■ 会計事務所の繁忙期はいつ?
会計事務所の繁忙期と言われる12~5月の中でも、担当するクライアントによって忙しくなる時期は違います。事業を営むクライアントは、個人事業主と法人、2種類あります。それぞれに決算の時期が違うため、繁忙期も変わってくるのです。
(1)12~1月:クライアントが個人・法人どちらでも忙しい時期
担当クライアントが個人・法人に関わらず、12月からは年末調整関連の業務が増えるため、徐々に忙しくなっていきます。
年末調整とは、各従業員について、扶養情報などを考慮して算定した所得税と、給料から天引きした源泉所得税との過不足分を調整し、12~1月支給の給料に反映することです。
また、源泉所得税を半期に一度(納期は年2回、7/10と1/20)まとめて納めればよい「納期の特例」を選択している事業者は、下半期(7~12月)の源泉所得税に年末調整分を加味した金額を、1/20までに国に納めなくてはなりません。
さらに、1/31期限の提出書類があるため、そこに向けて書類を準備しなくてはなりません。この提出書類は以下の3つで、①②は年末調整が関わってきます。
1月末の提出書類
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① 法定調書合計表
…前年中に支払った給料・報酬・家賃等を報告する書類。税務署に提出。
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② 給与支払報告書
…前年の所得に係る住民税の算定基礎。従業員の住所の市区町村に提出。
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③ 償却資産申告書
…今年の1/1時点で所有する固定資産(土地・建物・車両を除く)に係る償却資産税の算定基礎。償却資産の所在する市区町村に提出。
(2)2~3月:クライアントに個人が多い場合に忙しい時期
① 確定申告の期間以外に、消費税の申告期限も繁忙期に?
クライアントに個人が多い場合、2/16~3/15の確定申告期間は最も忙しい時期になると思います。
毎年、期限ギリギリで電子申告する方が多く、過去には3/15に税務署のサーバーが許容量を超えて受付を停止してしまったこともあるため、わたしはできるだけ前倒しで行うように心がけています。
また、今年からインボイス事業者に登録した個人の消費税申告が始まります。申告期限は3/31となっていますので、駆け込みで依頼があれば3月末まで忙しくなる可能性もあるでしょう。
② 個人の確定申告を税理士へ依頼するパターンと依頼料の目安
ちなみに「個人の確定申告を税理士へ依頼するパターンと依頼料の目安」は以下のようなものです。
収入が2千万円を超えると年末調整ができないため、サラリーマンの給与所得でも確定申告が必要になります。また、一定額を超える年金をもらっている高齢者の方も確定申告が必要です。ふるさと納税や医療費控除もあわせて、税理士に依頼する個人の方も多いでしょう。
税理士への依頼料は、事業所得の場合は記帳代行が必要だと10万円~、不動産所得の場合は内容にもよりますが5万~10万円ほど、不動産や株などの譲渡所得の場合は譲渡益の数パーセント…というように決めている税理士が多いと思います。
(3)5月:クライアントに法人が多い場合に忙しい時期
国税庁のホームページによれば、日本では法人全体の2割が3月決算です。これはあなたがイメージしていたより多いでしょうか?少ないでしょうか?
(参照:https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/hojin1997/11.htm)
3月決算の法人の場合、2か月後の5/31が法人税や消費税の申告期限になるため、会計事務所も繁忙期になります。
体感としては、担当する法人クライアントが20社あるとすれば、3~4社が3月決算に当てはまる印象です。そのため4月は一息つけるタイミングではありますが、コツコツ準備をしておかないと、5月の大幅な残業を覚悟しなくてはなりません。
■ 税理士の閑散期はいつ?
