前回は、借入本数が多くなる原因として次の4つのパターンをご紹介しました。
① 銀行の提案をそのまま受け入れ、借りられるときに借りている
② 資金繰りが苦しくなってから場当たり的に借りることを繰り返している
③ 設備投資の返済が計画どおりに進まず、補填のために借入を重ねている
④ 本業が赤字で、信用保証協会の保証枠も限界に近い
これらに共通するのは「財務戦略がない」という点です。今回は、そのような状況から抜け出し、「借入本数を実際に減らすための方法」についてお伝えします。
■「一本化」は有効だが、返済額の大幅削減は期待しすぎないこと
銀行から「複数の借入をまとめて一本化しませんか」と提案を受けることがあります。本数を減らすという目的には確かに有効ですが、いくつか注意点があります。
まず、一本化の受け皿として使われるのは主に
【日本政策金融公庫(公庫)】か【信用保証協会付き融資】
です。公庫は比較的まとめやすい傾向がありますが、保証協会については「責任共有制度」や保証料率の条件によって、まとめられるものとまとめられないものがあり、一気に本数を大きく減らすのは難しいのが実情です。
次に、一本化によって返済期間を延ばせば毎月の返済額を下げることはできます。ただし、期間をよほど長く設定しない限り、資金繰りへの改善効果は限定的です。
「一本化すれば資金繰りが楽になる」と過度な期待を持つのは禁物です。
■借入本数を減らす本質的な解決策は「資金繰り管理」にある
一本化はあくまで対症療法です。借入本数が増える根本的な原因は、「日常的な資金繰り管理ができていないこと」にあります。「お金が足りないから、とにかく借りられるものは何でも借りる」という行動が、本数をひたすら増やしてしまう最大の原因です。
まず立ち止まって、自社の資金繰りが苦しい理由を冷静に分析することが必要です。
①本業が赤字だから苦しいのか
②本業は黒字だが、返済負担が重すぎるのか
③その両方に該当するのか
この原因を特定するために欠かせないのが
「資金繰り表」の作成と分析
です。
⑴本業が赤字の場合
借入で赤字を補い続けることには限界があります。借入は資金繰りの一時的な「つなぎ」にはなりますが、赤字の根本原因を解決しなければ、借入残高は増え続け、いずれ返済不能に陥ります。
「本業の収益改善と返済負担の軽減を同時並行で進めること」が不可欠
です。
⑵本業は黒字なのに返済が重い場合
この場合は、借入の「中身」を整理することが有効です。具体的には、現在の借入を以下の3つに分類して考えます。
①正常な運転資金(仕入れや人件費など、事業を継続するために常時必要な資金)
②設備資金(機械・設備など固定資産の購入資金)
③その他(緊急的な資金調達や上記に分類できないもの)
この中で特に見直し効果が大きいのが「正常な運転資金」です。
運転資金は本来、毎月少しずつ返済する長期借入よりも、「短期コロガシ」(1年以内の短期借入を毎年更新していく方式) での調達が適しています。
短期コロガシに切り替えると、「借入本数が減る」うえに「毎月の返済負担も軽くなる」という、一石二鳥の効果が期待できます。
■借入本数を減らす3つのステップ
借入本数を減らすために必要な行動を整理すると、次の3つになります。
Step 1|まず資金繰り表を作る
自社のお金の流れを「見える化」することが出発点です。
Step 2|本数が多くなった原因を分析する
赤字が原因か、返済設計の問題か、それとも両方か。原因によって打つべき手が変わります。
Step 3|資金使途に応じた借入に組み替える
運転資金・設備資金・その他を明確に区分し、それぞれに適した借り方(期間・形式)に改めます。
この3つを実践することで、借入本数の削減と資金繰りの安定化を同時に目指すことができます。
■こんな状況になったら、税理士や金融機関への相談を
借入本数や財務状況について、「自分の会社は大丈夫だろうか」と感じたら、早めに専門家へ相談することをおすすめします。以下に、相談を検討すべき目安をまとめました。
⑴借入本数の目安
中小企業の場合、一般的に
「5本を超えると管理が複雑になり始め、10本を超えると財務上のリスクが高まる」
と言われています。現時点で何本あるか即答できない場合は、それ自体が危険信号です。
【こんな状況は要注意】
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毎月の返済日・返済額を一覧で把握できていない
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資金繰り表を作ったことがない、または直近1年以上更新していない
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借入の目的(運転資金・設備資金など)が混在していて整理できていない
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新しい借入の審査が通りにくくなってきた
-
保証協会付き融資しか提案されなくなった
-
返済のために新たに借りるサイクルが続いている
⑵相談先の選び方
資金繰りや財務分析については
税理士や資金繰りコンサルタント
、融資の組み替えや借換えについては
メインバンクの担当者または日本政策金融公庫
に相談するのが現実的です。なお、商工会議所や商工会でも無料の経営相談窓口を設けており、まず状況を整理したい場合の入口として活用できます。
早期に相談するほど、取れる選択肢は広がります。「まだ大丈夫」と思っているうちに動くことが、最善の財務戦略です。
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- 執筆者プロフィール
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徳永 貴則(とくなが たかのり)
平成8年に当時の大和銀行(現りそな銀行)に入行。都心店舗を中心に法人融資業務を主担当し、本部の融資審査セクションでも業務を経験。2000社ほどの銀行融資に携わった経験を生かして、株式会社スペースワンを立ち上げ独立。多くの銀行融資コンサルティングのみならず、事業再生や経営改善のアドバイスを行っている。。