■人見知り税理士が陥りやすい悩み
人見知りな性格の税理士が、仕事の中でつまずきやすいポイントには、いくつか共通したパターンがあります。資格や専門知識は十分にあるのに、性格的な不安や遠慮がブレーキとなり、思うように成果につながらないケースも少なくありません。
ここでは、多くの人見知り税理士が抱えやすい代表的な悩みを見ていきましょう。
(1)下請け業務が中心で、収入が伸びにくい
独立はしたものの、営業が苦手で自分から顧客にアプローチできず、申告書作成などの下請け業務が中心になってしまう方は少なくありません。
仕事の正確さや専門性には自信があるのに、
といった理由から、忙しく働いているのに収入がなかなか増えない状態に陥りがちです。
(2)集客セミナーに参加しても成果につながらない
集客に悩み、意を決してセミナーに参加してみても、
「とにかく声をかけましょう」
「交流会では名刺交換をたくさん」
といった、積極性が前提の方法ばかりが紹介されることも多いものです。
これらは、人と話すのが得意なタイプには向いていても、人見知りの税理士にとっては負担が大きく、続けることが難しい方法でもあります。
結果として、「やはり自分には無理だ」と自信をなくしてしまう方もいます。
(3)提案できず、単価を上げられない悪循環
人見知りの方ほど、相手の反応を気にしてしまい、
「嫌われたらどうしよう」
「断られたら怖い」
と考えて、本当は伝えたいことを言えなくなりがちです。
その結果、値上げの相談ができなかったり、必要な提案を控えてしまったりして、気づけば低単価のまま仕事を続けている、という悪循環に陥ってしまうこともあります。
(4)「自分は税理士に向いていないのでは」と自己否定してしまう
周囲の税理士が、セミナーやSNSで活発に発信したり、人前で堂々と話している姿を見ると、
「自分とはタイプが違う」
「取り残されている気がする」
と、必要以上に落ち込んでしまうこともあるでしょう。
そして最終的には、「自分は税理士に向いていないのでは」と、自分の適性そのものを疑ってしまう方も少なくありません。
ですが、ここでお伝えしたいのは、
これらの悩みは、決して“失敗の証”ではなく、“次のステップに進むための大切なヒント”だということです。
人見知りだからこそ活かせる強みや、無理なく成果を出せる働き方は必ずあります。
それに気づけるかどうかで、これからの働き方は大きく変わっていくのです。
■なぜ“普通の営業法”はうまくいかないのか
人見知りの税理士が、独立後や集客の場面で最初につまずきやすい理由があります。
それは、
世の中にあふれている営業・集客ノウハウの多くが、「話すのが得意な人」を前提に作られている
という点です。
「頑張っているのに成果が出ない…」
「言われた通りにやっているのに、なぜかうまくいかない…」
と感じている方は、もしかすると
やり方そのものが、あなたの性格に合っていない
だけかもしれません。
(1)世間の営業法は「積極的な人」が前提
多くの営業ノウハウや集客セミナーでは、こんなスタイルが当たり前のように勧められます。
-
どんどん話しかける
-
熱量で相手を引き込む
-
自己アピールをしっかりする
-
迷わずグイグイいく
こうした方法は、確かに
人と話すことが好きな人、場の中心に立つのが苦でない人にとっては、とても有効なやり方です。
しかし、人見知りな税理士にとっては、これらの行動そのものが大きなストレスになってしまいます。
(2)それを人見知りが真似するとどうなるか?
人見知りの人が、無理をして「積極的な営業マン」を演じようとするとどうなるでしょうか。
-
自分らしくないので不自然になる
-
常に緊張して疲れ果ててしまう
-
心身ともに消耗して続かない
最初は頑張れても、どこかで限界がきます。
そして次第に、
「やっぱり自分には営業は無理なんだ…」
「税理士としてやっていけないのかもしれない…」
と、
本来は必要のない自己否定へとつながっていく
のです。
(3)うまくいかない理由は“能力不足”ではない
ここで、ぜひ知っておいてほしい大切なことがあります。
それは――
うまくいかないのは、能力がないからではありません。
ただ単に「向いていない方法」を選んでいるだけなのです。
静かな性格の人には、静かなやり方があります。
話すのが得意な人には、話すことを活かした営業法があります。
文章を書くのが得意な人には、言葉で信頼を積み重ねる方法があります。
つまり、
大切なのは「誰かの成功法則」を真似ることではなく、「自分の性質に合った集客・営業スタイル」を選ぶことなのです。
これこそが、人見知り税理士が無理なく成果を出すための、
最初の重要なカギ
になります。
■ 成功のカギは「得意の再発見」
「人と話すのが苦手だから、税理士として活躍するのは難しいのでは…」
「人見知りの自分に、営業や顧客対応は向いていないのでは…」
そんな不安を感じている税理士の方は、決して少なくありません。
しかし実は、コミュニケーションが得意でなくても、人見知りであっても、
その人ならではの強みは必ずあります。
むしろ人見知りの方ほど、派手さはないけれど、税理士としてとても価値の高い力を自然と身につけていることが多いのです。
大切なのは、その強みに自分自身が気づき、活かすこと。
その第一歩が「得意の再発見」です。
(1)人見知り税理士が持っている「静かな強み」
人見知りの税理士には、次のような強みが備わっていることがよくあります。
・丁寧でわかりやすい資料が作れる
細かな部分まで注意が行き届くため、説明が整理された資料になりやすく、
