会計事務所への転職を検討されている方にとって、転職のタイミングは成功の鍵を握る重要な要素です。会計業界特有の繁忙期や求人動向を理解することで、より有利な条件で転職を実現することができるでしょう。
本記事では、会計事務所の繁忙期から転職に最適な時期、そして実際の転職方法まで、包括的に解説していきます。これから会計業界でのキャリアを築きたい方も、現在他業界にいらっしゃる方も、ぜひ参考にしていただければと思います。
会計事務所への転職時期はいつが最適?繁忙期と求人動向を解説

2025年8月27日 ジャスネットキャリア編集部
目次
■会計事務所の繁忙期はいつ?
会計事務所で働く上で避けて通れないのが繁忙期です。この時期の業務量は平常時の数倍になることも珍しくなく、残業や休日出勤が続くことがあります。転職を考える際は、この繁忙期を十分に理解しておくことが大切です。
(1)確定申告期間(1月〜3月)
会計事務所にとって最も忙しい時期が、確定申告期間である1月から3月です。 特に2月16日から3月15日までの1ヶ月間は、個人事業主や不動産所得者などの確定申告書作成に追われる日々が続きます。
この期間中、多くの会計事務所では朝早くから夜遅くまで業務に従事し、土日に出勤する可能性もあります。 クライアントから次々と届く資料の整理、申告書の作成、税務署への提出準備など、やるべき作業が山積みになります。
確定申告期間の特徴として、クライアントからの問い合わせや相談も急激に増加することが挙げられます。税制改正の影響や新しい控除制度について説明を求められることも多く、税務知識を常にアップデートしておく必要があります。
(2)法人税申告のピーク(5月)
3月決算の法人が多い日本では、5月が法人税申告のピークとなります。 法人税申告書は個人の確定申告書よりも複雑で、作成に時間がかかるため、会計事務所にとって再び繁忙期となるのです。
法人税申告業務では、決算書の作成から始まり、税務調整、別表の作成、そして最終的な申告書の完成まで、一連の流れを正確に処理する必要があります。特に中小企業の場合、会計処理が期中に適切に行われていないケースも多く、決算修正作業にも時間を要することがあります。
5月の繁忙期の特徴として、クライアント企業の経営者との打ち合わせが頻繁に発生することが挙げられます。決算内容の説明や税務上の判断について相談を受けることも多く、高度な専門知識とコミュニケーション能力が求められる時期でもあります。
(3)年末調整期間(12月〜1月)
年末調整業務は11月頃から準備が始まり、翌年1月の法定調書提出まで続く重要な業務です。 この期間も会計事務所にとって大きな繁忙期の一つとなります。
年末調整業務では、クライアント企業の従業員一人ひとりの給与所得について、正確な所得税額を計算し直す必要があります。扶養控除や保険料控除、住宅ローン控除など、様々な控除項目を適用するため、従業員から提出される書類の確認作業も膨大になります。
この時期の特徴として、クライアント企業との連携が特に重要になることが挙げられます。従業員への書類配布や回収、不備のある書類の再提出依頼など、細かなやり取りが頻繁に発生します。また、年末調整の結果として作成される源泉徴収票や支払調書などの法定調書も、翌年1月末までに税務署や市町村に提出する必要があり、スケジュール管理が重要になります。
■転職活動に適した時期はいつ?
