きパートナーとして信頼関係を築くことが重要です。営業経験者は顧客との接し方や、ニーズを引き出す会話術を既に身につけているため、すぐに実務で活かすことができます。
事務職や経理職の経験がある方は、数字を扱うことへの抵抗が少なく、細かい作業を正確にこなす能力が備わっています。これは税理士事務所の業務において非常に重要な資質です。また、企業の経理部門で働いた経験があれば、クライアント企業の立場や悩みを理解しやすく、より実践的なアドバイスができるでしょう。
製造業や小売業など、特定の業界で働いた経験も強みになります。税理士事務所の中には、特定の業界に特化してサービスを提供しているところもあります。その業界の実情を知っている人材は、クライアント企業の課題を深く理解できるため、貴重な存在として重宝されるのです。
(2)資格取得の意欲を示す
未経験者を採用する際、多くの税理士事務所が重視するのが、学習意欲や成長意欲です。既に税理士試験の勉強を始めている場合は、その事実を積極的にアピールしましょう。たとえ科目合格がまだなくても、具体的な学習計画を持っていることや、資格取得に向けた真剣な姿勢を示すことが大切です。
簿記検定を持っている方は、それも大きなアピールポイントになります。 日商簿記2級以上を持っていれば、会計の基礎知識があることの証明になり、即戦力として期待される可能性が高まります。 まだ簿記の資格を持っていない場合でも、転職活動と並行して勉強を始め、その意欲を面接で伝えることで、前向きな印象を与えることができます。
■未経験者におすすめの転職先
税理士事務所といっても、規模や特徴は様々です。未経験者が最初の一歩を踏み出すのに適した環境を選ぶことが、その後のキャリアを左右します。
(1)若手スタッフが多い会計事務所
未経験からのスタートに最も適しているのが、20代から30代の若手スタッフが中心となって働いている会計事務所です。こうした事務所では、教育体制が整っていることが多く、未経験者でも段階的に業務を学べる環境が用意されています。
若手が多い職場では、同じように未経験からスタートした先輩が身近にいるため、学習方法や試験対策について気軽に相談できます。また、年齢が近い同僚がいることで、仕事の悩みを共有しやすく、長く働き続けるモチベーションにもなります。
こうした事務所では、新しい会計ソフトやITツールの導入にも積極的な傾向があります。デジタル化が進む税務業界において、最新のツールを使いこなせるスキルは大きな武器になります。若い世代が中心の職場なら、こうした新しい技術を自然と学べる環境が整っているでしょう。
(2)成長中の税理士法人
事業拡大フェーズにある税理士法人も、未経験者にとって魅力的な選択肢です。成長中の組織では、新しい人材を積極的に採用する傾向があり、未経験者にもチャンスが開かれています。
規模が大きくなりつつある税理士法人では、業務が細分化されているため、最初は自分の担当範囲を明確にして業務に取り組むことができます。また、様々な業種のクライアントを抱えていることが多く、幅広い経験を積めるのも大きなメリットです。
成長企業ならではの活気ある雰囲気も魅力です。組織が拡大していく過程で、自分も一緒に成長していく実感を得られることは、仕事のやりがいにつながります。将来的に管理職やマネジメント業務に携わるチャンスも広がっているでしょう。
(3)特定分野に特化した事務所
医療業界や飲食業界、IT業界など、特定の分野に特化した税理士事務所も増えています。もし前職で特定の業界に精通している場合、そうした専門特化型の事務所は非常に有力な選択肢となります。
業界特化型の事務所では、その業界特有の税務処理や経営課題に詳しいことが強みになります。一般的な会計知識は未経験でも、業界知識を持っていることで、クライアントとのコミュニケーションがスムーズになり、より実践的なアドバイスができるようになります。
また、特定分野に集中して学ぶことで、その領域のスペシャリストとして早く成長できるというメリットもあります。将来的には、その分野の専門家として独立開業する道も開けてくるでしょう。
■年齢別の転職ポイント
年齢によって、転職活動で重視すべきポイントや戦略は変わってきます。自分の年代に合ったアプローチを理解しておくことが大切です。
