税理士補助という職業に興味をお持ちの方は、実際にどのような仕事をするのか、どんなスキルが求められるのか気になっているのではないでしょうか。税理士事務所や会計事務所で働く税理士補助は、税理士業務を支える重要な役割を担っています。この記事では、税理士補助の仕事内容から年収、必要なスキル、将来のキャリアパスまで詳しく解説していきます。
税理士補助の仕事内容とは? 年収や必要なスキル、キャリアパスを解説

2025年10月14日 ジャスネットキャリア編集部
目次
■税理士補助の基礎知識
(1)税理士補助とは何か
税理士補助とは、税理士事務所や会計事務所において、税理士の業務をサポートする専門職のことを指します。 税理士の指示や監督のもとで、税務や会計に関するさまざまな業務を担当し、事務所の円滑な運営を支える存在です。
税理士補助の役割は、単なる事務作業にとどまりません。クライアント企業の帳簿作成から税務申告書類の作成補助、決算業務のサポートまで、専門的な知識と経験を活かして幅広い業務に携わります。多くの税理士補助は、将来的に税理士資格の取得を目指しながら実務経験を積んでおり、税理士事務所にとって欠かせない戦力となっています。
この職種は、税務や会計の専門知識を実践的に学べる環境であり、税理士を目指す方にとっては最適なスタート地点といえるでしょう。未経験からでも挑戦できる事務所も多く、簿記の知識や税理士試験の科目合格があれば、さらに活躍の幅が広がります。
(2)税理士との違い
税理士補助と税理士の最も大きな違いは、税理士資格の有無です。 税理士は国家資格を持ち、税務代理、税務書類の作成、税務相談という三つの独占業務を行うことができます。一方、税理士補助はこれらの独占業務を単独で行うことはできず、あくまで税理士の指導のもとで業務を遂行します。
■税理士補助の具体的な仕事内容
(1)主な業務内容
①会計帳簿の作成業務
税理士補助の業務は多岐にわたりますが、 中核となるのは会計帳簿の作成業務 です。顧客から預かった領収書や請求書、通帳のコピーなどをもとに、会計ソフトへデータを入力していきます。正確な仕訳を行うためには、簿記の知識はもちろん、業種ごとの取引の特徴を理解することも重要になります。
②月次決算業務
毎月の経営成績を明らかにするために、試算表を作成し、前月や前年同月との比較分析資料を準備します。この資料をもとに、税理士が顧客へ経営状況の報告を行うため、正確性とスピードが求められる業務といえます。
③税務申告書の作成補助
法人税や消費税、所得税などの申告書について、必要な資料を収集し、計算を行い、申告書の下書きを作成します。最終的には税理士がチェックして署名しますが、その前段階の作業の多くを税理士補助が担当します。特に確定申告シーズンには、多数の申告書作成に関わることになります。
④給与計算業務
給与計算業務を担当することもあります。顧客企業の従業員の勤怠データから給与を計算し、源泉所得税や社会保険料の計算、年末調整の処理などを行います。給与計算は毎月決まった期日までに完了させる必要があるため、計画的な業務遂行が求められます。
(2)4日常業務の流れ
ここでは、とある会計事務所で働く税理士補助の事例というかたちで紹介します。
税理士補助の一日は、メールチェックや電話対応から始まることが多いです。顧客からの問い合わせに対応し、必要に応じて税理士へ確認を取りながら回答します。急ぎの相談については、税理士へ速やかに取り次ぐ判断力も必要です。
午前中は集中力が高い時間帯を活かして、会計データの入力作業や申告書の作成業務を進めます。月初めには前月分の会計処理を完了させ、月次資料を作成する必要があるため、効率的に作業を進めることが大切です。複数の顧客を担当している場合は、優先順位をつけて計画的に業務を進めていきます。
午後は顧客訪問や打ち合わせが入ることもあります。税理士に同行して顧客企業を訪問し、資料の受け渡しや簡単な説明を行ったり、必要な書類についてヒアリングしたりします。顧客との信頼関係を築くことも、税理士補助の重要な役割です。
