会計事務所に就職したいと思った時、「一般企業とはどんなところが違うの?」「評価される志望動機は?」「面接対策はどうしたらいいのだろう」と不安に思うかもしれません。
税理士や公認会計士などの資格をもっている人や、会社を経営している人など以外の一般の方は、あまり会計事務所に馴染みがないため無理もないでしょう。
この記事では、会計事務所の志望動機の作り方や例文、面接対策までエージェントが徹底解説いたします! ぜひ参考にしてください。
■ 会計事務所の仕事内容とは?
会計事務所の仕事は一言で言うと、「会社の数字を扱うプロフェッショナル」として企業や個人事業主をサポートすることです。しかしその業務内容は非常に幅広く、事務所の規模や顧問先の業種・業態、また担当業務によっても日々の仕事内容が異なります。
<主な業務内容>
● 記帳代行・仕訳業務
会計事務所の基本業務とも言えるのが記帳代行です。クライアントから預かった領収書や請求書、通帳データなどをもとに、仕訳帳や総勘定元帳を作成していきます。小規模企業では帳簿を自社で管理できないケースが多く、会計事務所がその記録を代行することで、正確な会計管理を実現しています。
● 決算業務・申告書の作成
年に1度、あるいは四半期ごとに訪れる決算期には、収益と費用を集計し、損益計算書・貸借対照表などの決算書を作成します。決算に基づいて法人税・所得税・消費税などの申告書を税務署に提出することも会計事務所の重要な仕事の一つです。
● 経営アドバイス・税務相談
最近では記帳代行だけでなく、経営面のアドバイスを行う「コンサル型会計事務所」も増えています。資金繰り、融資相談、勤怠管理ソフトやクラウド会計等業務ツール導入のアドバイスなど、経営者の悩みに寄り添った提案が求められます。また、税制が毎年改正されるため、常に最新情報を把握してアドバイスできる知識も必要です。
● 税務調査の対応
税務署による調査が入った際には、クライアントとともに対応を行います。過去の帳簿や領収書のチェック、税務署との交渉など、実務経験が必要とされる業務です。
●サポート業務やパート業務も重要
正社員や税理士の補助として、データ入力・ファイリング・郵送手配・来客対応などのサポート業務も欠かせません。細かい仕事に丁寧に取り組める人材は、事務所内でも重宝されます。
■ 会計事務所の志望動機を作成する3つのポイント
採用担当者が「この人と一緒に働きたい」と思える志望動機には、いくつかの共通点があります。特に会計事務所の志望動機では、「なぜこの業界か」「なぜこの事務所か」「どう貢献するか」の3点を意識することが重要です。
(1)なぜ会計業界を選んだのか?を明確に
まずは「数ある業界の中でなぜ会計業界を選んだのか」という理由を明確にすることが重要です。ここで大切なのは、自分の価値観や経験に紐づいた「納得感のある動機づけ」です。
たとえば以下のような動機が挙げられます。
自己分析を通じて、「なぜ会計に惹かれたか」を具体的なエピソードとともに伝えることで、説得力が増します。
(2)なぜその会計事務所を選んだのか?に具体性を持たせる
次に大切なのは、「なぜこの事務所に応募するのか」という点です。会計事務所は日本全国に数えきれないほどあります。その中で、なぜその1社なのかを説明できることが他の応募者と差をつけるポイントになります。
例えば以下のような観点が参考になります。
- 「顧問先の業種に関心がある(例:医療特化、飲食業専門など)」
- 「若手にも裁量が与えられる風土が魅力」
- 「記帳代行にとどまらず顧問先の経営課題に寄り添った支援を行っている点に惹かれた。」
- 「未経験者でも実務を身につけ徐々に責任ある仕事を任せてもらえる環境に魅力を感じた。
単に「雰囲気が良さそうだから」では弱いため、HPやブログ、SNS、口コミなどから具体的な情報を収集することをおすすめします。
(3)自分の強みをどう活かして貢献するか
