■なぜ経理職は「会社の心臓」と呼ばれるのか
経理部門はすべての企業の活動のあらゆる場面に関わります。営業が受注を獲得すれば売上の計上と請求書発行、製造部門が材料を購入すれば仕入れの記帳と支払い処理、人事が採用を行えば給与計算と社会保険の手続き。
すべての部署の経済活動が、最終的に経理という窓口を通過するのです。
ある中堅メーカーで10年以上経理を担当する女性社員は、経理は「会社のあらゆる部署と関わりを持ち」、「会社全体を俯瞰できる唯一の部署」と語ります。営業部門だけを見ていては気づかない全社的な収益構造の変化や、製造部門では把握しきれない資金繰りへの影響といった情報が数字となって経理に集約され、会社全体の健康状態が見えてくるのです。
この「会社のあらゆる部署と関わりをもつ
」「全体を俯瞰できる」という特性こそが、経理職の大きなやりがいの源泉となっています。
自分の処理した数字が決算書という形で会社の一年間を物語る。その決算書を基に経営陣が次の戦略を立てる。経理は単なる事務処理部門ではなく、経営判断を支える情報基盤なのです。企業の血液である資金の流れを管理し、健全な経営を下支えする。だからこそ「会社の心臓」と呼ばれるのです。
■現役社員が語る経理の本当のやりがいとは
経理で働く人々に「やりがいは何ですか」と尋ねると、驚くほど多様な答えが返ってきます。それは経理という仕事が、単純な数字の入力作業にとどまらない、奥深い専門性を持つ職種だからです。
(1)決算を締めたときの達成感
都内のIT企業で経理課長を務める男性は、「決算を締めたときの達成感」を第一に挙げます。一ヶ月、あるいは一年間の全取引を正確に処理し、すべての勘定科目が整合し、最終的な利益が確定する瞬間。そこには複雑なパズルを完成させたような充実感があると言います。特に
期末決算では、税理士や監査法人とやり取りしながら、会社の一年間を数字で総括する責任の重さと同時に、大きな仕事を成し遂げた満足感を味わえる
のです。
(2)自分の提案が経営に活かされる瞬間
小売業で経理を担当する若手社員は、「自分の提案が経営に活かされる瞬間」に最大のやりがいを感じると話します。日々の業務で気づいた無駄なコストや効率化できる業務フローを提案し、それが実際に採用されて会社の利益改善につながる。経理は数字を通じて会社の課題が最も見えやすい立場にいるため、改善提案の宝庫なのです。
自分の気づきが会社全体の業績向上に貢献できることに、大きな手応えを感じる機会があります。
(3)毎日確実に仕事を進められる安心感
パートタイムで経理補助として働く主婦は、「毎日確実に仕事を進められる安心感」を挙げました。経理には明確な締め日があり、やるべきことが決まっています。
その日の仕事を確実に終わらせ、月次処理を期日通りに完了させる。その積み重ねが会社の信頼につながり、自分の仕事の価値を実感できる。
育児と両立しながらでも、専門性を活かして社会に貢献できることに喜びを感じているのです。
(4)企業会計基準や原価計算基準を学び続ける知的刺激
また、ある上場企業の経理マネージャーは、「会計基準を学び続ける知的刺激」を強調します。経理は常に法改正や会計基準の変更に対応しなければならず、学び続けることが求められます。この
変化への対応力こそが専門性の証であり、自分のスキルが確実に積み上がっていく実感を得られるのです。
■なぜ経理のスキルは一生の財産になるのか
経理職のやりがいを語る上で欠かせないのが、キャリアの安定性と成長性です。一度身につけた経理のスキルは、業界や会社の規模を問わず通用する普遍的な専門性を持っています。
(1)経理のスキルは業界に依存しない
商社で経理キャリアをスタートさせ、その後メーカー、サービス業と業界を変えながら経理職を続けてきた女性は、「経理のスキルは業界に依存しない」と断言します。
扱う商品やサービスは違っても、会計処理の基本原則は同じです。簿記の知識、税務の理解、財務分析の手法は、どの会社でも必要とされます。結婚や配偶者の転勤など
ライフイベントで環境が変わっても、経理の経験があれば新しい場所で仕事を見つけやすい。
これは他の多くの職種にはない、経理ならではの強みです。
