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AIが税理士試験に挑戦!令和6年度試験問題で判明した「強み」と「まだ足りない点」とは?

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税理士 山中 宏

■はじめに AIは税理士試験をとけるのか

AIがニュースで注目を集めることが増えています。「医療診断をこなすAI」「法律相談に答えるAI」――では、税理士試験のような高度な専門知識と実務判断が問われる国家試験において、AIはどこまで通用するのでしょうか?

今回、わたしは試しにAIに令和6年の税理士試験・法人税法の理論問題第1問 問2を解かせてみました。そして、その答案を模範解答と照らし合わせ、採点をしてみたのです。

■ AIのすごさ――知識の網羅性と抜け漏れのなさ

まず、AIの強みは「知識の網羅性」と「正確な情報整理」です。「修繕費と資本的支出の違い」など、頻出論点には迷いなく対応。条文番号や通達の根拠も明確に記述し、人間なら見落としかねない部分まで過不足なく拾い上げます。

また、AIはケアレスミスや時間切れと無縁です。与えられた情報をもとに、冷静かつ論理的に文章を構築し、安定感のある答案を作成してくれました。そしてさらに模範解答を読み込ませ、国税庁の出題のポイントも読み込ませた上でAIに採点もしてもらいました。

■ 採点結果とAIの感想 ―AIの犯したミス

「保険差益」の計算に関する根本的なミスがありました。
試験問題では、災害で滅失した資産に対し、保険金を受け取った会社の処理が問われました。AIは「保険差益=保険金-帳簿価額」という計算を行い自信満々に解答。

ところが、これは明らかな誤答でした。

正しくは、滅失経費も差し引く必要があったのですが差し引かなかったのです。

結局15点満点中10点でした。以下はAIによる採点の講評です。

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■ ミスの本質 ―AIの“パターン学習”の限界

今回のミスは、AIが過去の「よくあるパターン」を学習しすぎたがゆえの失敗かもしれません。実務や試験では、“例外”や“条件の違い”にどう対応できるかが試されます

AIには「この条件、ちょっと変だな」という“違和感”を覚える力がまだないのかもしれません。人間なら慎重に再確認する場面でも、AIはそのまま進んでしまいます。だからこそ、AIと人間の“目”の協力が必要なのです。

■ それでもAIはミスを学びに変えた

間違いを指摘し「もう一度やりなおして」と再度解いてもらいました、AIはすぐに正しい計算を提示しました。

この修正により、以降の処理が自然に整いました。

つまり、AIは「間違いを素直に認め、正しい方向にアップデートする力」を備えているということです。

■ おわりに:満点ではなかったけれど、AIの価値は変わらない

今回の結果を一言で言えば、「AIは限りなく高得点だが、満点ではない」――これが現実です。

しかし、それはAIが無力だという意味ではありません。むしろ、ミスを通じて学び、アップデートし、より良い答えを探す姿勢そのものが、AIの進化を支えているのです。そしてそのミスをAIが指摘できるのです。

今回は税理士試験で試してみましたが、仕事においてもAIが仕事をしAIにチェックしてもらいAIがそれを修正するという時代はすぐそこまで来ているということを実感しました。人とAIが互いに補完し合う時代が、すでに始まっています。

執筆者プロフィール

山中 宏(やまなか ひろし)
税理士/山中宏税理士事務所

1995年中小企業診断士取得、2014年税理士登録、2020年ウェブ解析士取得。2021年6月山中宏税理士・中小企業診断士事務所開業。

会計事務所、大手自動車メーカー他実務経験が豊富。管理職経験が長く会社間や人とのコミュニケーション能力が高い。

現在では税理士として決算、税務相談、確定申告を行うだけでなく、中小企業診断士・ウェブ解析士として実地のコンサルティング、ウェブ集客・SNS集客を通して売上拡大、集客拡大の支援を行う。

関連サイト

山中宏税理士・診断士事務所

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