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税理士による「親族内の事業承継」の税務の業務内容、仕事の魅力は?

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2025年7月1日 伊藤俊一税理士事務所代表 伊藤 俊一

目次

長年、事業承継タックスプランニングの総合的なコンサルティングを行ってきた伊藤俊一先生に、「親族内での事業承継」に関する税務の業務内容、またやりがいなどについてお話をお伺いしました。

■必要とされる志向性(どんな人に向いているか?)

税理士による事業承継支援は、通常の税務申告業務とは異なり、非常に専門的な分野です。

毎回クライアントや状況も違うため、 どんな場合でも自分の頭で考え、創意工夫したアイデアを提案できる人 が求められます。

また通常の税理士事務所は、法人税や所得税の申告代理業務をメインに行っていますが、わたしの事務所ではクライアントの資産承継、事業承継等のコンサルティングサービスに特化しています。相続税や生前対策コンサルティング、さらに事業承継まで可能な専門の税理士事務所として、お客様の問題を解決するために全力を尽くしています。

税理士業務の中でもより専門的な分野となるため、 常に学び続ける姿勢がある人 に向いていると言えるのではないでしょうか。

■「親族内の事業承継」の税務の業務内容

事業承継は承継先によって「親族内承継」「M&A」の2つに分けられます。今回は「親族内での事業承継」の業務内容についてお話をいたします。

「親族内での事業承継」とは、文字通り経営者の子どもや親せきが後継者として会社を引き継ぐことで、日本では一般的な事業承継の形です。以下が具体的な業務内容になります。

(1)会社全体の資本構成をみて、資本構成図を書き直す

最初はヒアリングと現状把握です。会社の現状、社長の資産状況、後継者候補を把握したうえで事業承継の方法を選択します。

(2)株主名簿を確認

事業承継においては株式の贈与、譲渡も行われるケースが多いため、現在の株主は誰か、正確に把握する必要があります。

(3)自社株評価を行う

自社株評価とは取引相場のない自社の株式の価値を算定することをいいます。 非上場株式は上場企業の株式のように客観的な評価額が示されていないため、国税庁が定める基準で、非上場会社の分類に合わせた評価法を用いて評価を行います。

(4)税のプランニングを考える

実際に自社株を移動した場合の所得税や贈与税、相続税申告の手続きはもちろんのこと、評価額が大きい場合の株価対策、節税対策なども行います。

事業承継専門の税理士の仕事として一番重要な部分が、この税のプランニングになります。

(5)わたしの場合

わたしは前職で、主に事業承継や相続税、資本政策、事業再生などに関わっていました。

そこから独立した際に、なかなかそういったことを専門にしている税理士というのが少ないため、周りの方から声をかけていただいて始めたというのがきっかけです。

■「事業承継」の税務業務のやりがいは?

やはり通常の税務申告などとは違い、税のプランニングというのは 自分のアイデア、創意工夫、仕入れた最新の知識などを駆使してお客様に満足していただける提案をする仕事なので、そういった部分にやりがい があります。

例えば、クライアントの現状分析で、自社株の評価が高い場合、後継者に事業承継する際には各種組織再編成の様々な手法を駆使して、いかにお客様の負担を減らすことができるかを考えます。そのあたりにこの仕事の醍醐味があると言えるのではないでしょうか。

■「事業承継」の採用ニーズ

(1)求められるスキル、人材

必ずしも必須ではないですが、こういった経験があると高評価につながると思います。

  • 相続税の申告経験
  • 相続対策
  • 組織再編成を実行したことがある
  • 自社株の評価

科目として取得はしていなくとも、組織再編成税制や所得税、相続税の基本的な知識は必要になります。

基本的な知識があれば、あとは実務を経験することで身につけていけるでしょう。

(2)採用されるポイント

上記の経験に加え、さらに実務を学んでいこうという意欲。将来はタックスプランニングの専門家になりたいという目標がある、などでしょうか。

■「事業承継」の年収はどのくらい?

事業承継のプランニングを扱うのは、準大手以上の会計事務所になると思います。準大手といっても町の会計事務所が大きくなっただけで、事業承継のような特殊業務を取り扱っていないところも数多くあります。面接時に詳細を確認すべきです。

あくまで目安ではありますが、30代・未経験の方でしたら500万円~スタートくらいではないでしょうか。

■「事業承継」の経験を活かしたその後のキャリアパスは?

事業承継の案件を扱えるようになると、やはりその後も専門性を高めていくようなキャリアパスになると思います。今いるところより さらに大きな会計事務所 へ移り、より複雑な事業承継の案件を扱ったり、 事業承継専門のコンサルティング会社 に転職したりするパターンが多いのではないでしょうか。

個人で開業する場合は、事業承継を専門としていることをアピールできるブランディング力、かつ顧客獲得できる営業力を兼ね備えていないと難しいかもしれません。

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執筆者プロフィール

伊藤 俊一(いとう しゅんいち)
伊藤俊一税理士事務所代表

愛知県生まれ。税理士。慶應義塾大学文学部入学。一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻修士、同博士課程満期退学。

都内コンサルティング会社にて某メガバンクの本店案件に係る事業再生、事業承継、資本政策、相続税等のあらゆる税分野の経験と実績を有する。

現在は、事業承継・少数株主からの株式集約(中小企業の資本政策)・相続税・地主様の土地有効活用コンサルティングについて累積数百件のスキーム立案実行、税理士・公認会計士・弁護士・司法書士等からの相談業務、会計事務所、税理士法人の顧問業務、租税法鑑定意見書作成等々を主力業務としている。

支部会等、税理士向け研修は年間150本程度実績がある。

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