会計事務所への転職を成功させるためには、業界の特性を理解した上で、適切な時期を選んで活動することが重要です。繁忙期を避けることで、面接対応や入社準備に十分な時間を確保でき、より良い条件での転職が期待できます。
(1)税理士試験後の8月〜9月
税理士試験が終了する8月から9月にかけては、会計事務所への転職に最も適した時期の一つです。 この時期は多くの理由から転職活動に有利な条件が揃っています。
まず、税理士試験受験者にとって、試験終了後は新しいキャリアステップを考える自然なタイミングです。試験勉強に集中していた期間が終わり、転職活動に専念できる時間的余裕が生まれます。また、試験結果を待つ間の期間を有効活用できるという意味でも、この時期の転職活動は理にかなっています。
会計事務所側の視点から見ても、8月から9月は採用活動を積極的に行う時期です。繁忙期である確定申告期間に向けて人員を確保したいという思惑があり、多くの求人が市場に出回ります。特に科目合格者や実務経験者に対する需要が高まる傾向があります。
(2)繁忙期前の11月〜12月
年末調整業務が本格化する前の11月から12月も、転職活動に適した時期として注目されます。 この時期は確定申告期間まで数ヶ月の余裕があり、新しい環境に慣れるための準備期間を確保できます。
11月から12月の転職活動には、年内入社を目指せるという利点があります。年内に入社することで、年末調整業務を通じて実務経験を積むことができ、翌年の確定申告期間により準備された状態で臨むことができます。特に未経験者にとって、段階的に業務の流れを理解できるのは大きなメリットです。
また、この時期は会計事務所が次年度の体制を固める時期でもあります。繁忙期を乗り切るための人員確保や組織体制の見直しを行うため、中途採用に積極的な事務所が多くなります。経験者はもちろん、やる気のある未経験者に対してもチャンスが広がりやすい時期です。
(3)繁忙期終了後の4月〜6月
確定申告期間が終了した4月から6月は、会計事務所にとって比較的余裕のある時期であり、転職活動にも適したタイミングです。 この時期の転職には、落ち着いた環境でスタートできるという大きな利点があります。
4月から6月の転職活動では、面接や入社手続きにじっくりと時間をかけることができます。繁忙期の疲労が癒えた状態の面接官と話ができるため、より深い内容での面談が期待できます。また、職場見学や業務内容の詳細な説明を受ける機会も多く、入社前に職場の雰囲気をしっかりと把握できます。
この時期に入社すると、次の繁忙期である年末調整や確定申告に向けて、十分な準備期間を確保できます。新しい環境に慣れながら、基礎的な業務から段階的に覚えていくことができるため、未経験者にとって理想的なスタートタイミングと言えるでしょう。
■会計事務所の求人動向
会計事務所への転職を成功させるためには、求人市場の動向を正確に把握することが欠かせません。業界特有の採用パターンや市場のトレンドを理解することで、より効率的な転職活動を展開できます。
(1)求人数が増える時期
会計事務所の求人には明確な季節性があり、特定の時期に求人数が大幅に増加する傾向があります。この波を理解することで、転職活動のタイミングを最適化することができます。
①年度末や年度初め
年度末や年度初めが狙い目となる理由は、多くの会計事務所が事業年度の区切りに合わせて組織の見直しを行うからです。 3月末で退職する職員の補充や、新年度からの事業拡大に向けた人員増強のため、4月から6月にかけて多くの求人が市場に出回ります。この時期は特に経験者採用が活発になり、条件の良いポジションも多く見つけることができます。
②企業の決算後
企業の決算後に求人が増加するのも、会計業界特有の現象です。クライアント企業の決算業務が一段落した後、会計事務所では次のサービス展開や組織体制の強化を検討します。特に5月から7月にかけては、法人税申告業務の繁忙期が終わった後の安定期であり、新しいスタッフを迎え入れる準備を整える事務所が多くなります。
③新卒採用の時期
新卒採用の時期もチェックが重要です。多くの会計事務所では4月入社の新卒採用を行いますが、同時に中途採用も活発化します。新卒者と中途採用者をバランス良く配置することで、組織の年齢構成や経験レベルを調整しようとする事務所が多いからです。また、新卒採用で計画した人数を確保できなかった場合の補完として、中途採用が増加することもあります。
(2)業界のトレンドと求人の変化
会計業界は近年、デジタル化の波と規制緩和の影響で大きな変化を迎えています。これらのトレンドが求人市場にも影響を与えており、求められるスキルや経験にも変化が見られます。