最後に必ず入れておきたいのが、「自分がどのように貢献できるか」という視点です。特に未経験者の場合、「何ができるか」よりも、「新しい業務に対してどのような姿勢で取り組み、即戦力となるためにどのように成長していくか」を伝えることが評価につながります。
例えば、
- 「地道で正確な作業が得意で、入力業務などで貢献できる」
- 「人とのやりとりが好きなので、クライアント対応でも信頼関係を築ける」
- 「実務を通じて知識と経験を積み重ねる努力を怠らず、長期的に事務所に貢献する意欲がある」
採用側が「この人なら長く働いてくれそう」「将来性がある」と感じられるように意識して構成しましょう。
■ 気をつけて!志望動機を書く上での注意点3つ
志望動機は、履歴書・職務経歴書・面接すべてにおいて非常に重要な要素です。しかし、伝え方を誤るとマイナス評価につながってしまうこともあります。ここでは、会計事務所への志望動機を書く上で注意すべき3つのポイントを詳しく解説します。
(1)抽象的な表現は避け、具体的なエピソードを入れる
「数字が得意です」「やりがいを感じます」「貴事務所の理念に共感しました」といった表現は一見好印象に見えますが、内容が抽象的すぎると他の応募者との差別化が難しく、印象に残りにくいものです。
特に会計業界では、論理的で具体的な思考が求められる傾向があるため、志望動機もその基準に沿う形で書くことが重要です。
例えば、
- 「大学時代に簿記2級を取得したことで、数字を扱う仕事に魅力を感じた」
- 「前職で予算管理を担当する中で、利益とコストの関係性に強い興味を持った」
- 「実家が中小企業を経営しており、会計の重要性を間近で感じていた」
このように、自分自身の経験や背景に基づいた具体的な理由やストーリーを含めることで、読み手の共感を得やすくなり、説得力が大幅に増します。
(2)転職理由と志望動機に一貫性を持たせる
転職活動においては、「なぜ転職したいのか」という点と、「なぜこの職場を選んだのか」の整合性が非常に重要です。この2つに一貫性がないと、「なんとなく転職したい人」という印象を与えてしまい、真剣度が疑われてしまいます。
【NG例】
転職理由:残業が多すぎた
志望動機:貴社は業務量が多いと聞いておりますが、成長のため挑戦したい
このような矛盾があると、「本当にやる気があるのか?」という印象を与えてしまいます。改善策としては、退職理由をポジティブに置き換えながら、志望動機とつなげることです。
【改善例】
「前職では一般事務として幅広い業務を経験しましたが、より専門的な分野でスキルを深めていきたいと考え、会計業界への転職を決意しました。貴事務所は税務だけでなく経営支援にも力を入れておられ、私の成長意欲と方向性が一致していると感じています。」
このように、「前職の経験→気づき→志望理由」という流れを意識すると、自然で説得力ある文章になります。
(3)他社でも使い回せる内容になっていないかチェック
特に複数の会計事務所に応募する際に陥りがちなのが、「どの事務所にも通用するような志望動機」を書いてしまうことです。たしかに効率的ではありますが、採用担当者は何百枚もの応募書類を見ているため、「あ、この人いろんなところに同じこと書いてるな」とすぐに分かってしまいます。
【避けるべき汎用表現の例】
- 「業界に興味があり、貴社で経験を積みたいと考えました」
- 「御社の企業理念に共感しました」
- 「会計の専門知識を身につけたいと考えています」
これらを避けるために、事務所の特長をしっかり調べて、自分の言葉で語ることが大切です。
【よい例】
- 「地元企業との長期的な関係を大切にしている点に共感し、私も地元で中小企業を支援する税務の仕事に携わりたいと考えています」
- 「クラウド会計やAIの活用など、時代に即した取り組みをされている貴所で、最新技術を取り入れた会計サービスに携わりたいと思いました」
このように、「この事務所でなければならない理由」を具体的に盛り込むことで、本気度と情報収集力が伝わりやすくなります。
■ 会計事務所の志望動機例文【未経験者・税理士科目合格者】
① 未経験者の志望動機例文