夕方以降は、その日中に処理すべき業務の仕上げや、翌日以降の準備を行います。特に申告期限が近い時期には、残業して書類作成を進めることもあります。一日の終わりには業務の進捗状況を確認し、税理士へ報告や相談が必要な事項をまとめておくことも大切な習慣です。
(3)特別な業務やプロジェクト
税理士補助は定型業務だけでなく、特別なプロジェクトに関わる機会もあります。 会社設立支援では、新規に法人を立ち上げる顧客のサポートを行います。定款作成の補助から税務署への届出書類の準備、初期の会計システム導入支援まで、スタートアップの重要な局面に携わることができます。
事業承継や相続税の案件では、より専門的な知識が求められます。複雑な財産評価の計算補助や、相続税申告書の作成サポートを通じて、高度な税務知識を実践的に学ぶことができます。これらの案件は税理士補助としてのスキルアップにつながる貴重な経験となります。
税務調査への対応も重要な業務です。税務署から調査の連絡があった際には、過去の申告内容を確認し、必要な資料を準備します。調査当日は税理士とともに立ち会い、調査官からの質問に対する資料提示などをサポートします。緊張する場面ですが、税務の実務を深く理解する絶好の機会でもあります。
【参考記事】
■税理士補助の平均年収
税理士補助の年収は、経験年数や保有資格、勤務地域、事務所の規模などによって大きく変動します。 一般的な相場としては、未経験で入社した場合の初年度年収は300万円から350万円程度となることが多いです。
実務経験を積み、税理士試験の科目合格を重ねていくと、年収は段階的に上昇していきます。実務経験3年から5年程度で、年収400万円から500万円程度に達する方が多く見られます。税理士試験で3科目以上合格している場合は、さらに高い待遇を受けられる事務所も少なくありません。
大手税理士法人や都市部の事務所では、比較的高めの給与水準となる傾向があります。一方、地方の小規模事務所では年収水準は抑えめですが、幅広い業務経験を積めるというメリットがあります。また、繁忙期の残業代や賞与の有無も、年収に大きく影響する要素です。
税理士補助としての経験を重ね、税理士資格を取得すれば、年収600万円から800万円程度も十分に目指せます。さらに、マネージャーやパートナーとして事務所経営に関わるようになれば、年収1000万円以上も現実的な目標となります。このように、税理士補助からスタートして、着実にキャリアアップすることで、収入面でも大きな成長が期待できる職種なのです。
■税理士補助の資格と必要なスキル
(1)必要な資格とスキル
①税理士の科目合格
税理士補助として働く上で、 必須ではありませんが非常に有利となるのが税理士試験の科目合格 です。税理士試験は全11科目の中から5科目に合格する必要がありますが、1科目でも合格していれば、その専門知識を業務に活かせますし、採用時の評価も高まります。
特に簿記論と財務諸表論は、会計の基礎となる科目であり、これらに合格していると日常業務をスムーズに進められます。税法科目では法人税法や所得税法、相続税法などがありますが、いずれも実務に直結する知識です。科目合格を重ねることで、任される業務の範囲が広がり、給与面でも優遇されることが一般的です。
税理士補助として働きながら試験勉強を続ける方は多く、事務所によっては試験休暇制度や受験支援制度を設けているところもあります。実務経験と試験勉強を両立させることで、理論と実践の両面から税務の理解を深めることができるのです。
②日商簿記検定
日商簿記検定は、税理士補助として働く上での基礎となる資格です。最低でも簿記3級、できれば簿記2級以上の取得が望ましいとされています。 簿記2級レベルの知識があれば、基本的な仕訳処理や決算書の読み方を理解でき、即戦力として活躍できる可能性が高まります。
簿記の知識は、会計ソフトへの入力作業だけでなく、財務諸表の理解や税務申告書の作成にも不可欠です。理論的な理解があることで、単純な入力作業ではなく、数字の意味を考えながら業務を進められるようになります。
