■税理士からの転職を考える理由
(1)キャリアの停滞感
税理士として働く中で、多くの方が直面するのがキャリアの停滞感です。働く職場によっては、毎年同じような業務の繰り返しになりがちで、新しい知識やスキルを身につける機会が限られてしまうことがあります。
確定申告の時期になると忙しくなり、決算業務や月次監査といった定型的な作業が中心となる環境では、税理士としての成長実感を得にくいものです。また、昇進の機会も限定的で、給与面での大幅な改善も期待しにくいという現実があります。
このような状況が続くと、せっかく難関資格を取得したにも関わらず、自分の能力を十分に活かせていないのではないかという疑問が生まれてきます。特に若手の税理士にとっては、将来への不安が転職を考える大きな要因となっています。
(2)労働環境の改善
税理士業界は、決算期や確定申告シーズンにおける長時間労働が常態化しているケースが多く見られます。特に2月から6月にかけての繁忙期では、休日出勤や深夜までの残業が当たり前となってしまい、プライベートの時間を確保することが困難になってしまいます。
このような労働環境は、ワークライフバランスを重視する現代の働き方には適さない面があります。家族との時間を大切にしたい、趣味や自己研鑽の時間を確保したいと考える税理士にとって、現在の職場環境に限界を感じることも理解できます。
また、職場の人間関係についても悩みを抱える方が少なくありません。税理士事務所は比較的小規模な組織が多いため、一度人間関係がこじれてしまうと、その影響が業務全体に及んでしまうことがあります。上司との価値観の違いや、同僚との競争によるストレスなども、転職を検討する理由として挙げられます。
(3)新たな挑戦への欲求
税理士として一定の経験を積んだ方の中には、これまでとは異なる分野で自分の専門知識を活かしたいと考える方も多くいらっしゃいます。税務の専門知識は、経理や財務、コンサルティングなど様々な分野で応用可能であり、その可能性の広さに魅力を感じるのは自然なことです。
例えば、M&Aアドバイザリーや企業再生コンサルティング、国際税務といった、より専門性の高い分野への関心を持つ税理士も増えています。これらの分野では、税務計算だけでなく、経営戦略的な視点や幅広いビジネス知識が求められるため、やりがいを感じる機会も多くなります。
また、起業や独立への憧れを持つ税理士も少なくありません。自分自身の理想とする税理士事務所を立ち上げたり、税理士業務以外の事業にも挑戦したりすることで、より大きな成果を目指したいと考える方も多いのです。
■税理士の主な転職先
(1)税理士事務所・税理士法人
税理士の転職先として
最も一般的なのが、他の税理士事務所や税理士法人への転職
です。同業界内での転職であるため、これまでの経験や知識を直接活かすことができ、転職時のリスクも比較的低く抑えることができます。
大手税理士法人への転職では、より体系的な研修制度や
専門分野への特化した業務に携わる機会を得ることができます
。例えば、国際税務や相続税専門、M&A税務といった特定分野に集中して取り組むことで、専門性を高めることが可能になります。また、大手法人では福利厚生も充実している場合が多く、労働環境の改善も期待できます。
一方、中小規模の税理士事務所では、幅広い業務に携わりながらも、比較的風通しの良い環境で働くことができる場合が多く見られます。顧客との距離も近く、より個人的な関係を築きながら業務を進めることができるため、人とのつながりを重視する税理士には適した環境といえるでしょう。とはいえ、これは完全に
事務所ごとの特徴によるので、注意が必要
です。
(2)一般企業の経理部門
近年、税理士の転職先として注目されているのが
一般企業の経理部門
です。企業の経理担当者として、税理士の専門知識を内部から活用することで、企業の財務戦略により深く関わることができます。
一般企業への転職の大きなメリットは、
安定した労働環境と福利厚生の充実
です。多くの企業では、労働時間の管理が適切に行われており、有給休暇の取得も推奨されています。また、昇進の機会も明確に設定されている場合が多く、キャリアアップのための道筋が見えやすいという特徴があります。
企業の経理部門では、税務だけでなく、予算管理や財務分析、内部統制といった幅広い業務に携わるチャンスもあります。これらの経験は、将来的に財務部長やCFO(最高財務責任者)といったより上位のポジションを目指す上でも貴重な財産となります。
(3)金融機関やコンサルティングファーム
税理士の専門知識を活かせる転職先として、
金融機関やコンサルティングファームも
魅力的な選択肢の一つです。これらの業界では、税務の専門知識を持つ人材が高く評価される傾向にあります。
銀行や証券会社などの金融機関では、
顧客企業への財務アドバイザリー業務や、融資審査における税務面での評価、相続関連商品の提案などで税理士の知識が重宝されます
。特に富裕層向けのプライベートバンキング業務では、相続税や贈与税に関する深い知識が必要とされるため、税理士資格者は非常に重要な戦力となります。
コンサルティングファームでは、企業の経営改善や事業再生、M&Aアドバイザリーなどの業務で税理士の専門性を発揮することができます。これらの業務では、税務面でのアドバイスだけでなく、財務戦略の立案や実行支援といった、より戦略的な業務に携わることが可能になります。
(4)独立
税理士にとって独立開業は、常に選択肢として存在する魅力的な道です。自分自身の理想とする税理士事務所を立ち上げることで、
より自由度の高い働き方を実現することができます
。
独立の最大のメリットは、業務内容や顧客層、料金設定などを自分で決められることです。得意分野に特化した専門事務所を立ち上げたり、特定の業界や規模の企業をターゲットにしたりすることで、差別化を図ることが可能になります。また、成功すれば収入面での大幅な向上も期待できます。
近年では、クラウド会計ソフトの普及により、小規模事務所でも効率的な業務運営が可能になっています。また、オンラインでの顧客対応やリモートワークの導入により、従来の事務所運営の常識も変化しており、独立のハードルは以前より低くなっているといえるでしょう。
■税理士の転職市場の現状
税理士の転職市場は、近年大きな変化を見せています。少子高齢化の影響により、税理士の高齢化が進む一方で、若い税理士への需要が高まっているのが現状です。特に、デジタル化に対応できる税理士や、専門分野に特化した知識を持つ税理士への需要は増加傾向にあります。
大手税理士法人では、国際税務やM&A関連業務の拡大に伴い、経験豊富な税理士の採用を積極的に行っています。これらの分野では、従来の税務業務とは異なる専門知識が求められるため、該当分野での経験を持つ税理士は高く評価される傾向にあります。
