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【連載】税理士なら知っておきたい『銀行融資』の知識 【銀行融資ブログ No.11】経営者保証の有無とコベナンツの組み合わせが多くなっています

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2026年3月30日 徳永 貴則

経営者保証を求めない融資のスキームが、ここ数年で急速に広がっています。とりわけ創業期の融資では、経営者保証を原則として求めない方向に変わってきました。

一方で、既存の融資先に対しては「経営者保証を外す代わりに、一定の条件を約束してもらう」というコベナンツ型の融資が目立つようになっています。

今回は、この「経営者保証」と「コベナンツ」の組み合わせについて解説します。

■コベナンツとは何か

コベナンツとは、融資契約において債権者(金融機関)と債務者(企業)の間で交わす「約束事」のことです。融資を受けた後も一定の財務条件を守り続けることを契約に盛り込む仕組みで、経営者保証の代替手段として活用されるケースが増えています。

■2つの代表的なコベナンツスキーム

経営者保証に関連したコベナンツには、大きく2つの型があります。

①停止条件付保証契約 は、現時点では経営者保証ガイドラインの3要件(後述)を満たしているものの、将来的に条件を満たせなくなるリスクがある企業を対象とするものです。条件を維持している間は経営者保証を求めないが、条件が崩れた場合に保証が発動する仕組みです。

②解除条件付保証契約 はその逆で、現時点では3要件を満たしていないため経営者保証をとるが、条件を満たすことができれば保証を解除するという契約です。「今は保証人になってもらうが、経営を改善すれば外せる」という道筋を示す点で、債務者にとって前向きな仕組みといえます。

■経営者保証ガイドラインの「3要件」とは

そもそも経営者保証を不要とするための基準として、「経営者保証に関するガイドライン」では以下の3要件が示されています。

一つ目は、 法人と経営者個人の資産・経理の明確な分離 です。会社のお金と経営者個人のお金が混在していないこと、法人から経営者への不適切な資金流出がないことが求められます。

二つ目は、 財務基盤の強化 です。内部留保が積み上がり、自社の資産・収益力だけで借入を返済できる状態が望ましいとされます。

三つ目は、 財務情報の適時適切な開示 です。決算書の提出にとどまらず、試算表や資金繰り表を定期的に金融機関へ共有する姿勢が求められます。

会社と経営者の間でのお金の貸し借りや私的流用がなく、純資産がきちんと確保されていて、日頃から情報開示をしっかり行っていれば、この3要件を満たしやすくなります。

■コベナンツの具体例

コベナンツの内容は金融機関や企業の状況によって異なりますが、一例を挙げると以下のようなものがあります。

厳しめの内容としては、仮払金・貸付金がないまたは減少傾向にあること、償却前経常利益が2期連続赤字ではないこと、直近期に債務超過がないこと、四半期ごとに試算表を提出することなどが挙げられます。

一方、緩やかな内容の例としては、融資実行から3年経過後に期限の利益喪失事由に該当していないこと、全借入についてリスケや返済遅延がないことなどがあります。

どちらの型であっても、これらはあくまで一例であり、画一的な基準があるわけではありません。

■経営者保証を外すもう一つの選択肢:保証料上乗せ型の新制度

コベナンツとは別に、2024年3月から新しい選択肢も加わりました。信用保証制度における「保証料率の上乗せによる経営者保証不要化」です。

これは、 経営者保証ガイドラインの3要件をすべて満たすことが難しい企業でも、保証料をやや上乗せして支払うことで経営者保証を不要にできる仕組み です。3要件よりも緩和された条件が設定されており、具体的には「代表者への貸付金等がないこと」「直近決算で債務超過でないこと、または直近2期の償却前経常利益が連続赤字でないこと」などが主な対象要件となっています。

さらに、制度の普及を後押しするため、国が上乗せ保証料の一部を補助する時限措置が設けられています。令和7年(2025年)3月末までの申込分は0.15%、令和7年4月〜令和8年3月分は0.10%、令和8年4月〜令和9年3月分は0.05%相当の補助があります。令和9年3月末までが補助対象期間ですので、検討している方は早めに動くことをお勧めします。

コベナンツ型と保証料上乗せ型、それぞれにメリットと適した状況があります。自社の財務状況や金融機関との関係を踏まえて、顧問税理士や金融機関の担当者に相談しながら最適な方法を選んでください。

■なぜ金融機関はコベナンツを設定するのか

金融機関が懸念するのは、将来のキャッシュフローが読めないことです。

たとえば、毎月の役員報酬が著しく低い場合、「他に収入源があるのか、この会社の経営に本当に注力しているのか」という疑問が生じます。また、役員賞与の額が毎年大きく変動する場合、この会社が安定的にキャッシュを生み出す力があるのかどうかの判断が難しくなり、長期融資の検討に支障が出ます。経費の使われ方についても、事業実態に見合っているかどうかという視点で見られます。

こうした不透明さに対して、コベナンツは「定期的に財務状況を確認し、一定の規律を保ち続けてもらう」ための仕組みとして機能します。

■経営者にとってのメリット

わたし自身は、コベナンツ融資全般を積極的に薦める立場ではありませんが、経営者保証の解除を目指すコベナンツスキームについては、債務者に大きなメリットがあると考えています。

経営者保証は、経営者自身のリスクであるだけでなく、事業承継の際に後継者の重荷にもなります。保証債務を解除できれば、経営者の個人リスクを軽減し、次世代へのスムーズな引き継ぎにもつながります。金融機関からこのような提案があった場合は、ぜひ前向きに検討してみてください。

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執筆者プロフィール

徳永 貴則(とくなが たかのり)

平成8年に当時の大和銀行(現りそな銀行)に入行。都心店舗を中心に法人融資業務を主担当し、本部の融資審査セクションでも業務を経験。2000社ほどの銀行融資に携わった経験を生かして、株式会社スペースワンを立ち上げ独立。多くの銀行融資コンサルティングのみならず、事業再生や経営改善のアドバイスを行っている。。

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