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「BIG4税理士法人での国際税務」の業務内容、仕事の魅力は?

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2025年7月1日 税理士 島田 健史

目次

ここではEY税理士法人で、長年、国際税務業務を担当してきた税理士が、一般的な仕事内容ややりがい、その後のキャリアパスなどについてお話いたします。

■必要とされる志向性(どんな人に向いているか?)

わたしの在籍していたEY税理士法人は、税務顧問や申告書の作成などを主に行う 『税務コンプライアンス部門』 と、各種の税務アドバイスを行う 『コンサルティング部門』 に分けられています。

BIG4で取り扱う業務の場合、どちらの部門で働いていても国内税務のみで完結する仕事はほとんどなく、どこかで必ず国際税務が関わってくる可能性が高いと思います。

そのうえで一般的に国際税務を志す人はコンサルティング業務に興味がある方が多いと思いますので、「コンサルティング業務における志向性」についてお話します。

コンサルティング業務において一番大切なことは、やはりコミュニケーション能力、特に クライアントの悩みを引き出す能力 ではないでしょうか。クライアントで社内に国際税務に対応する部門まで備えている企業というのはかなり少ないでしょう。

「今まで経験もない中で海外に子会社が作られた」という場合、そもそも何をやればよいのか、問題点がどこにあり、何に悩んでいるのかもわからない状態であることが多いです。

それをプロフェッショナルとして、何が必要なのか、どんな提案をすればご満足いただけるのかを考えるのがコンサルタントとしての仕事です。 相手の話を聞き、問題点を明確にできるコミュニケーション能力が、何より求められる と思います。

また毎回同じ内容のご相談ということはなく、毎回様々な問題点や論点を解決するという流れになるため、フットワークが軽く、イレギュラーな事態も苦にならないタイプの人に向いているのではないでしょうか。

■「BIG4税理士法人での国際税務」の業務内容

ここでは一般的な国際税務のコンサルティング業務における、主な業務内容をご紹介いたします。BIG4の最大の強みはグローバルネットワークにあると思います。BIG4にはBIG4でしか関われない規模や内容の案件があることは間違いありませんので、興味があればぜひ一度働いてみることをおすすめします。

特に、EY税理士法人は仕事自体の要求レベルも高くハードですが、パートナーも人柄が良い方が多かった印象があります(他のBIG4が悪いと言っている訳ではありません)。

わたしのように部署異動に関するわがままや海外赴任など、何か新しいことや「やりたい」と思うことをきちんと話せば検討してもらえる雰囲気があり、働き易い環境であったと思います。

(1)移転価格税制におけるコンサルティング業務

移転価格税制におけるコンサルティング業務とは、グローバルに事業展開している企業に対して、グループ間取引価格の適正化を図るために実施する業務のことです。

移転価格文書の作成や、その後の税務調査の対応など様々な業務を行います。わたしのいた部署では税理士よりも会計士の方や経済アナリストの方などが多く、かなりの英語力が求められました。

(2)国際税務顧問

わたしが主に関わっていた業務です。近年はグローバル化の加速により、大企業だけではなく中小企業も含めて海外と取引を行うケースが増加しています。

業務としては主に日本企業の海外進出や、海外企業と取引をするお手伝いをする 「アウトバウンド業務」 、海外企業が日本に進出したいときになどにアドバイスを行う 「インバウンド業務」 があります。国際税務コンサルティングの業務では、海外進出や日本進出時における進出形態(投資ストラクチャー)の検討を税務の観点から行うアドバイスや、現地でビジネスを行う際の現地税制の調査、租税上のリスク回避のアドバイスなどが重要な業務です。

(3)個人所得税申告

日本国内に滞在する外国人の所得税申告や、海外に在住する日本人に対し、日本と海外における個人所得税の申告やアドバイス業務を行います。日本国内においても通常の所得税とは異なる計算が必要な場合もあり、専門的な知識が必要になります。

(4)M&Aにおける調査、および組織再編などに関わる国際税務

日本企業と海外企業のM&Aのみならず、日本にある企業同士のM&Aであったとしても、国内のみですべての業務が完結していることは少なく、そこに海外の子会社や取引先などが関わってきます。

その場合、それぞれの国の税制を調査し、どのようなリスクがあるか、コストはどのくらいかかるかなどについて、アドバイスを行う業務です。

■わたしの場合

わたしはそもそも税理士の資格を取得した際に、 「いずれは独立したい」という想いと、同時に海外に住んでみたい という気持ちがありました。

最初は街の税理士事務所で働いていたので、28歳のときにEY税理士法人に転職したばかりのころは業務の内容が全く違うため戸惑うことも多かったです。税務コンプライアンス部門で先輩に怒られながら徹夜で申告書を作成していました。

税務コンプライアンス部門はどちらかというとコツコツ仕事を積み重ねていく作業が多いのですが、どうやら自分にそれは向いていないなと思うようになり…。また、海外赴任をするのであれば国際税務部の方が近道に思えたので、部署の異動をさせてもらったのです。

国際税務のコンサルティング業務では、外資系企業・上場企業の税務申告サポートやアウトバウンド・インバウンドの税務アドバイス、M&Aにおける税務デューデリジェンス・ストラクチャリングアドバイスなどを行っていました。

■「BIG4税理士法人での国際税務」のやりがいとは?