未経験で税理士補助を目指す場合、まず簿記2級の取得から始めることをおすすめします。簿記の学習を通じて会計の基本を身につけることで、入社後の業務理解が格段にスムーズになるでしょう。
③Excelスキル
現代の税理士事務所では、Excelを使いこなすスキルが欠かせません。会計データの集計や分析、顧客への報告資料作成など、日々の業務でExcelを活用する場面は非常に多いです。基本的な関数(SUM、AVERAGE、IFなど)の使用はもちろん、VLOOKUP関数やピボットテーブルなどの応用機能も使えると、業務効率が大きく向上します。
特に月次分析資料の作成や、複雑な税額計算の際には、Excelの高度な機能を活用することで、正確かつ迅速な処理が可能になります。マクロやVBAまで使いこなせれば、定型業務の自動化も実現でき、より付加価値の高い業務に時間を割くことができます。
会計ソフトと連携してデータを加工することも多いため、CSVファイルの取り扱いや、データクレンジングのスキルも重要です。ITリテラシーが高い税理士補助は、どの事務所でも重宝される存在となるでしょう。
④コミュニケーション能力
税理士補助の業務は、意外にも対人スキルが重要です。顧客からの電話対応や訪問時のやり取り、資料の説明など、日常的にコミュニケーションが発生します。専門用語を使わずに分かりやすく説明する力や、相手のニーズを正確に聞き取る力が求められます。
事務所内でも、税理士や他のスタッフとの連携が欠かせません。業務の進捗状況を報告したり、分からないことを質問したり、チームで協力して案件を進めたりする際には、円滑なコミュニケーションが不可欠です。
また、顧客企業の経理担当者と良好な関係を築くことも大切です。必要な資料をスムーズに提出してもらったり、会計処理について相談に乗ったりする中で、信頼関係を構築していきます。専門知識だけでなく、人間性や対応力も評価される職種なのです。
(2)実務経験の重要性
税理士補助の仕事では、資格以上に実務経験が重視される場面も多くあります。教科書で学んだ知識と実際の業務には違いがあり、現場で培われる判断力や処理スピードは、経験を通じてしか身につきません。
さまざまな業種の顧客を担当することで、業種特有の会計処理や税務上の注意点を学べます。例えば、建設業の工事進行基準、不動産業の固定資産税の取り扱い、医療法人特有の会計基準など、実務を通じてこそ理解が深まる知識は数多くあります。
経験豊富な税理士補助は、イレギュラーな取引が発生した際にも、過去の経験から適切な処理方法を判断できます。また、効率的な業務の進め方や、ミスを防ぐためのチェックポイントなども、実務経験の中で身についていきます。
■税理士補助のキャリアパス
①税理士補助
キャリアのスタート地点である税理士補助の段階では、基本的な会計処理や税務業務を学びながら、実務経験を積んでいきます。入社当初は先輩スタッフの指導を受けながら、データ入力や書類整理などの基礎的な業務から始めることが一般的です。
この時期は、税理士試験の勉強と実務を両立させながら、着実にスキルアップを図ることが重要です。事務所によっては、担当顧客を持たせてもらい、一連の業務フローを経験できる環境もあります。失敗を恐れず積極的にチャレンジし、分からないことは質問する姿勢が成長につながります。
②税務スタッフ
実務経験を2年から3年程度積み、税理士試験の科目合格も進んでくると、税務スタッフとしてより専門性の高い業務を任されるようになります。複数の顧客を担当し、月次決算から税務申告まで、一定の責任を持って業務を遂行する立場です。
税務スタッフになると、後輩の指導を任されることもあります。自分の知識を整理して人に教えることで、さらに理解が深まり、リーダーシップスキルも向上します。また、顧客との打ち合わせにも税理士とともに参加し、税務相談の現場を間近で学ぶ機会が増えていきます。
③税理士資格取得
