税理士法人への転職を成功させるためには、説得力のある志望動機の作成が欠かせません。税理士業界は専門性が高く、採用担当者は応募者の意欲や適性を慎重に見極めています。本記事では、効果的な志望動機の書き方から面接対策まで、転職成功のためのノウハウを詳しく解説します。
【例文あり】税理士法人に転職する際の志望動機の書き方とポイント

ジャスネットキャリア編集部
目次
■税理士法人への転職における志望動機の重要性
税理士法人へ転職を検討する際、「志望動機」は履歴書や面接の場面で非常に重要な要素になります。特に専門性の高い職種である税理士業界では、単なる転職理由ではなく、なぜその税理士法人を選び、どのように貢献できるのかを明確に伝えることが求められます。
また、税理士法人はそれぞれ業務内容やクライアント層、企業文化が異なります。したがって、「どの法人でも通じる志望動機」ではなく、「その法人だからこそ」という動機づけが強く評価されます。
採用担当者は、応募者が自社にマッチする人材かを見極めるために、志望動機を通して「熱意」「目的意識」「将来性」をチェックしています。中でも転職市場では、同業他社からの移籍や異業種からの挑戦など、応募者の背景も多様です。そのため、自分の経験やスキルをどう生かせるのか、明確なストーリーで語ることが鍵になります。
■税理士法人に転職するための志望動機の作成方法
(1)自己分析を行う
まず初めに行うべきは、徹底した自己分析です。なぜ自分が税理士法人に転職したいのかを深掘りし、これまでの経験やスキル、価値観を整理していきましょう。税理士資格の有無、業務経験、得意分野、働き方のスタイルなど、自分の特性を正確に把握することが、説得力のある志望動機をつくる第一歩です。
また、これまでの職務の中でやりがいを感じたエピソードや、苦労して乗り越えた経験など、自分らしさを示すことができる要素をリストアップするのも効果的です。
(2)応募先の税理士法人の研究
次に行うべきは、応募先の税理士法人についての情報収集です。法人の業務内容、主なクライアント層、強みとしているサービス(例えば国際税務、資産税、医療業界特化など)、企業理念や働き方などを調べ、自分の価値観や志向とどう一致しているかを分析します。
その上で、「なぜ他ではなくその法人なのか」という理由を、自分のキャリアビジョンと絡めて言語化しましょう。例えば、「国際税務に力を入れている点に共感し、自分の英語力を生かして貢献したい」といった具体性のある動機は高く評価されます。
(3)具体的なエピソードを盛り込む
志望動機に説得力を持たせるには、具体的なエピソードの挿入が効果的です。自己分析や業界研究の内容を踏まえ、「どのような経験から今の志望に至ったのか」「具体的にどのような場面でモチベーションを高めたのか」など、応募者の個性が伝わる内容を盛り込むことで、印象に残る志望動機になります。
■税理士法人に転職するための志望動機の構成要素
(1)なぜ税理士法人を選んだのか
税理士法人を志望する理由は、「税理士業務に対する関心」や「専門性を高めたいという思い」に基づくことが多いですが、そこに加えて「法人で働くことのメリット」も言及すると良いでしょう。
税理士法人は、個人事務所と比較してチームでの業務遂行や高度な業務に携わる機会が多いこと、教育体制が整っていること、大手企業のクライアントと関われる可能性があることなど、魅力的な特徴があります。こうした特徴と自身のキャリア展望を関連づけて説明すると、より説得力が増します。
(2)自身のスキルと経験をアピール
次に、自身の持つスキルや実務経験を具体的に述べます。会計事務所での経験、経理や財務部門で培った知識、コミュニケーション能力、ITスキル(会計ソフト、Excelスキルなど)、あるいは資格取得の努力など、自分の「強み」がどのように役立つかを明確に伝えましょう。
特に中途採用の場合、即戦力が求められるケースも多いため、「何ができるのか」「何に貢献できるのか」を明示することがポイントです。
(3)将来のビジョンを示す