一般的に6~11月が、税理士の閑散期と言われています。
(1)閑散期も担当のクライアントによってまちまち
わたしが税理士法人で勤務していたころは、5・6月決算の大きなクライアントを持っていました。そのため、7・8月の申告に向け、5月を過ぎても夏までは忙しくしていました。
8月頭には税理士試験があるので、資格試験の勉強がしたいと思っている方は、5・6月決算のクライアントからはできるだけ担当を外してもらった方が賢明だと思います。(正社員であれば、なかなかそのように言い出せない場合もあるとは思いますが・・。)
(2)閑散期には業務改善を行う
また業務改善を推進している会計事務所では、この閑散期に改善点などを挙げて、次年度に向けた話し合いを行っています。
例えば年末調整に向けて顧問先から資料をもらう際に、漏れができるだけ発生しないように注意点を同封しよう、郵送物が多いのは混乱するのでできるだけペーパーレス化しよう、といった提案です。
特に年末調整のような入力作業が多い業務は、一人で負担しているとどこかでミスが発生したり、作業効率が悪くなったりしてしまいます。
わたしの知る、とある会計事務所では、入力作業は一切アシスタントに任せ、税務担当者はチェック作業やお客様とのやりとりに集中できるようにするなど、きちんと分業がされていました。このような事務所では進捗状況も管理されているため、どの担当者も効率よく仕事を進めることができ、意見交換が活発に行われていました。
こういった業務を改善する姿勢のある会計事務所では、職員も安心して仕事ができますので、離職率も低くなります。就職・転職の際には、年末調整業務をどのようにすすめているか聞いてみるのも、よい会計事務所を見極めるポイントになるでしょう。
■ 残業時間について
わたしの場合、過去に勤務していたいくつかの会計事務所の繁忙期の平均残業時間は月50時間程度でした。
最も忙しい時期で、1日の残業が4~5時間。ただし繁忙期でも、19時には帰れる時もありました(定時は18時半)。周りの会計事務所勤務の方をみても、残業時間は最も忙しい時期で月50~60時間ほどではないでしょうか。
また税理士試験の勉強をしたい場合は、閑散期である6月以降は残業なしでも大丈夫など、配慮してくれる会計事務所を探した方がよいと思います。
■ 休暇の取りやすさ
自分が担当するクライアントの件数や決算月によって、繁忙期が決まります。申告の少ない閑散期でないと休暇は取りにくいと思います。また、法人のクライアントは月末が申告期限ですので、最後の週に休暇を取ることも比較的難しいのではないでしょうか。
一方で、資格取得を推奨している会計事務所では、税理士試験前の1か月間はお休みをもらえるところもありました。有給休暇とは別に試験休みを設けていたり、子育て中の方に配慮した子ども休暇が取れるなど、会計事務所によってそれぞれ制度も違いますので、面接の際には確認してみるのもよいでしょう。
もちろん、試験前には勉強時間を確保するために絶対に残業はしない、など自分で時間を確保する覚悟も必要です。仕事が充実しているのは良いことですが、優先すべき試験勉強がお粗末になっては本末転倒です。
税理士を目指す方は、いかに効率よく仕事を終わらせるかを意識して、日々の業務を行いましょう。
■ 繁忙期を乗り切るためのポイント
会計事務所は一般的に冬~春が繁忙期になります。最後に、わたしが行っている繁忙期を乗り切るための工夫のしかたをお伝えいたします。働く人であれば、だれもが気をつけていることかもしれませんが、ご参考までに。
・体調管理
冬は手洗いを徹底し、移動時はマスクをしています。風邪予防によいといわれるマヌカハニーの喉飴を舐めたり、大根や生姜など免疫力を上げる食材を使った食事をとることを心がけています。
・運動不足解消
とにかくパソコンを一日中見ていることになるので、できるだけ簡単にできる運動を取り入れています。
1時間に1回程度、肩甲骨を動かす、鎖骨まわりを押すなど、上半身をほぐすことは肩こりに効果的です。また、スタンディングデスクなど、立ったまま作業ができるスペースなどがあれば、そういったものも時には活用してみましょう。
業務外の時間は、電車通勤であれば帰宅時に一駅分歩いてみるなど、少ない時間の中でも意識して体を動かしてみましょう。そして、疲れて帰宅したあとのお酒はほどほどに!
・プチストレス解消
デスク周りの小物などを新しく購入したりして、気分をあげるようにしています。
この記事が、いま繁忙期を迎えている方にとって、ちょっとでも気分転換になりましたら幸いです。
- 執筆者プロフィール
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定岡 佳代(さだおか かよ)
税理士
兵庫県出身。1980年生まれ。神戸大学工学部建設学科、神戸大学大学院自然科学研究科(土木工学)修了。
関西で技術職に就くも、結婚・出産・上京を機に専業主婦に。次男の妊娠中に簿記の勉強を始め、日商簿記3級・2級に独学で合格。そこから税理士試験に挑戦し、パート勤務、大学院通学と並行しながら3科目合格。立教大学大学院経済学研究科を2020年3月に修了。2021年4月、税理士登録。
硬式野球男子2人の母。「税理士を目指すママ」コミュニティで知り合った友人のママ税理士4人で、セミナーや対談など活動をしている。都内の税理士事務所、税理士法人で約10年の修行を経て、2023年8月に独立開業。
「お客様はピッチャー、私はキャッチャー。どんな球でも受け止める。」をモットーに、お客様との対話を大切にしている。