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税理士のキャリア戦略① ~税理士法人編/専門性を磨く王道キャリア~

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2025年11月28日 ジャスネットキャリア編集部

税理士の資格を取得して、税理士法人や会計事務所で知識を生かして働く。最もオーソドックスな働き方であり、学んだ知識を存分に生かす場に恵まれれば、業務を通じた成長や活躍、それに伴う給与や待遇の向上も計算しやすい働き方と言えるでしょう。

では、実際にそうした働き方の中で得られるものは何なのか。働く環境や規模の違いによって、どんな点が変わるのか。税務会計業界の就職・転職支援に20年以上携わってきた、採用コンサルタントが分析してみました。

目次

■高い専門性を磨けるBig4税理士法人での勤務

税理士のキャリアパスとして最も専門性を追求できるのが、Big4税理士法人への転職です。

Big4とは 「デロイトトーマツ税理士法人」「EY税理士法人」「KPMG税理士法人」「PwC税理士法人」 の4社を指し、世界的な会計ファームの日本法人として圧倒的な規模と実績を誇ります。

1)Big4で携われる業務の特徴

Big4税理士法人の最大の特徴は、 国際税務や大企業の高度な税務案件に携われる 点にあります。通常の中小企業向け税理士業務とは一線を画す場面が多いのが特徴的です。

  • クロスボーダー取引における移転価格税制
  • タックスヘイブン対策税制
  • 国際的な組織再編
  • 大規模なM&A案件の支援業務
  • 上場企業の税務コンプライアンス業務 など

このように複雑かつ一般の税理士事務所では経験しがたい高度な業務に従事できます。

2)Big4でのキャリアパスと働き方

Big4でのキャリアは、スタッフからシニアスタッフ、マネージャー、シニアマネージャー、ディレクター、パートナーといった昇進ルートが確立されています。各段階で求められる役割が明確であり、プロジェクトマネジメント能力やクライアントとの折衝能力を段階的に身につけられる環境が整っています。

働き方については、繁忙期と閑散期の波が大きいという特徴があります。決算期や申告期には深夜残業が続くこともありますが、近年は働き方改革の流れを受けて、在宅勤務制度やフレックスタイム制度の導入が進んでいます。また全国に拠点があるため、転勤の可能性がある点も考慮しておく必要があります。

3)Big4で得られる年収は…

年収面でも、Big4は税理士業界の中でトップクラスの水準を誇ります。20代前半のスタッフクラスでも、下記の金額程度からスタートとなります。

  • スタッフ:年収450万円~600万円
  • シニアスタッフ:年収600万円~800万円
  • マネージャークラス:年収800万円~1,000万円以上

さらにディレクターやパートナーへと昇進すれば、年収1,500万円以上も視野に入ります。勤務10年で年収1,000万円を突破するケースも珍しくなく、実力次第でさらなる高年収を目指すことが可能です。

4)入社に際して求められるスキル等

Big4への転職において重視されるのは、税理士資格に加えて英語力と専門性の高い実務経験です。最低でも税理士試験3科目以上の合格が求められ、5科目合格者であればより有利になります。

また国際案件を扱うことから、ビジネスレベルの英語力は必須条件となります。TOEICスコアで言えば、最低でも700点以上。 理想では800点以上が目安 です。さらに転職前にM&Aや組織再編、国際税務に関わった経験があれば、選考において大きなアドバンテージとなるでしょう。

5)Big4での勤務経験がもたらす将来の選択肢

Big4での勤務経験は、その後のキャリアにおいて大きな強みとなります。「Big4出身」という経歴は業界内で高く評価され、その後のキャリアチェンジにおいて有利に働きます。

実際、 Big4から事業会社の税務部門やCFO候補、外資系コンサルティングファーム、FASなどへ転職するケースは多く、年収をさらに上げながらキャリアアップすることも可能 です。また独立開業を目指す場合でも、Big4での経験と人脈は大きな財産となります。

■中堅・大手税理士法人で幅広い経験を積む

Big4以外にも、国内独立系の大手・中堅税理士法人は魅力的な選択肢です。職員数が数十名から数百名規模のこれらの税理士法人では、Big4ほどの国際的な案件は少ないものの、幅広い業務経験を積むことができます。

1)川上から川下まで、幅広い業務経験を得られる

中堅・大手税理士法人の特徴は、法人税務から資産税、相続税、事業承継支援まで、税務業務を 総合的に経験できる 点にあります。記帳代行や決算業務といった基本業務から、税務申告、税務相談まで一貫して携わることができ、税理士としての基礎力を固めるには最適な環境と言えるでしょう。