最後に、将来的にどのような税理士になりたいのか、また法人内でどう成長し、どんなポジションで貢献したいのかという「未来の展望」を語ります。ここでは、短期的な目標(例:3年以内に税理士資格を取得)と、中長期的な目標(例:資産税に特化した専門家として法人の柱になる)を組み合わせることで、継続的な成長意欲をアピールできます。
■税理士法人に転職したい方向け!志望動機の例文
ここでは、「税理士資格者向けの例文」「税理士科目合格者向けの例文」「未経験者向けの例文」を記載するので、参考にしてみてください。前述したように「どのような経験から今の志望に至ったのか」を具体的に説明し、自身のスキルをアピールした上で、その税理士法人で働きたい理由を明確にするようにしましょう。
(1)税理士資格者向けの例文
私が貴法人への転職を志望する理由は、税理士としてより高度で包括的なサービスを提供したいという強い思いがあるためです。
これまで地域の個人税理士事務所において4年間勤務し、個人事業主から中小法人まで約30件のクライアントを担当してまいりました。日々の記帳代行から確定申告、法人税申告まで幅広く経験する中で、クライアントの経営課題に対してより深いサポートを提供したいという気持ちが強くなってきました。特に事業承継や組織再編に関する相談を受ける機会が増え、現在の環境では対応しきれない高度な案件に直面することが多くなっています。
貴法人を選んだ決め手は、事業承継コンサルティングチームを有し、税務・法務・財務の専門家が連携してワンストップサービスを提供している点です。また、定期的な勉強会や外部研修への参加支援制度により、常に最新の知識を習得できる環境が整っていることも大きな魅力です。私がこれまで培ってきた中小企業との関係構築スキルと実務経験を基盤に、貴法人のチームの一員として、クライアントにとって真に価値のあるサービス提供を実現したいと考えています。
(2)税理士科目合格者向けの例文
私は現在税理士試験4科目に合格しており、残る1科目についても今年度中の合格を目指しています。これまでの学習で得た知識を実務で活かしながら、貴法人で税理士としてのキャリアを築きたいと考え、転職を志望いたします。
前職では製造業の経理担当として6年間従事し、原価計算から連結決算まで幅広い業務を経験しました。特に月次決算の早期化プロジェクトでは、従来15日かかっていた作業を8日に短縮する業務改善を主導し、会社の意思決定スピード向上に貢献しました。この経験を通じて、正確性と効率性を両立させる重要性を学びました。
貴法人を志望する最大の理由は、科目合格者に対する段階的な成長プログラムが確立されていることです。先輩税理士からのOJTと並行して、実際のクライアント対応を段階的に経験できるシステムは、理論と実務の橋渡しに最適だと感じています。また、貴法人が手掛けている製造業クライアントへのサービス提供において、私の製造業での経理経験が活かせると確信しています。税理士資格取得後は、製造業特有の会計処理や税務課題に精通した専門家として、貴法人で活躍したいと考えています。
(3)志望動機としてNGな例文
個人事務所などに比べて、税理士法人は教育・研修体制などの福利厚生が充実している側面があります。税理士を目指している方にとってそういった体制が整っていることは確かに理想的ですが、それだけを転職理由として掲げると「税理士法人ならどこでもいいのではないか」と懸念を抱かれてしまいます。
志望理由として福利厚生面を上げる際は、志望先の税理士法人の業務の特色などを含めて、「その税理士法人でなければならなかった理由」と絡めて記載するようにしましょう。
■面接対策と面接における志望動機の述べ方
(1)面接での志望動機に関する質問の準備
面接では、履歴書に記載した志望動機をもとに、より深掘りした質問がなされることが一般的です。たとえば「なぜこの法人を選んだのですか?」「他社ではなく弊社を選んだ理由は?」といった質問には、事前にしっかりと回答を用意しておきましょう。
この段階では、履歴書よりも少し感情を込めた表現や、面接官とのやり取りの中で自然に熱意が伝わるような話し方を心がけると良いでしょう。
(2)効果的な志望動機の述べ方
面接では、ただ原稿を読むのではなく、相手の目を見て、自分の言葉で志望動機を語ることが大切です。形式的な説明よりも、自分の経験や考えに裏付けられた「リアルな思い」を伝えることで、面接官の印象に残る話し方になります。