税理士試験に合格し、実務経験要件を満たして税理士登録を行うことが、大きな転機となります。税理士資格を取得することで、独占業務を行えるようになり、顧客との関係性も変化します。自分の判断で税務判断を行い、申告書に署名する責任を負うようになるのです。
資格取得直後は、これまでの実務経験を活かしながら、税理士としての判断力を磨いていく時期です。複雑な税務案件や、高度な税務相談にも対応できるよう、継続的な学習が求められます。税理士会の研修などに参加し、最新の税制改正情報をキャッチアップすることも重要です。
④税理士
税理士として経験を積むと、担当顧客数が増え、より高度な案件を任されるようになります。事業承継や組織再編、国際税務など、専門性の高い分野でスペシャリストとして活躍する道もあります。また、顧客企業の経営者から信頼されるビジネスパートナーとして、経営全般のアドバイスを求められることも増えていきます。
この段階では、自分の専門分野を確立し、その分野での評判を高めていくことがキャリア発展のカギとなります。セミナー講師を務めたり、専門誌に執筆したりすることで、業界内での認知度を高める税理士もいます。
⑤マネージャー(パートナー)
税理士としての実績と信頼を積み重ね、事務所経営に参画するマネージャーやパートナーへとステップアップする道もあります。この立場では、顧客対応だけでなく、事務所全体の運営や経営判断、スタッフの採用・育成など、マネジメント業務が中心となります。
パートナーとして事務所の利益に貢献し、経営の一翼を担うことで、高い収入を得ることも可能です。また、自分が培ってきたノウハウを次世代に伝え、事務所の発展に寄与するやりがいも感じられるでしょう。
さらに、独立開業して自分の事務所を構える選択肢もあります。税理士補助から始まったキャリアを通じて培った経験と人脈を活かし、自分の理想とする税理士業務を展開できるのです。
■まとめ
税理士補助の仕事は、税務と会計の専門知識を実践的に学びながら、将来のキャリアアップを目指せる魅力的な職種です。会計帳簿の作成から税務申告書の作成補助、顧客対応まで、幅広い業務を通じて実務経験を積むことができます。
年収面では未経験からのスタートで300万円台からとなりますが、経験を積み税理士資格を取得することで、600万円から800万円、さらにはそれ以上も目指せる職業です。税理士試験の科目合格や簿記検定、Excelスキル、コミュニケーション能力など、さまざまなスキルを磨くことで、より高い評価を得られるでしょう。
税理士補助という仕事は、専門性を高めながら社会に貢献できる、やりがいのある職業です。税務や会計に興味があり、将来性のあるキャリアを築きたい方にとって、税理士補助は最適なスタート地点となるでしょう。ぜひこの記事を参考に、税理士補助としての一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
関連リンク
- 税理士の就職先にはどんなところがあるの? 豊富な選択肢とその先のキャリアパスまで解説
- 税理士補助の仕事は未経験から可能? 向いている人やキャリアパスを徹底解説
- フリーランス税理士の基本知識とメリット・デメリットを徹底解説!
- 税理士が年収1,000万円以上を実現するためには? 必読の転職完全ガイド
- 税理士補助は年収が低い?高収入を得るための方法を徹底解説
- 税理士補助の志望動機はどう書く? 未経験者向けの例文を紹介
- 税理士・会計事務所1年目で転職したい理由と解決策
- 税理士資格あり!でも実務経験がない…/未経験 資格保有者の転職成功術
- 税理士の転職ガイド|成功につながるポイントと化けるキャリアの選択肢とは?
- 会計事務所への転職時期はいつが最適?繁忙期と求人動向を解説
- 執筆者プロフィール
-
ジャスネットキャリア編集部
WEBサイト『ジャスネットキャリア』に掲載する記事制作を行う。
会計士、税理士、経理パーソンを対象とした、コラム系読み物、転職事例、転職QAの制作など。編集部メンバーは企業での経理経験者で構成され、「経理・会計分野で働く方々のキャリアに寄り添う」をテーマにしたコンテンツ作りを心がけていてる。