一般企業においても、内部統制の強化や税務リスク管理の重要性が高まっており、税理士資格者への需要は堅調です。特に上場企業や上場を目指すベンチャー企業では、税務面での専門性を持つ人材を積極的に採用する動きが見られます。
■税理士の転職成功のためのポイント
(1)自己分析とキャリアの棚卸し
転職活動を始める前に
最も重要なのが、自己分析とこれまでのキャリアの棚卸し
です。税理士としてどのような経験を積み、どんなスキルを身につけてきたのかを客観的に整理することから始めましょう。
まず、これまで担当してきた業務内容を詳細に振り返ってみることが大切です。法人税務、所得税務、相続税務など、どの税法分野でどの程度の経験を積んできたのか、また取り扱ってきた顧客の規模や業界についても整理してみてください。これらの情報は、転職先を選定する際の重要な判断材料となります。
次に、
自分の強みと弱みを客観的に分析する
ことも欠かせません。コミュニケーション能力、問題解決能力、専門知識の深さ、新しい技術への適応力など、様々な角度から自分を評価してみましょう。同僚や上司からのフィードバックを参考にすることも有効です。
また、将来のキャリアビジョンを明確にすることも重要です。5年後、10年後にどのような税理士になっていたいのか、どのような働き方を実現したいのかを具体的にイメージしてみてください。このビジョンが明確になることで、転職先の選択肢も絞り込みやすくなります。
自己分析の結果は、履歴書や職務経歴書の作成、面接での自己PRにも活用できるため、時間をかけて丁寧に行うことをおすすめします。
(2)転職エージェントの活用
税理士の転職活動において、転職エージェントの活用は非常に有効な手段です。特に税理士や会計士を専門とする転職エージェントでは、業界の最新動向や求人情報に精通したコンサルタントがサポートしてくれるため、効率的な転職活動が可能になります。
転職エージェントを利用する最大のメリットは、
非公開求人にアクセスできる
ことです。多くの優良求人は一般には公開されておらず、転職エージェント経由でしか応募できない場合があります。特に大手税理士法人や有名企業の求人は、このような非公開求人として扱われることが多いため、転職エージェントとの関係構築は重要です。
また、転職エージェントは履歴書や職務経歴書の添削、面接対策なども提供してくれます。税理士業界特有の選考プロセスや、企業が求める人材像について詳しい情報を持っているため、より効果的な応募書類の作成や面接準備が可能になります。
税務・会計分野に特化した転職エージェント「ジャスネットコミュニケーションズ」では、経験10年以上のベテランが多数在籍するほか、
税理士として企業の経理で働いてきたエージェントも
。税理士や科目合格者の価値を正確に理解し、あなたにあった転職の方法を提案します。税理士法人や一般企業の経理部などの豊富な取引先の中から常に現場のニーズを把握し、企業との最適なマッチングを実現します。
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■税理士の求人事例
以下は、ジャスネット掲載の税理士求人の事例です。
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仕事内容
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日次業務(使用ソフト:弥生・達人キューブ等)
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月次業務(月次巡回業務含む)
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年次業務(各種申告書作成業務含む)
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財務・税務アドバイザー業務(M&Aにまつわる財務D.D.業務含む)
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事業承継業務、相続関連業務
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再生・再編業務 など
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応募条件
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【必須要件】
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税理士業界もしくは会計士業界での実務経験
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基本的なPCスキル(Excel、Word)
【歓迎要件】
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税理士・公認会計士有資格者優遇
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財務・組織再編・事業承継・M&Aなどのコンサルティング経験
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想定年収
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400万円~700万円
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BPOサービスを通じ、新しいことに挑戦したいメンバーを歓迎
仕事内容
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月次・四半期・年次決算
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各種税務申告書作成支援業務 等
※スキルや希望に応じて下記の業務も経験可能です。
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連結決算・連結納税
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資産流動化SPCの月次・四半期・年次決算、税務申告作成支援業務
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社会福祉法人向け会計・税務支援業務
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スタッフ指導・マネジメント 等