「とても分かりやすい」「安心して読める」と評価されやすい特徴があります。
・相手の話をじっくり聴ける
税務相談で最も大切なのは、「この人に安心して話せるかどうか」。
人見知りの方は自然と“聴く姿勢”が身についているため、お客様が本音を話しやすくなります。
・深く考えられる分析力がある
数字の背景や理由まで丁寧に考えられる力は、大きな強みです。
表面の数値だけでなく、リスクや改善点まで読み取れる姿勢が、信頼につながります。
・淡々とした対応が安心感を生む
感情を出しすぎず、冷静に判断できる姿勢は、
「この先生なら落ち着いて相談できる」という安心感につながります。
(2)自分の“得意”を見つけるヒント
こうした強みは、自分では当たり前すぎて気づけないことも多いものです。
そこで、次のような視点で振り返ってみてください。
・
これまでに褒められたことを思い出す
「資料が丁寧ですね」
「落ち着いていて安心します」
そんな言葉は、すべてあなたの“得意”のヒントです。
・
興味のある分野を深掘りする
インボイス制度や電子帳簿保存法、経理の効率化など、
「調べるのが苦にならない分野」は、自然と専門性が育ちやすい領域です。
・これまでに褒められたことを思い出す
「資料が丁寧ですね」
「落ち着いていて安心します」
そんな言葉は、すべてあなたの“得意”のヒントです。
・興味のある分野を深掘りする
インボイス制度や電子帳簿保存法、経理の効率化など、
「調べるのが苦にならない分野」は、自然と専門性が育ちやすい領域です。
人見知りは、決して不利な性格ではありません。
自分の得意に気づき、そこに光を当てることで、
あなたらしい税理士としての活躍の道は、必ず見えてきます。
■人見知りに向いている税理士業務・働き方の例
「人と話すのが苦手だから、税理士としての活躍の幅が狭まってしまうのでは…」
そんな不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし実際には、
人見知りだからこそ力を発揮できる業務や働き方はたくさんあります。
無理に“話し上手な税理士”を目指す必要はありません。
自分の特性に合ったフィールドを選ぶことで、ストレスを減らしながら、安定して仕事を続けることができます。
(1)自分に合った働き方を探してみる
まずは、
「どんな業務なら安心して取り組めるか」
「どんな形なら長く続けられそうか」
という視点で、働き方を見直してみましょう。
人見知りの税理士に向いている代表的な業務には、次のようなものがあります。
・書面添付・税務調査対応の資料作成
資料整理や事実確認、正確な文章作成など、丁寧さが求められる分野です。
派手なやり取りよりも、正確さや信頼性が評価されるため、人見知りの方に向いています。
・インボイス・電子帳簿保存法などの「調べてまとめる」業務
新制度は情報が複雑で、顧客も不安を感じやすい分野です。
調べた内容をわかりやすく整理して伝える役割は、大きな価値となります。
・オンライン完結型の税務サポート
資料のやり取りや相談をオンラインで行うスタイルなら、対面が苦手でも無理なく対応できます。
自分のペースで進められる点も大きなメリットです。
・ノウハウ販売・講座・相談業
文章や動画を使って知識を伝える方法なら、対面よりも緊張せずに発信できます。
人と話すのが苦手でも、知識そのものが価値になる働き方です。
(2)初回面談をラクにする工夫
「初回面談が一番緊張する…」
これは、多くの人見知り税理士が感じている悩みです。
ですが、少し工夫するだけで、緊張は大きく軽減できます。
-
話す内容をあらかじめ
テンプレ化
しておく
-
資料を画面共有
しながら説明する
-
質問リストを用意
して、相手の話を中心に進める
-
「話す」よりも「
見せる・聴く
」を意識する
これだけでも、初回面談の心理的な負担はかなり軽くなります。
(3)スムーズに回るメール・チャットの活用
対面や電話が苦手でも、
メールやチャットは人見知り税理士の大きな武器
になります。
文章なら、落ち着いて考えながら伝えることができるからです。s
-
丁寧で落ち着いた文章を心がける
-
よく使う文章は
定型文として保存
しておく
-
返信は「
24時間以内
」など、自分なりのルールを決める
-
次の行動が分かる一言を添える
これらを意識するだけで、相手の安心感も、自分の負担も大きく変わってきます。
人見知りは、働き方を選べば十分に強みになります。
無理に苦手なやり方に合わせるのではなく、
自分に合ったスタイルで、安心して続けられる道を選んでいきましょう。
■
「話せること」より「聞けること」が大事
税理士に求められているのは、
実は「明るくて話が上手な人」だけではありません。
企業や個人のお客様が本当に求めているのは、
「この人になら安心して相談できる」
そう思える存在かどうかです。
お金や経営の悩みは、とてもデリケートで本音が出にくいテーマ。
だからこそ、安心して話せる相手かどうかが、何よりも重視されるのです。
(1)人見知りは「聞き上手」になりやすい
人見知りで緊張しやすい人ほど、
実は相手の話を丁寧に受け取ろうとする傾向があります。
-
相手の表情や声のトーンに気づける
-
言葉の裏にある不安や迷いを感じ取れる
-
途中で遮らず、最後まで話を聞ける
これは、専門家として非常に価値の高い資質です。
「しっかり話を聞いてもらえた」と感じたお客様は、
自然と心を開き、信頼を寄せてくれるようになります。
(2)無理に明るく振る舞う必要はありません
「営業だから明るくしなければ」
「元気なキャラを演じないといけない」
そう無理をしていませんか?