(1)30代の転職事情と戦略
30代での転職は、税理士業界においては決して遅くありません。むしろ、社会人としての基礎力が身についており、かつ柔軟性も保っている30代は、多くの事務所から歓迎される年代といえます。
30代の強みは、前職での実務経験を活かせることです。ビジネスマナーやコミュニケーション能力は既に身についているため、事務所側も安心して採用できます。また、人生経験や社会経験が豊富であることで、クライアントの経営者と対等に会話できる素地があることも評価されます。
30代前半であれば、まだ若手として育成の対象と見なされることも多く、じっくりと時間をかけて税理士資格取得を目指すことができます。一方で 30代後半になると、即戦力としての期待が高まるため、簿記資格や税理士試験の科目合格など、何らかの実績を持っておくことが望ましいでしょう。
(2)40代の転職成功のためのポイント
40代からの税理士への転職は、20代や30代に比べるとハードルが高くなることは事実です。しかし、適切な戦略を立てれば、十分に成功の可能性があります。
40代の最大の強みは、 豊富なビジネス経験とマネジメント能力です。 多くのクライアントは40代以上の経営者であり、同世代の税理士に対して親近感を持ちやすい傾向があります。人生経験の豊富さは、経営相談や事業承継の相談など、単なる税務処理を超えた付加価値の高いサービスを提供する上で大きな武器になります。
40代で転職を成功させるためには、明確な専門性を持つことが重要です。前職での専門知識やネットワークを活かせる事務所を選ぶことで、年齢のハンデを強みに変えることができます。たとえば、不動産業界での経験があれば、不動産関連の税務に強い事務所を狙うといった戦略が有効です。
また、40代では給与面での折り合いも重要になります。最初から高い給与を期待するのではなく、長期的なキャリア形成を見据えて、まずは実務経験を積むことを優先する柔軟な姿勢も必要でしょう。将来的に税理士資格を取得し、独立開業することを視野に入れれば、一時的な収入減も投資として捉えることができます。
■未経験者の求人探しの方法
効率的に自分に合った転職先を見つけるためには、適切な求人探しの方法を知っておくことが大切です。
(1)求人サイトの利用
インターネット上には、税理士事務所の求人を専門に扱う求人サイトが複数存在します。こうしたサイトでは、未経験者歓迎の求人を簡単に絞り込むことができ、効率的に情報収集ができます。
求人サイトを利用する際のポイントは、複数のサイトを併用することです。サイトによって掲載されている求人が異なるため、幅広く情報を集めることで、より自分に合った職場と出会える可能性が高まります。また、求人情報は随時更新されるため、こまめにチェックする習慣をつけることも大切です。
求人票を見る際には、給与や勤務地だけでなく、教育制度や資格取得支援制度の有無も確認しましょう。未経験者にとって、研修体制が整っているかどうかは、入社後の成長速度に大きく影響します。また、税理士試験の受験をサポートしてくれる制度があれば、仕事と勉強を両立しやすくなります。
(2)転職エージェントの活用
転職エージェントを活用することも、特に未経験者にとっては有効な選択肢です。 税理士業界に特化したエージェントであれば、求人サイトには掲載されていない非公開求人を紹介してもらえることもあります。
エージェントの最大のメリットは、プロのキャリアアドバイザーから客観的なアドバイスを受けられることです。自分の経験やスキルをどうアピールすべきか、どのような事務所が自分に合っているかなど、一人では判断しにくいことも相談できます。また、履歴書や職務経歴書の書き方、面接対策なども丁寧にサポートしてもらえるため、転職活動に不安がある方にとって心強い存在となるでしょう。
さらに、エージェントは事務所の内部事情や職場の雰囲気なども把握していることが多く、求人票だけでは分からない情報を教えてもらえます。事前に職場の実態を知ることで、入社後のミスマッチを防ぐことができます。
■未経験から税理士事務所に転職した成功事例
実際に未経験から税理士業界へ転職し、活躍している方々の事例を見てみましょう。
(1)20代女性の成功事例
   