(2)キャリアの展望が描きやすい
経理スキルは段階的に高度化していくため、キャリアの展望が描きやすいという特徴もあります。最初は仕訳入力や請求書処理といった基本業務から始まり、月次決算、年次決算、税務申告、財務分析、連結決算と、徐々にステップアップしていけます。簿記3級から始めて2級、1級へ、さらに税理士や公認会計士といった高度な資格取得も視野に入れることができます。
努力が確実にスキルとして積み上がり、それが給与や役職に反映されていく明確なキャリアパスがある
のです。
(3)個人の人生設計にも役立つ
経理で培った数字を読み解く力、身につけた資格は、キャリア設計に役立ちます。経理職で身につけたスキルは、転職の場でも確実に活きてくる一生の財産なのです。
■どうすれば説得力のある志望動機が書けるのか
経理のやりがいを理解したところで、それをどのように志望動機に落とし込めばよいのでしょうか。採用担当者の心に響く志望動機には、いくつかの共通する要素があります。
(1)「なぜ経理業務なのか」という点を明確に
まず重要なのは、「経理業務なのか」という点を明確にすることです。
「経理の仕事がしたい」だけでは不十分で、職種として経理業務を選ぶ理由が必要です。
応募先企業の事業内容や経営方針を調べ、どう貢献できるかを具体的に結びつけることが必要です。
【例】
成長著しいベンチャー企業「急速に拡大する組織の経理体制の一員として、スピード感のある経営判断を数字面から支えたい」
地域密着型の中小企業「地域経済を支える企業の健全な財務基盤づくりに貢献したい」
(2)自分の経験や強みと経理のやりがいを結びつける
自分の経験や強みと経理業務に結びつけることです。前職での経験、保有資格、性格的な強みなどを具体的な場面にどう活かせるかを示すのです。
【例】
「前職の営業経験で培った社内調整力を活かし、各部署と円滑にコミュニケーションを取りながら正確な会計処理を進めたい」
「簿記2級で学んだ知識を実務で深化させ、将来的には財務分析や経営支援まで担える経理のプロフェッショナルを目指したい」
(3)「学び」と「意欲」のバランス
また、志望動機では
「学びたい」という姿勢と「貢献したい」という意欲のバランスが大切
です。一方的に学ばせてほしいというスタンスでは受け身に映りますし、過度に貢献を強調すると実力が伴わない印象を与えかねません。「御社の○○という事業展開に興味を持ち、その成長を経理面から支えながら、同時に自身も△△というスキルを磨いていきたい」というように、会社への貢献と自己成長を両輪として表現するのが理想的です。
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■志望動機の組み立て方
志望動機では、
長期的なキャリアビジョンと経営への貢献意欲、会社が求めている事項に対して正面から対応が可能なことを前面に出すことが重要
です。単なる記帳処理にとどまらない、より積極的な意欲を示します。
【例】
「将来的には月次・年次決算を一人で完結できる力をつけ、経営陣に対して有益な財務情報を提供できる経理担当者になりたい」
「管理会計の知識を深め、予算編成や業績分析を通じて経営戦略の立案にも関わっていきたい」
「週3日の時短勤務でも、その時間内で請求書処理や入金確認を確実に完了させ、経理業務の円滑な遂行に貢献したい」
「午前中の4時間という短時間勤務になりますが、仕訳入力の正確性には自信があり、ミスのない丁寧な仕事を心がけます」
会社の規模によっては、システム導入や内部統制の構築など、経理インフラの整備に関わる意欲を示すのも良いでしょう。
■志望動機に盛り込むべき具体的なやりがいの表現とは
採用担当者に響く志望動機を作るには、経理の抽象的なやりがいを、応募先企業の具体的な業務に結びつけて表現する必要があります。
重要なのは、これらの表現が単なる建前ではなく、あなた自身が本当にそこにやりがいを感じられるかどうかです。表面的な志望動機は面接で深掘りされた際にボロが出ます。
経理のどの側面に自分が魅力を感じるのかを深く考え、それを自分の言葉で表現することが、説得力のある志望動機につながる
のです。