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応募条件
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【必須要件】
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日商簿記2級
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経理業務経験のある方(BPO推進部 リーダー候補)
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税理士科目または公認会計士試験合格者(経理管理事業部)
【歓迎要件】
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税理士
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税理士科目合格者
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公認会計士
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会計事務所または経理アウトソーシング・シェアード会社での実務経験のある方
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エクセルスキル中級以上(IF、VLOOKUPがわかる程度)
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想定年収
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400~800万円
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いち早くITを導入し業務効率性を追求した税理士法人で働きませんか
仕事内容
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お客様顧問担当として、税務会計業務全般をお任せします。
国際税務、IPO支援、資金調達、経理アウトソーシング支援などの幅広い業務まで、希望にもよりますが担当をお願いする場合があります。
【具体的な仕事内容】
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データ入力
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試算表作成
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決算書、税務申告書作成
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各種ご相談対応
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応募条件
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【必須要件】
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税理士試験科目合格(2科目以上)
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基本的なPCスキル(Word、Excel)
※新しいクラウドITツールを利用することに抵抗がない方
※チャットワーク、Slackなどチャットツールでのコミュニケーションに抵抗がない方
※データでの資料のやりとりやペーパーレスでの資料管理等に抵抗がない方
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会計事務所経験または企業の経理経験1年以上
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想定年収
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年俸400万円~700万円
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■税理士の転職成功事例
(1)税理士法人から一般企業への転職
中堅税理士法人で5年間勤務していた田中さん(仮名・32歳)は、より安定した労働環境を求めて一般企業への転職を決意しました。税理士法人での勤務では、繁忙期の長時間労働に疲弊を感じており、プライベートの時間を確保したいという思いが転職のきっかけでした。
転職活動では、税理士としての専門知識に加えて、税理士法人での幅広い業務経験をアピールポイントとして活用しました。法人税申告、消費税申告、相続税申告など多岐にわたる実務経験と、クライアントとのコミュニケーション能力が高く評価され、東証プライム上場の製造業企業の経理部税務課への転職を成功させることができました。
転職後は年収が約100万円アップし、残業時間も大幅に減少しました。また、企業内での昇進の道筋も明確で、将来的には経理部長を目指せる環境が整っています。現在は社内の税務業務の効率化プロジェクトにも参加し、これまでの経験を活かしながら新たなやりがいを見つけています。
(2)独立開業の成功事例
大手税理士法人で10年間勤務した佐藤さん(仮名・38歳)は、より顧客に寄り添ったサービスを提供したいという思いから独立を決意しました。法人時代は多数のクライアントを担当していましたが、一人一人との関係が希薄になってしまうことに物足りなさを感じていました。
独立前の準備として、佐藤さんは2年間かけて開業資金を貯蓄し、同時に独立後の顧客獲得のために業界内でのネットワーク構築に努めました。また、独立開業に関するセミナーに参加し、事業計画の策定やマーケティング手法について学習しました。
開業当初は中小企業を中心に営業活動を行い、徐々に顧客基盤を拡大していきました。特に、IT業界のスタートアップ企業に特化したサービス提供により差別化を図り、業界特有の税務問題に対する専門性で評価を得ることができました。
独立から3年後の現在、佐藤さんの事務所は従業員3名を抱えるまでに成長し、年収も法人時代の約1.5倍に達しています。顧客との距離も近く、経営面でのアドバイスも求められるようになり、税理士としてのやりがいを強く感じているとのことです。
■税理士の転職に関するよくある質問
(1)転職は何歳まで可能か?
