POINT
1.税理士試験に独学で挑むにあたって、市販書籍だけでの学習は難しい。通信講座を使うべし2.独学にはメリット・デメリットがあり、時間管理の得意な人が適している
3.社会人にとっては、仕事と受験勉強の両立がポイントとなるが、通勤時間などのすきま時間だけで必要な学習量をこなすことは不可能
4.独学には強いメンタルも必要
5.難しい試験ではあるが、資格を取得することにより人生が一変する未来もありうる
税理士試験、独学で合格は可能?そのメリット、デメリットとは?
税理士試験の受験生の大半は大手の専門学校などを利用し、合格を目指します。しかし中には様々な事情により、独学での合格を目指す受験生もいます。
今回は、税理士試験における独学について見ていきましょう。
独学で勉強を行うには、どういった教材があるのでしょうか?
一般的に、独学には下記の方法があります。
(1)書籍を買って勉強する
(2)通信講座を利用する
このうち、市販の書籍だけで学習する方法は、他の国家試験と比較して税理士試験では難しいでしょう。
というのも、税理士試験の市販教材は、主に受験予備校が内部教材をベースに作成した問題集や理論集が中心であり、これらは受験予備校に通う受験生のサブ教材として活用することが主な制作目的です。そのため、学習内容のインプットができていなければ利用できません。
専門学校を利用できない環境においては、スタディング等の通信講座を利用することが現実的であるといえます。
・スタディング https://studying.jp/zeirishi/
独学のメリットには下記の点が挙げられます。
このため、自身で学習時間の管理ができる人は向いているでしょう。
これに対し、独学のデメリットには下記の点が挙げられます。
近年における税理士試験は、出題範囲も広く、ボリュームも多いため、試験時間内に取捨選択して問題を解かなければなりません。こうした受験ノウハウは受験予備校でなければなかなか身につかないこともデメリットといえるでしょう。
次に受験におけるハードルについて考えてみましょう。
社会人にとって最も重要な課題は、受験と仕事との両立です。
税理士試験では、各科目とも膨大な勉強時間が必要であり、かつ、試験内容事体も筆記試験であることから、通勤時間などのすきま時間だけで必要な学習量をこなすことも不可能です。そのため、勉強時間を確保することを前提に仕事の時間を調整することも検討しなければならない、厳しい試験なのです。
残業が多く、勉強にとりかかれないようであれば、社内での部署異動の申請や、試験が受けやすい会計事務所などへの転職を検討するなど、生活を試験環境中心に変えていくことが重要です。
税理士試験は難関試験である一方、あきらめなければいつかは合格できると言われる側面もあります。これは、試験勉強における暗記の比重が高く、これが多くの受験生が挫折する最大のポイントであるといえるからです。この膨大な勉強量をこなすには、モチベーションの維持が重要です。
また合否は相対評価なため、試験問題の内容にも影響されることから、模試の成績が良く、実力がある人が必ずしも有利であるといえない側面もあります。そのため、どんな状況においても最後まであきらめず、ワンチャンあることを信じて試験会場に向かう強いメンタルも必要です。
長い受験生活を挫折せず、強い精神力を持って最後まで走り抜けるには、勉強の環境を整えると同時に、たまには受験仲間と飲みに行ったり、余暇をつくってスポーツなど自身の好きなことを行うなどの息抜きも必要です。
しかし、合格した多くの受験生が人生を試験に捧げると言っても過言ではないほどの生活をしたうえで合格を勝ち取っていることは肝に銘じておきましょう。
これまで、受験期間における厳しさをお伝えしてきましたが、税理士試験の受験生はまさに「人生を賭けて」取り組んでいます。これは、そのくらい価値のある資格だとすべての受験生が認識しているからです。
今の労働環境が厳しいものであれば、フリーランスとして活躍する道も開けます。
また、転職の際も大手税理士法人だけでなく、一般企業のCFOを目指すなど、経理部署内部での上位ポジションも狙うこともできるでしょう。
税金はすべての人に関わるものであるため、税理士は自身の環境や目標に合わせて仕事を選択できる自由度の高さが最大の魅力です。資格を取得することにより、人生が一変する未来も待ち受けているのです。
この回のまとめとして、独学の是非について触れておきましょう。
独学を進めるためには、「スケジュール管理能力」と「情報収集力」が必要です。
受験予備校では、これらはカリキュラムに沿って行うことで、あまり意識することなく整いますが、独学ではこれを自分で行う必要があります。
特に情報収集に関しては、SNSをうまく利用するなど、自身で確かな情報源を確保することが重要です。
しかし、早期の合格を目指すのであれば、受験予備校のノウハウを得る方が安心であると言えます。努力は大切ですが、資格試験においては、まず、正しい方法を得ることが重要であり、そのうえで凄まじい努力を積み重ね、初めてそれが成し得るのです。
神奈川県出身。税理士。
早稲田大学在学中から地元会計事務所に勤務。その後、都内税理士法人、大手税理士受験対策校講師、大手企業経理部に勤務したのち2010年に小島孝子税理士事務所を設立。幅広い実務経験と、講師経験から実務家向けセミナー講師多数担当。「実務」と「教えるプロ」の両面に基づいたわかりやすい解説に定評がある。実務においては、街歩き、旅行好きの趣味を生かし、日本全国さまざまな地域にクライアントを持つ、自称、『旅する税理士』。
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