私はこれまで一般事務として、データ入力やファイリング、請求書作成などの業務に携わってまいりました。その中で数字を扱う作業や、正確さが求められる業務に対して自然とやりがいを感じるようになり、「もっと専門性の高い分野でキャリアを積みたい」という想いが強まりました。
特に会計や税務は、企業活動の根幹を支える大切な分野であり、今後の社会においてますます需要が高まると考えています。簿記2級の勉強を進める中で、会計の世界の奥深さや仕組みに対する関心が高まり、実務を通じて知識を深め、専門性を高めていきたいと考えるようになりました。
貴事務所は地元密着型の支援を行っておられ、私も地元企業に貢献したいという想いと一致していると感じています。未経験ではありますが、これまでの業務で培った正確さやスピード感を活かし、1日も早く戦力として貢献できるよう誠実に取り組む所存です。
② 税理士科目合格者の志望動機例文
私は税理士試験において、簿記論・財務諸表論・法人税法の3科目に合格しており、現在は相続税法の勉強を進めております。税理士としての将来を見据え、実務経験を積みながらスキルをさらに高めたいと考え、会計事務所への就職を志望いたしました。
貴事務所は中小企業の支援に特化されており、税務顧問だけでなく、経営面でのコンサルティングや事業承継対策などにも力を入れておられる点に大変魅力を感じております。特に、複数の分野にわたる案件を実務で経験することで、幅広いスキルを習得できる環境が整っている点は、税理士を目指すうえで理想的だと考えております。
今後は、学んできた知識を現場でのアウトプットに活かすとともに、クライアントに信頼される存在となれるよう、責任感を持って日々努力してまいります。
■ 会計事務所の転職成功事例
転職活動において最も参考になるのが、実際に転職に成功した人たちのリアルなストーリーです。ここでは、年代・経歴別に異なる3名の成功事例を紹介します。それぞれがどのような背景を持ち、どのような「志望動機」で採用に至ったのかを詳しく解説します。
① 20代男性(税理士志望・異業種からの転職)
経歴:大学卒業後、大手メーカーの営業職 → 会計事務所へ未経験で転職
大学では経済学部に所属し、在学中に日商簿記2級を取得。卒業後は新卒で大手メーカーの営業職に就職しましたが、「もっと専門性の高い仕事がしたい」「手に職をつけて長く働ける分野に行きたい」という思いが強まり、20代後半で会計業界へのキャリアチェンジを決断しました。
志望動機のポイントは「営業で培ったコミュニケーション力と顧客志向の姿勢を活かせる」とアピールしたこと。また税理士試験の受験を本気で考えており、長期的な成長意欲も伝わりました。
最初は記帳代行やスキャン・データ入力などの基本業務からスタート。半年後にはクライアント対応の補助も任されるようになり、税理士試験にも挑戦中。未経験でも「志望動機の熱意と将来性」がしっかり伝われば、道は開ける好例です。
② 30代女性(一般企業の経理職から転職)
経歴:中小企業の経理職として10年間勤務 → 会計事務所に転職
長年、製造業の経理部門で日々の入出金管理・月次決算・年末調整・社会保険の手続きまで幅広く担当してきた方。組織変更をきっかけに経理部が縮小され、今後のキャリアを見直す中で「会計事務所で専門性を高めたい」と転職を決意しました。
志望動機では「これまでの経験(決算処理・給与計算・消費税対応など)を活かして貢献できる」とアピール。また一般企業とは違う、多様な業種の会計処理を学べる環境に魅力を感じたことや、業務効率化やマニュアル整備など、前職での経験を実務改善に活かしたいということも前向きに伝えました。
採用直後から実務の即戦力として、法人顧問先の月次処理を担当。業務効率化のためのExcelテンプレート提案やマニュアル整備にも貢献し、半年後には新人スタッフの教育係にも抜擢。経験の深さと現場力が評価された転職成功例です。
③ 40代女性(子育てと両立するためにパート勤務へ)
経歴:一般事務・人事補助の経験あり → 会計事務所でパート勤務にチャレンジ