またクライアント層も、中小企業から上場企業まで幅広く、様々な業種の税務に触れることができます。

2)収入と労働量のバランスがとりやすい

年収については、 未経験者で年収400万円前後からスタートし、経験を積むことで500万円から800万円程度が一般的な水準 です。実力と経験次第では年収1,000万円台も視野に入りますが、事務所による差が大きいのが実情です。

Big4と比較すると平均年収はやや低めですが、その分ワークライフバランスを重視できる事務所も多く、税理士試験の受験勉強を継続しながら働きやすい環境が整っている場合もあります。

3)各事務所の特徴を捉えることで、キャリアビジョンも描きやすく

転職のポイントとしては、 事務所の専門分野や規模をしっかりと見極める ことが重要です。資産税に強い事務所、医療法人や社会福祉法人など特定業界に特化した事務所、IPO支援に力を入れている事務所など。それぞれに特色があります。

自分がどの分野の専門性を高めたいのか、将来的にどのようなキャリアを築きたいのか。こうしたキャリアビジョンを明確にして職場探しを行うことで、よりダイレクトに理想のキャリアへ近づくことも可能です。

またさらに、Big4よりも業務の縦割りが緩く、メインで築きたいキャリア以外にも、比較的横断的なキャリアを築けます。こうした点も、中堅~大規模の事務所に勤務する大きなメリットです。

■個人事務所・小規模法人でクライアントに寄り添う

職員数が10名以下の個人税理士事務所や小規模税理士法人も、税理士の重要な転職先の一つです。大規模法人とは異なり、少数精鋭で運営されているため、一人ひとりの裁量が大きく、若手でも責任ある仕事を任されやすい環境です。

1)経営者や事務所代表との距離が近い職場

小規模事務所の魅力は、クライアントとの距離が近く、深い信頼関係を築きながら長期的に企業の成長を支援できる点にあります。記帳から決算、税務申告、経営相談まで、一つのクライアントに対して総合的なサービスを提供するため、 税理士として土台となる総合力を磨きやすい環境 です。

また所長との距離も近いため、将来的に独立を考えている方にとっては、 事務所経営のノウハウを直接学べる貴重な機会 となります。独立開業を行う税理士の中には、元々Big4や大規模法人で勤務したのち、開業前の数年を小規模事務所で修行をし、開業税理士としての思考法や動きを学ぶ人も多いようです。

2)高収入を目指すよりも、将来のキャリアビジョンを重視

年収については、中小税理士法人と同様に 初任給は月額20万円程度、年収で350万円から400万円程度からのスタートが一般的 です。経験を積んでも年収600万円から800万円程度で頭打ちになることも多く、高年収を追求するには限界があります。

ただし事務所によっては、将来的に事業承継を視野に入れた採用を行っているケースもあり、長期的な視点でキャリアを考える価値はあります。開業をしないにしても、税理士として「経営者の身近な相談役」という業務スキルを磨きやすい環境です。

3)小規模事務所に入社する前、気を付けるべきこと

転職時に注目すべきポイントは、所長税理士の人柄と経営方針、教育体制の有無、そして顧問先の質と安定性です。小規模事務所の場合、所長の考え方が事務所の雰囲気や働き方を大きく左右します。面接時には、所長と直接話す機会を設けてもらい、税務に対する考え方や人材育成への姿勢をしっかりと確認することが重要です。

■まとめ

規模やそれぞれが持つ得意分野、専門性などによって、事務所ごとに独自の魅力があります。それに応じて、転職を希望者に求められるスキルや年収水準も大きく異なる点に注意が必要です。

ただ、規模や携わる業務内容、求められる専門性などは異なれど、税理士として「最もオーソドックスに力を発揮できる」環境であることは間違いありません。まずは税務の土台をしっかりと築き、将来的に異なる業種への転職をする、という道もあるでしょう。多くの先輩たちが、その道を辿った結果によって今日、税理士の活躍の場が大きく広がったとも言えるでしょう。

「税務を追求したい人」ばかりでなく、「応用の前にまず基礎を」と考える方にとっても、キャリアのファーストチョイスに選んでも良いかもしれません。

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執筆者プロフィール

ジャスネットキャリア編集部

WEBサイト『ジャスネットキャリア』に掲載する記事制作を行う。
会計士、税理士、経理パーソンを対象とした、コラム系読み物、転職事例、転職QAの制作など。

編集部メンバーは企業での経理経験者で構成され、「経理・会計分野で働く方々のキャリアに寄り添う」をテーマにしたコンテンツ作りを心がけていてる。

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