キャラを作って接するのは、想像以上に疲れますし、
何より長く続けることができません。
むしろ、あなたの
落ち着いた雰囲気、誠実な姿勢、丁寧な話し方
こそが、
お客様にとっては大きな安心材料になるのです。
無理に変わらなくても大丈夫。
あなたらしさを大切にすることが、結果的に信頼に直結します。
(3)「聞く力」こそが信頼構築の最大の武器
「聞く力」があると、次のような強みが生まれます。
-
相手の本当の悩みを深く理解できる
-
表面的な要望だけでなく、本質的な課題が見えてくる
-
提案内容がズレにくく、満足度が高くなる
-
お客様の中に「この人に任せたい」という気持ちが自然に育つ
これは、単に話が上手な営業よりも、
ずっと安定した信頼関係を築く力です。
(4)人見知り税理士だからこそ勝てる「聴く営業」
これからの時代、
ゴリゴリと売り込む「話す営業」よりも、
相手に寄り添う
「
聴く営業
」
が求められています。
そしてこのスタイルこそ、
人見知りの税理士が最も力を発揮できる勝ち方です。
無理に話そうとしなくていい。
無理にキャラを作らなくていい。
あなたの「聞く力」は、すでに大きな武器なのです。
■人見知りは弱点ではなく“特徴”でしかない
人見知りは、決して欠点ではありません。
無理に変える必要も、克服しようと頑張る必要もないのです。
大切なのは、こうした考え方に切り替えることです。
「向いていない方法を手放し、自分に合ったやり方に変えればいい」
これだけで、仕事の取り組み方も、気持ちの負担も、大きく変わっていきます。
あなたが持っている
これらは、誰にとっても当たり前のものではありません。
むしろ、必要としている人にとっては、
かけがえのない価値
になる力です。
(1)自分らしいスタイルで十分に戦えます
無理に派手に話さなくてもいい。
必要以上に明るく振る舞う必要もありません。
静かでもいい。
淡々としていてもいい。
落ち着いた対応だからこそ、安心できるというお客様もたくさんいます。
世の中には、
「にぎやかな税理士」だけでなく、
「静かで信頼できる税理士」を求めている人も確実に存在しています。
あなたは、あなたのままで、十分に戦えるのです。
(2)得意に光を当てれば、必ず顧客はついてくる
あなたが当たり前にやっている
それらの“静かな強み”を必要としている人は、必ずいます。
万人に好かれる必要はありません。
あなたの専門性と安心感を、本当に必要としている人に届ける。
それだけで、仕事は自然と続いていきます。
■最後に ― あなたの静かな力は、必ず誰かを救う
人見知りの税理士が活躍する時代は、もうすでに始まっています。
これまで「弱み」だと思っていたあなたの性質は、
実は
「選ばれる理由」になる大切な特性
なのです。
無理に変わろうとしなくて大丈夫。
無理に誰かのマネをしなくても大丈夫。
あなたのままで、
あなたのペースで、
しっかりと価値を届けることができます。
あなたの静かな力を必要としている人は、
今この瞬間も、どこかであなたのような税理士を探しています。
その人にきちんと届く働き方を、
これから選んでいきませんか。
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- 執筆者プロフィール
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真鍋 良得(まなべ りょうえ)
税理士・心理カウンセラー
国税調査官として税務署に29年間勤務し、個人事業主の税務調査、国際取引調査、審理事務などに従事。
2020年に税理士事務所を開業し、個人事業主専門の税理士としてオンラインを活用した起業支援や確定申告のサポートを行っている。
一方で、心理カウンセラー・メンタルトレーナーとしても活動し、経営者や発達障害の子どもを持つ親へのメンタルサポート、コミュニケーション指導を行う。
心とビジネスの両面から人と組織の成長を支援し、「人が育つ環境づくり」をライフワークとしている。
全米NLP協会公認トレーナー、一般社団法人心屋カウンセリング協会代表理事、発達障がい支援センター代表。