子育てがひと段落し、「時間を有効活用しながら社会復帰したい」と考えていたところ、近所の会計事務所がパートスタッフを募集していることを知り応募。事務職の経験はあったものの、会計業務は未経験でした。
志望動機では「細かい作業・書類管理が得意で、正確さと丁寧さに自信がある」と明言。また会計業務に対する関心と、これから勉強していく意欲を率直に伝えました。短時間でも事務所に貢献したいという誠実な姿勢が評価され、採用が決まりました。
スキャン作業、証憑整理、入力補助などを中心に担当し、繁忙期には申告書の確認補助まで任されるように。パートながら「責任感のある働きぶり」で正社員からの信頼も厚く、時間の制約があっても十分に活躍されています。
■ 会計事務所に就職・転職するための面接対策
履歴書・職務経歴書に書いた志望動機や自己PRを最大限活かすためには、「面接での受け答え」も非常に重要です。特に会計事務所は少人数の職場が多く、スキルだけでなく人柄や協調性も見られます。この章では、面接を突破するための具体的な対策を詳しく解説します。
(1)面接の服装は清潔感・信頼感が第一印象を決める
会計事務所は金融・法律と同じく「信頼」を商売とする業界のため、服装や髪型は派手すぎず、落ち着いた印象を与えることが大切です。服装の目的は、「業務を任せても安心できる人」と印象づけること。高級感よりも信頼感と誠実さが重要です。
【男性の基本スタイル】
- ダークカラー(黒・紺・グレー)のスーツ
- 白無地のシャツ
- 派手すぎないネクタイ
- 革靴は磨いておく
- 髪型は耳や襟にかからない清潔な印象に
【女性の基本スタイル】
- ジャケット+ブラウス+膝丈スカート or パンツスタイル
- アクセサリーは最小限、メイクはナチュラル
- ネイルは透明または控えめな色(できればしない)
- 髪はまとめる or 顔にかからないスタイルが好印象
(2)退職理由と前職までの経験を簡潔かつ前向きに話す
会計事務所の面接でよく聞かれるのが、「なぜ転職したのか」「前職では何をしていたのか」という質問です。ここで気をつけたいのは、ネガティブな退職理由をポジティブに置き換えるということ。
また、前職の業務内容は簡潔にまとめ、どのスキルが活かせそうかをつけ加えることで、面接官に「即戦力になりそうだ」と思ってもらえます。
【悪い例】
- 「人間関係が悪かったので辞めました」
- 「残業が多くて耐えられなくなりました」
【よい例】
- 「これまでの経験を活かしつつ、より専門的な分野でスキルを伸ばしたいと考え、転職を決意しました」
- 「これまでの事務経験を、より専門性のある環境で発展させていきたいと考えました」
(3)自己PRでは「地味な力」をアピールせよ
会計事務所では、派手なプレゼン力や話術よりも、地道に作業できる力・継続力・丁寧さが高く評価されます。特に未経験者の場合は、即戦力にならない分、「誠実な姿勢」や「成長意欲」が最大の武器となります。
【よい例】
「私はコツコツ作業するのが得意で、細かい数値チェックや帳票整理などの業務にも粘り強く取り組めます。数字や書類と向き合うことに苦手意識はなく、正確さを重視する会計業務には向いていると感じています。」
このように、自分の性格・経験を会計事務所の業務に結びつけて語ることで、「この人は合っているかも」と思ってもらえる確率が上がります。
■ まとめ:志望動機+面接対策で内定率を上げよう
「会計事務所 志望動機」は転職成功のカギを握る非常に重要なテーマです。本記事では、未経験者でも通用する志望動機の作り方や、面接時の対応ポイントまで徹底的に解説しましたが、参考になりましたでしょうか?
大切なのは、自分の経験や思いを、相手に伝わる言葉で表現すること。そして、相手の事務所に合わせて伝え方を少しずつカスタマイズすることで、他の応募者との差をつけることができます。
もしそれでも転職に不安な場合は、ぜひ経理・会計専門の人材エージェントにご相談を。あなたにぴったりの会計事務所を探してもらいましょう。