    アパレル業界で販売職として働いていたAさんは、26歳のときに税理士事務所へ転職しました。接客業で培ったコミュニケーション能力と、数字管理の経験を活かせると考えたのが転職のきっかけでした。
    
    転職前に日商簿記3級を取得し、転職活動中に2級の勉強を始めていたAさんは、学習意欲の高さを評価され、若手スタッフが多い会計事務所に採用されました。入社後は先輩の丁寧な指導のもと、記帳代行や決算書作成の基礎を学び、2年目には簡単な決算業務を一人でこなせるようになりました。
    
    現在は働きながら税理士試験に挑戦しており、既に2科目に合格しています。接客で培った笑顔と話しやすい雰囲気で、クライアントからの信頼も厚く、事務所にとって欠かせない存在となっています。
   
  
(2)30代男性の転職体験
   
    製造業の営業職として10年働いていたBさんは、35歳で税理士事務所に転職しました。営業として多くの中小企業を訪問する中で、経営者の税務や経営の悩みに触れ、自分もそうした課題解決に携わりたいと考えるようになったそうです。
    
    転職前に税理士試験の簿記論に合格していたBさんは、その実績と営業経験を評価され、中堅規模の税理士法人に採用されました。入社当初は専門知識の不足に苦労しましたが、前職で培った顧客対応力とフットワークの軽さで、クライアント訪問や経営相談の場面で強みを発揮しました。
    
    現在は3年目を迎え、複数のクライアントを担当する立場になっています。税理士試験も順調に進んでおり、あと2科目で合格です。営業経験を活かした提案力が評価され、新規クライアント開拓でも活躍しています。
   
  
■税理士の転職に関するよくある質問
税理士への転職を考える際、多くの方が同じような疑問を抱えています。ここでは、特によく寄せられる質問について詳しくお答えします。
(1)税理士は何歳まで転職できますか?
税理士業界への転職に明確な年齢制限はありません。ただし、年齢が上がるにつれて転職のハードルが高くなることは事実です。
一般的に、 未経験からの転職がスムーズに進みやすいのは20代から30代前半といわれています。 この年代であれば、多くの事務所が将来性を見込んで採用してくれますし、じっくりと時間をかけて税理士試験に挑戦することも可能です。体力的にも勉強と仕事の両立がしやすい年齢層といえるでしょう。
30代後半から40代になると、即戦力としての期待が高まります。 この年代で転職を成功させるには、前職での専門知識やマネジメント経験、あるいは既に税理士試験の科目合格を持っているなど、何らかの強みを持っていることが重要になります。年齢が上がるほど、未経験をカバーできる他の価値を示すことが求められるのです。
結論として、税理士への転職は何歳からでも可能ですが、若いうちに始めるほど選択肢が広がり、キャリア形成もスムーズに進むといえます。もし税理士を目指したいと思っているなら、思い立ったときが最良のタイミングです。年齢を理由に諦める前に、まずは一歩踏み出してみることをお勧めします。
(2)税理士試験の勉強と仕事はどう両立したらいい?
税理士試験の勉強と仕事の両立は、多くの受験生が直面する最大の課題です。税理士試験は難関試験として知られており、1科目合格するだけでも相当な勉強時間が必要になります。フルタイムで働きながら合格を目指すには、効率的な学習計画と強い意志が求められます。
まず大切なのは、勤務先の理解とサポートを得ることです。税理士事務所の中には、試験勉強を応援する制度を設けているところが少なくありません。試験直前に特別休暇を取得できたり、勉強時間を確保するために残業を減らす配慮をしてくれたりする事務所もあります。就職活動の段階で、こうした支援制度の有無を確認しておくことが重要です。
働きながら勉強する場合、時間管理が成功の鍵を握ります。朝の通勤時間や昼休み、仕事後の夜間など、隙間時間を最大限に活用する工夫が必要です。多くの合格者は、朝早く起きて出勤前に勉強する、あるいは仕事後に必ず図書館や自習室で勉強してから帰宅するといった、自分なりのルーティンを確立しています。
税理士試験は科目合格制という特徴があります。これを活かして、年に1科目か2科目に絞って集中的に勉強するという戦略が有効です。無理に複数科目を同時に勉強しようとすると、どれも中途半端になってしまう危険性があります。長期的な視点で、着実に合格科目を積み重ねていく姿勢が大切です。
■まとめ
未経験から税理士を目指す道は、決して平坦ではありませんが、多くの先輩たちが実際に歩んできた確かな道でもあります。重要なのは、自分のこれまでの経験を活かしながら、着実に専門知識とスキルを身につけていく姿勢です。
税理士事務所での実務経験を積みながら、資格取得に向けた学習を継続することが基本的な道筋となります。異業種での経験は決してマイナスではなく、むしろ独自の強みとして活かすことができます。年齢に応じた戦略を立て、自分に合った転職先を見つけることで、未経験からでも十分に成功のチャンスがあります。
求人サイトや転職エージェントを積極的に活用し、情報収集を怠らないことも大切です。そして何より、税理士という職業への情熱と、学び続ける意欲を持ち続けることが、転職成功への最大の鍵となるでしょう。
一歩踏み出す勇気を持って、新しいキャリアへの挑戦を始めてみてはいかがでしょうか。あなたの経験と情熱が、きっと税理士としての道を切り開く力になるはずです。
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