①クラウド会計ソフトの普及
クラウド会計ソフトの普及により、従来の記帳代行業務は自動化が進んでいます。その結果、入力作業よりも財務分析や経営コンサルティング能力を持つ人材への需要が高まっています。このトレンドを受けて、コンサルティング経験のある会計士や税理士、またはMBA取得者などの求人が増加傾向にあります。
②英語力の需要
また、国際化の進展により、英語力を持つ税務専門家への需要も拡大しています。海外展開を検討する中小企業の増加や、外資系企業の日本進出サポートなど、国際税務に対応できる人材は特に重宝されています。TOEIC800点以上の英語力と税務知識を併せ持つ人材は、他の候補者と差別化を図ることができるでしょう。
③事業承継サービスの拡大
事業承継支援サービスの需要拡大も、求人市場に影響を与えています。中小企業の後継者不足問題が深刻化する中、事業承継に関する知識と経験を持つ専門家への需要が急増しています。不動産評価や株式評価、相続税対策など、幅広い知識を要求される分野ですが、専門性を身につけることで高い付加価値を提供できる人材として評価されます。
■会計事務所への転職方法
会計事務所への転職を成功させるためには、効果的な転職方法を選択することが重要です。それぞれの方法には特徴があり、自分の状況や希望に応じて使い分けることで、理想的な転職先を見つけることができます。
(1)求人情報サイトの活用
求人情報サイトは転職活動の主要な手段となっています。会計業界専門の求人サイトから総合的な転職サイトまで、様々なプラットフォームを活用することで、幅広い選択肢の中から自分に合った職場を見つけることができます。
会計業界専門の求人サイトでは、税理士法人や会計事務所の求人が豊富に掲載されています。これらのサイトの利点は、業界特有の条件や要求スキルが詳細に記載されていることです。科目合格の有無、実務経験年数、対応可能な業務範囲など、専門的な条件での検索が可能で、効率的に希望に合う求人を見つけることができます。
総合転職サイトを利用する場合は、より幅広い企業の経理職や財務職の求人も同時に検索できるという利点があります。会計事務所以外の選択肢も検討したい方や、企業内会計士としてのキャリアも視野に入れている方には特に有効です。また、大手転職サイトでは応募管理機能やスカウト機能なども充実しており、転職活動の効率化を図ることができます。
(2)ハローワークの利用
ハローワークは公的な職業紹介機関として、無料で転職支援サービスを提供しています。会計事務所の求人も多数扱っており、特に地域密着型の中小事務所の求人を見つけるのに適しています。
ハローワークの利点の一つは、職員による個別相談を受けられることです。転職に関する悩みや不安を相談できるだけでなく、履歴書や職務経歴書の添削、面接対策なども無料で受けることができます。転職活動に不慣れな方や、初めて会計業界に挑戦する方にとって、心強いサポートとなるでしょう。
また、ハローワークでは地域の雇用情勢や労働市場の動向についても情報提供を行っています。会計事務所の求人動向や給与水準など、転職活動に役立つ情報を収集することができます。特に地方での転職を考えている方には、その地域の特性を理解する上で貴重な情報源となります。
(3)転職エージェントに相談する
転職エージェントは、転職希望者と企業の間に立って、最適なマッチングを支援するプロフェッショナルサービスです。会計業界専門のエージェントも多数存在し、業界特有のノウハウを活用した転職支援を受けることができます。
転職エージェントを利用する最大の利点は、非公開求人へのアクセスです。 多くの会計事務所は、重要なポジションや条件の良い求人を非公開で募集することがあります。 これらの求人は一般的な求人サイトには掲載されないため、エージェントを通じてのみアクセスが可能です。 特に管理職や専門性の高いポジションについては、非公開求人の割合が高くなる傾向があります。
また、転職エージェントは業界の動向や各事務所の内部事情についても詳しい情報を持っています。職場の雰囲気や離職率、キャリアアップの可能性など、求人票だけでは分からない重要な情報を提供してもらうことができます。これらの情報は、転職後のミスマッチを防ぐ上で非常に価値があります。
転職エージェントとの面談では、これまでの経験やスキル、転職への希望を詳しく聞き取り、個人に最適な転職戦略を提案してもらえます。履歴書や職務経歴書の作成サポート、面接対策、給与交渉の代行など、転職活動の全プロセスにわたってサポートを受けることができるのです。