また、「学びたい」という姿勢に加えて、「どのように貢献できるか」を具体的に話すことで、採用後のイメージも描いてもらいやすくなります。
■税理士法人への転職に関する志望動機なら転職エージェントにお任せ
税理士法人への転職を考えている場合、転職エージェントに登録するのをおすすめします。特に会計・税務に特化した転職エージェントは、税理士法人の求人を複数抱えており、税理士の価値を的確に判断できるため、希望に見合った転職先を紹介してもらえます。
また、履歴書や職務経歴書の書き方から面接対策まで幅広くサポート。それぞれの税理士法人の特徴も把握しているため、各法人に適した志望動機の記述方法についても丁寧に指導してくれるでしょう。
■転職成功事例の紹介
ここでは、会計・税務分野に特化した転職エージェント「ジャスネットコミュニケーションズ」における税理士法人への転職成功事例を紹介します。
【ケース1】40歳を過ぎて税理士を目指しキャリアチェンジ
転職前 | 転職後 |
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経営コンサルティング会社 | 税理士法人 |
40歳を過ぎたころに税理士になろうと決意したKさんは、勤めていた経営コンサルティング会社を退職。通常の面接だと年齢や経験、資格の有無で書類選考を突破できない可能性があったため、ジャスネットのつてで求人募集をしていない税理士法人に面接の機会を設けてもらいました。税理士としては未経験ですが、コンサルタントの豊富な経験を買われ、「ぜひKさんと一緒に仕事がしたい」という税理士法人の言葉につながりました。
【ケース2】相続や事業承継業務の経験を積むために転職
転職前 | 転職後 |
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税理士法人 | 税理士法人 |
銀行勤務を経て、税理士法人で8年間ほど働いていたYさん。税務申告、資金繰りや銀行借入に対するアドバイス業務など一通りの業務を経験したため、今度は相続税や事業継承業務の経験を積みたいと考え、転職を決意しました。Yさんに紹介された老舗の税理士法人は昔から資産相続・贈与・事業承継、M&Aに特化した業務を行っており、Yさんのキャリアにも最適。Yさんも応募条件すべてを満たしていたため、すぐに内定を得ることができました。
■税理士法人の転職市場動向
(1)現在の求人情報と求められるスキル
近年、税理士法人の求人は多様化しており、特に中堅〜大手法人では、語学スキルやITリテラシー、コンサルティング力など、従来の税務知識以外のスキルも重視されつつあります。
一方、地方や中小規模の法人では、業務の幅広さや柔軟な対応力、長期的な人材育成を重視する傾向があり、未経験者や科目合格者も積極的に採用しています。
(2)キャリアプランの考慮とその重要性
転職先選びにおいては、現在の求人条件だけでなく、将来的なキャリアプランとの整合性も重視する必要があります。どのような業務に携わりたいのか、税理士資格取得を目指すのか、独立を視野に入れているのかなど、自分自身のキャリアビジョンを明確にし、それに合った法人を選ぶことが転職成功の鍵になります。
■まとめ
税理士法人への転職を成功させるためには、志望動機の作成が非常に重要な要素となります。自己分析と企業研究をしっかりと行い、自分のスキルや将来の目標を具体的に伝えることで、採用担当者に強い印象を与えることができます。
また、志望動機は履歴書だけでなく、面接の場でもその内容が問われるため、事前の準備が欠かせません。例文を参考にしながら、自分の言葉で語れる志望動機を作り上げましょう。転職市場や法人ごとの特色を理解し、自分に合った職場で新たなキャリアを築くための第一歩として、納得のいく志望動機を完成させてください。
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ジャスネットキャリア編集部
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