(1)「会社全体を俯瞰できる」
「会社全体を俯瞰できる」というやりがいを志望動機に活かすなら、「御社のような複数事業を展開する企業で、各事業の収支を横断的に把握し、全社最適の視点から経理業務に取り組みたい」という表現が考えられます。事業部制を取っている会社や、複数の子会社を持つ企業への応募では特に効果的です。
(2)「数字を通じて経営を支える」
「数字を通じて経営を支える」という縁の下の力持ちがやりがいであれば、「正確な月次決算を迅速に行うことで、経営陣がタイムリーな意思決定を行える環境を作りたい」「コスト分析や予実管理を通じて、収益性向上のための具体的な提案ができる経理担当者を目指したい」など、経営支援の視点を盛り込みます。
(3)「専門性を高められる」
「専門性を高められる」というやりがいを表現するなら、「御社の○○という業界特有の会計処理を学び、その分野の専門家として成長したい」「連結決算や開示業務など、より高度な経理スキルを身につけられる環境で挑戦したい」といった形で、具体的なスキル名を挙げることで説得力が増します。
(4)「改善提案を通じて貢献できる」
「改善提案を通じて貢献できる」というやりがいについては、「経理業務の効率化に取り組んだ経験を活かし、御社でも業務プロセスの改善提案を行いながら、より付加価値の高い経理業務を実現したい」など、過去の実績と結びつけると効果的です。
■“経理未経験者”が志望動機で押さえるべきポイント
経理職に興味はあるけれど実務経験がない、という方も多いでしょう。未経験からの応募では、経験者とは異なるアプローチで志望動機を組み立てる必要があります。
(1)「なぜ今経理を志すのか」という動機を明確に
未経験者が最も重視すべきは、「なぜ今経理を志すのか」という動機の明確さです。単に「安定している」「事務職だから」といった消極的な理由では説得力がありません。経理に興味を持った具体的なきっかけを示すことが大切です。
【例】
「前職で予算管理に携わり、数字で物事を判断する面白さに気づいた」
「家計簿アプリで資産管理をする中で会計の基礎を学び、より専門的に学びたいと思った」
(2)未経験をカバーする努力の証を示す
また、未経験をカバーする努力の証を示すことも重要です。自主的な学習姿勢は高く評価されます。資格取得は最も分かりやすい努力の証であり、簿記資格は未経験者にとって必須と言えます。
【例】
「経理職を志してから独学で簿記2級を取得しました」
「自身の部署では、ルーチンな繰り返しが多いが、その中で何が問題かの自問を続けて課題を見つけ、実際の〇〇という業務改善に活かせました。」
「顧客との折衝で培ったコミュニケーション能力を、社内各部署との調整に活かせます」
(3)成長意欲を示す
未経験者は「学ばせてもらう」という謙虚な姿勢と同時に、「早期に戦力になりたい」という積極性のバランスも大切です。成長意欲と謙虚さを両立させた表現を心がけましょう。
【例】
「未経験ではありますが、すでに基礎知識として簿記2級を取得しているので、実務を通じて早期に独り立ちできるよう努力します」
「分からないことは積極的に質問し、一つひとつ確実に身につけていきたい」
■まとめ:あなただけの経理志望動機を完成させる
経理職のやりがいは、会社全体を俯瞰できる視点、あらゆる部署と接点を持つことができるコミュニケーションの機会、経営を数字で支える充実感、積み上げられる専門性、そして業界を超えて通用するスキルの獲得など、多岐にわたります。現役の経理担当者たちは、日々の業務の中でこれらのやりがいを実感しながら働いています。
志望動機に正解はありません。大切なのは、あなた自身が経理という仕事にどんな価値を見出し、どのように貢献したいと考えているかを、自分の言葉で誠実に伝えることです。他のサイトから借りてきた言葉ではなく、あなただけの経験と思いが詰まった志望動機こそが、採用担当者の心に響くのです。
この記事が、あなたの経理職への第一歩を後押しするきっかけになれば幸いです。心を込めた志望動機で、新しいキャリアの扉を開いてください。
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