夢であったEYシンガポールへの出向も経験しましたし、 毎回いろいろな新しいお客様に会い、その悩みを解決するソリューションを考えるのが楽しい と思えたので、やはりこちらの道は向いていたのかもしれません。どんな仕事もそうだと思いますが、クライアントの顔が見えて、自分が手がけた仕事に感謝していただけることが一番のやりがいと言えるのではないでしょうか。

最終的には独立した後も業務委託という形でEY税理士法人からお仕事をいただいたりもしていたので、トータル16年間はお世話になり本当に感謝しています。

現在は自分の事務所で法人税の申告から、国際税務のアドバイザリー、個人所得税の申告から税務相談など、様々なことを行っています。やはり国際税務で経験を積んでいるということと、英語で仕事ができるという強みがあるため、海外からも様々なお客様からご紹介をいただいています。

わたしも最初は街の税理士事務所からの転職だったので、BIG4に入るにあたり不安もありました。入ってから分かったことですが、 同じように国際税務の道を志す方は、何より日本の税制を徹底的に勉強することをおすすめします

海外の税制も細かい部分ではもちろん違いがあるのですが、根本的なところは日本の税制と似通っているので、 まずは日本の税制について深く理解していることが、国際税務のスペシャリストになるための最初の一歩 になるからです。

■「BIG4税理士法人での国際税務」の採用ニーズ

(1)求められるスキル、人材

スタッフレベルであれば、今まで国際税務の経験がなくともBIG4に転職することは可能だと思います。ただし、 「なぜ国際税務を志したのか」の理由を述べられることが大切 ではないでしょうか。

また英語もあまり得意ではないという段階だと、いきなり国際税務のコンサルティング業務を任されることは難しく、まずは税務コンプライアンス業務で採用され、経験を積んでから希望を出して異動する形になると思います。

コンサルティングに係る部分は仕事をしながら理解していくとしても、国際税務を担当したいのであれば、まずは TOEIC600~700点 を目指してみてください。

英語の電話会議でいきなり発言を求められることはまず無いと思いますが、 英文の読み書きは必須 です。

やってみれば分かると思いますが、読む方はどうにかなります。問題は書く方で、これがなかなか難しいです。今は良い翻訳ソフトもありますが、わたくしは 先輩の作成した書類を勉強のためにひたすら写したり、英文の税制の書籍を読んだり して文書の書き方を覚えていきました。これは実践あるのみです。

入社前の段階でしたら、ある程度語学の基礎を固めておくと即戦力になりやすいと思います。

(2)転職で気を付けるポイントや難易度

あくまでEY税理士法人の場合ですが、かなり 人柄を見ている ような気がします。

経歴などはもちろんですが、 面接での志望動機なども飾らず正直に答えてよい のではないでしょうか。「このような本を読んでEYに興味を持った」、わたしのように「海外で仕事をしてみたい」など、自分の言葉で飾らず素直に話すことが大切だと思います。

■「BIG4税理士法人での国際税務」の年収はどのくらい?

その方の職歴や、現在の年収などもあり、詳しい金額はわかりかねますが、30代前半で国際税務未経験からのスタッフ採用の場合、500万~プラス残業代、という感じになるのではないかと思います。

■「BIG4税理士法人での国際税務」の経験を活かしたその後とのキャリアパスは?

BIG4に在籍し、そのまま パートナーなどを目指す 以外にも、多数のキャリアパスを描けると思います。

まず現在は国内企業の経理部に国際税務の専門家が不足しているため、 大手一般企業への転職も引く手あまた ではないでしょうか。また国際税務コンサルタントとして 他の税理士法人や事務所への転職 も、もちろん可能でしょう。

わたしのように 国際税務のコンサルティング業務を行っていて、独立するパターンは少し珍しい かもしれません。

独立すると大きな案件を引き受けるのはなかなか難しくなりますが、海外のお客様が日本で事業を行いたい、投資をしたいなどのニーズはますます増えてきています。また大手企業の中でも国際税務の専門家は少ないため、事務所として国際税務業務をスポットで引き受けるなどの働き方も選べると思います。

わたしの経験が、みなさまのキャリア選択の参考になれば幸甚です。

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執筆者プロフィール

島田 健史(しまだ けんじ)
税理士

1996年 埼玉県立豊岡高校卒業
2000年 武蔵大学経済学部経済学科卒業
2000年 自動車事故受付業務
2002年 個人会計事務所勤務
2006年 EY税理士法人入社

  • 外資系企業・上場企業の税務申告担当
  • アウトバウンド税務アドバイス
  • インバウンド国内税務アドバイス
  • M&Aにおける税務デューデリ・ストラクチャリングアドバイス
  • 多国籍企業に対する実効税率低減アドバイザリー(TESCM・OME)
  • 個人向け所得税、国際相続案件
  • 三井物産(株)セグメント経理部出向(2009年~2011年)
  • EYシンガポールへ 出向(2013年~2015年)
    シンガポールの会計・税務・法務Q&A 〔第3版〕編集協力

2017年 アクレード島田健史税理士事務所設立

  • 東証1部上場企業 国際税務アドバイザリー契約
  • 米国居住者に対する国際相続に関するご相談
  • 外資系企業・個人へのインバウンド投資に関する税務アドバイス提供

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