税理士の転職に関して最も多く寄せられる質問の一つが、年齢制限についてです。結論から申し上げると、税理士の転職に明確な年齢制限はありません。ただし、年齢層によって転職の傾向や注意すべきポイントは異なります。
20代から30代前半の税理士にとっては、転職市場は非常に有利な環境といえます
。この年代では、ポテンシャル採用も多く、未経験の分野への挑戦も歓迎される傾向にあります。大手税理士法人や一般企業の経理部門など、様々な選択肢の中から自分に最適な転職先を選ぶことができるでしょう。
30代後半から40代の税理士の場合は、これまでの経験と実績が重視されるようになります
。特定分野での専門性や、管理職としての経験があると転職において有利に働きます。一方で、単純に別の税理士事務所への転職を希望する場合は、明確な転職理由と将来のビジョンを示すことが重要になります。
50代以上の税理士でも転職は十分可能ですが、豊富な経験と高い専門性が求められる傾向が強くなります
。特に相続税や国際税務など、特殊な分野での専門性を持つ税理士や、顧客基盤を持っている税理士は高く評価されます。
(2)転職回数が多いと不利になるか?
一般的に、短期間での転職を繰り返している場合は、採用担当者に不安を与える可能性があります。しかし、それぞれの
転職に明確な理由と成長があれば、必ずしも不利になるとは限りません
。
重要なのは、転職の理由とその結果得られた経験やスキルを論理的に説明できることです。例えば、「より専門性の高い業務に挑戦したい」「国際税務の経験を積みたい」「経営により近いポジションで働きたい」など、キャリアアップを目的とした転職であることを明確に示すことが大切です。
また、転職のたびに確実にスキルアップし、より責任の大きなポジションに就いている場合は、転職回数の多さもむしろプラス要因として評価される可能性があります。多様な環境での経験は、適応力の高さや幅広い知識の証明にもなります。
■まとめ
税理士としてのキャリアを考える上で、転職は決して特別なことではありません。むしろ、変化の激しい現代において、自分の価値観や目標に合った働き方を実現するための重要な手段の一つといえるでしょう。
転職先の選択肢は多岐にわたりますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。税理士事務所での専門性の深化、一般企業での安定した環境、金融機関やコンサルティングファームでの高収入、独立による自由な働き方など、自分の価値観と照らし合わせて最適な選択をすることが大切です。
税理士という専門性の高い資格を持つ皆さんには、様々なキャリアの可能性が開かれています。現在の状況に満足していない場合でも、適切な準備と戦略により、必ず理想的な働き方を実現することができるはずです。
- 執筆者プロフィール
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ジャスネットキャリア編集部
WEBサイト『ジャスネットキャリア』に掲載する記事制作を行う。
会計士、税理士、経理パーソンを対象とした、コラム系読み物、転職事例、転職QAの制作など。
編集部メンバーは企業での経理経験者で構成され、「経理・会計分野で働く方々のキャリアに寄り添う」をテーマにしたコンテンツ作りを心がけていてる。