■会計事務所・税理士法人の求人事例
以下は、経理・会計分野に特化した転職エージェント「ジャスネットコミュニケーションズ」に掲載された会計事務所・税理士事務所の掲載事例です。
「経営と相続の税金何でも相談」がミッションの会計士・税理士事務所
①仕事内容 |
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②応募条件 |
(税理士試験3科目以上の合格 あれば尚可) |
③想定年収 | 384万円 〜 480万円 |
【時差出勤あり!】IT・クラウドに強い会計事務所
①仕事内容 |
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②応募条件 |
事業会社での経理経験者もしくは会計事務所実務経験をお持ちの方。 |
③想定年収 | 350万円 〜 600万円 |
■会計事務所への転職成功事例
実際の転職成功事例を通じて、どのような準備や戦略が効果的だったかを学ぶことは、これから転職を目指す方にとって非常に参考になります。ここでは、異なる背景を持つ方々の成功事例を紹介します。
(1)未経験からの転職事例
田中さん(仮名)は、大学卒業後に一般企業で営業職として3年間働いていましたが、安定性と専門性を求めて税理士を目指すことを決意しました。働きながら税理士試験の勉強を続け、簿記論と財務諸表論の2科目に合格した段階で、会計事務所への転職を決断しました。
田中さんの転職活動は、税理士試験終了直後の8月に開始しました。実務経験がないことに不安を感じていましたが、科目合格という実績と税理士になりたいという明確な意志をアピールポイントとして活動を進めました。転職エージェントに相談し、未経験者歓迎の求人を中心に応募を行いました。
面接では、これまでの営業経験で培ったコミュニケーション能力と、継続的な学習への取り組み姿勢を強調しました。また、税理士資格取得への強い意欲を伝え、事務所の成長に貢献したいという気持ちを率直に表現しました。結果として、研修制度が充実した中規模の税理士法人から内定を獲得し、9月に入社することができました。
(2)経験者の転職成功事例
佐藤さん(仮名)は、小規模な会計事務所で5年間の実務経験を積んだ後、より専門性の高い業務に携わりたいと考えて転職を決意しました。これまでの経験では主に個人事業主の税務申告や中小企業の記帳代行を担当していましたが、事業承継や組織再編などの高度な税務業務に挑戦したいという思いが強くなったのです。
佐藤さんは、繁忙期終了後の4月に転職活動を開始しました。5年間の実務経験と税理士試験の4科目合格という実績を活かし、中堅規模以上の税理士法人を中心に応募を行いました。転職活動では、これまで担当したクライアントの規模や業種、対応した業務の詳細を具体的に整理し、自身の実務能力を客観的に示すことに力を入れました。
面接では、現在の職場での経験を踏まえつつ、なぜより高度な業務を求めるのか、そのためにどのような努力をしてきたかを具体的に説明しました。また、転職先で取り組みたい業務について詳しく調べ上げ、その分野での自身の成長ビジョンを明確に伝えました。複数の事務所から内定を獲得した佐藤さんは、研修制度の充実度や専門分野への取り組み状況を比較検討し、事業承継部門を持つ大手税理士法人への転職を決めました。
■まとめ
会計事務所への転職を成功させるためには、業界特有の繁忙期と求人動向を理解し、適切なタイミングで活動することが重要です。確定申告期間、法人税申告のピーク、年末調整期間という三つの主要な繁忙期を避けて転職活動を行うことで、より良い条件での転職が期待できます。
特に、税理士試験終了後の8月から9月、繁忙期前の11月から12月、繁忙期終了後の4月から6月は転職活動に適した時期として注目されます。これらの時期は会計事務所側も採用に積極的であり、面接や入社準備に十分な時間を確保できるという利点があります。
転職方法についても、求人情報サイトの活用、ハローワークの利用、転職エージェントへの相談など、複数のアプローチを組み合わせることで、より多くの選択肢の中から最適な転職先を見つけることができるでしょう。
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ジャスネットキャリア編集部
WEBサイト『ジャスネットキャリア』に掲載する記事制作を行う。
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